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マイナンバー法と個人情報保護法がカギ。日本のDXが乗り越えるべき壁【デジタル庁インタビュー】

小林史明氏

衆議院議員・現自民党のデジタル社会推進本部事務総長の小林史明氏。

撮影:小林優多郎

2021年9月の発足を予定するデジタル庁では、マイナンバーのさらなる浸透と活用も重要課題とするが、実現に向けては、新たなルールの整備も必要だ。

自民党のデジタル社会推進本部事務総長の小林史明氏へのデジタル庁インタビュー前編に続き、後編では「マイナンバー法」と「個人情報保護法」の改革について聞く。

DXに必要なマイナンバーを広く浸透させる方法

マイナンバーカード

撮影:小林優多郎

── 2020年11月のデジタル庁の一次提言では、「マイナンバー普及には3倍以上のスピードが必要」と踏み込んだ発言もありました。利用促進には「普及」と「活用」、両方の方策が必要。どう進めますか。

小林氏:普及を先に押し出しすぎない方が良いと思っている。現時点も、マイナンバーをスタートするときにカードを取ってくださいと言ったが、「取ったのだけど何に使えるんだっけ」とがっかりされてしまった。

マイナンバーは日本政府としては珍しい、ある種ベータ版の制度。持っている内にだんだんとできることが増える、使える場所が増えるという仕組みだ。利便性を感じていただける環境ができて初めて、「これが使えるならカードが欲しい」となってもらえるようにしなければいけない。

マイナンバーカードのスマートフォン化

マイナンバーカードをスマートフォンに搭載した際の将来像(検討中の要素も含む)。

出典:総務省「マイナンバーカードの機能のスマートフォン搭載等に関する検討会」第1次とりまとめ 公開資料

もう1つはリアルなカードを早くなくすこと。スマホに格納するということを約2年のうちにやっていく。より利便性を感じてもらえて、カードを持ち歩くわずらわしさをなくすことだと思っている。

どういうところに使えるようにするか。普及策とセットだが、手間が減る方が良い。

運転免許証や健康保険証を吸収できる形にするのもそのためだ。違う病院に行っても、ほかの病院でどんな診療を受けていたのかなど共有されて、すぐに処方や処置が受けられるといった形を整えていきたい。

災害があったときも(その人が受けていた医療情報が)すぐに見られる。現在は、災害の時に体育館でお医者様がずらっと並んで、どんな症状だったのかどんな薬を飲んでいたかなど聞いているが、それがなくなる。

マイナンバー法と個人情報保護法に改正が必要な理由

マイナンバーカード

撮影:小林優多郎

──法案として重要なものは?何を整備する必要があるのか。

小林氏:いくつかあるが重要なものの1つは、マイナンバー法の改正。すでに番号は(全国民に)振られている。番号さえあれば分散されている情報を必要な時に集めて一気に手続きをすることができる……が、今は使い道が限定されている。「社会保障制度、税制、災害対策、その他の行政分野」(同法第三条4項)以外のことには使えない。

例えば、おじいさんが亡くなったとする。そのおじいさんが持っている土地はどこか、というのはマイナンバーでは集められない。これが必要な時だけ、集められたら便利だ。ただ、利用範囲が限定されているから、今はできない。

利用範囲を広げることを確実にやらないと、本来連動するはずの情報が全く連動できない。

小林史明氏

マイナンバーの重要性を語る小林氏。

撮影:小林優多郎

──(マイナンバーを真の意味で)個人のIDにしてしまうということか。

小林氏:しないと意味がない。

本来集まった方が良いデータも、デジタル化されていない、集められる状況にしようというのが、(第2次提言にも書かれた)「ベースレジストリ(社会の基盤となるデータ群)の整理」。整理した情報を引っ張り出すために、IDをみんなで使っていこうということだ。

これに関わってくるのが個人情報保護法の改正だ。

今は個人情報保護法に上乗せして、1700の自治体がそれぞれに条例をつくっている状況。非常に過剰だったり、まったく整備されていないところもある。

これをもう一度上塗りをして共通化を図る。例えば新型コロナにかかってしまった人の情報が、ある自治体では上がってくるけど、ある自治体では(スムーズに)上がってこない、ということが起きている。学校に関わる情報も地域ごとで差が生まれている。この整備をしていく。この2つ(医療と教育)が情報を整理していく上で利便性感じていただけるだろう。

ただ、当然反発も予想される。そこに対して、これなら安心と思ってもらえる環境整備もセットでやっていく。

日本は中国ともアメリカとも違う。DXは「寄り添って抱きしめる」

マイナポータル

スマホでもログイン可能なマイナポータル。

撮影:小林優多郎

── 新しい個人情報保護法では、各自治体の条例をなくす動きになる、ということでしょうか?

小林氏:1回、条例を吸収して新しい法律にする。そこへの上乗せは(各自治体などで)原則しないでもらうという法律を2021年に出すことで、「自治体ごとの違い」が起きにくいようになる。

中国ともアメリカとも、日本は違う。

とにかく官民でデータを使う、その代わり使った物は誰がどう使ったのか履歴を残して、見れるようにする。ちゃんと本人に対して許諾をとるようにするのが基本的な考え方だ。

日本はずっとその道で歩んできている。今でもマイナンバーカードでマイナポータルに入ってもらうと、どの行政組織が、みなさんの情報をどう使ったかと履歴で見られる。

ただ、マイナポータルのUIが圧倒的に悪い。また、当初はそこからできる手続きが少なかったので、使われなくなっている。この考え方をベースに、本人の理解と納得のもと、情報を活用していく社会ができると考えている。

小林氏

自らの立候補当時の想いを語る小林氏。

撮影:小林優多郎

私はサラリーマンから(国会議員になって)8年だが、(立候補した)きっかけも自分たちが経済活動をやっていく上で、「こんなに時代遅れの壁があるんだったらダメじゃないかと、俺が変えにいくしかない」という想いがあり、突破できたものもあると思っている。

自民党組織でもヘルプデスクのようなことをやった。

そういうていねいな寄り添いをし、私は「抱きしめ」といっているが、「寄り添って抱きしめて大丈夫です一緒に行きましょう」と言って、初めて動き出す。山が動くとみんな動き出す。そこはアナログのコミュニケーションではあるが重要なことだ。

小林史明:1983年、広島県福山市出身。政治家以前はNTTドコモに勤務。法人営業、人事採用担当を務めた。上智大学理工学部化学科卒業。2012年、第46回衆議院議員総選挙にて初当選。自由民主党行革本部事務局長、青年局長など歴任。現在は、自由民主党デジタル社会推進本部 事務総長を務める(2020年12月時点)。


(聞き手・伊藤有、構成と文・小林優多郎

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