2021年、金利・株式・為替はこう動く。金融市場を見通す「4つのグラフ」

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2021年1月4日、東京証券取引所の大発会。打鐘の刻を待つ麻生太郎財務相兼副総理。

Miho Takahashi/Pool via REUTERS

コロナ一色だった2020年、最後の最後で有力なワクチン開発報道が相次いだことで、眼前の「悪夢の冬」ではなく、その先にある「希望の春」を見据えるムードが金融市場にただよっている。

2021年も、実体経済の回復が遅々たる歩みでしか進まない一方、金融市場の期待が膨張していく構図が続くだろう。むしろ、こうした実体経済と金融市場の間に見られる「ねじれ」は、いっそう顕著になると思われる。

象徴的には、株価の割安・割高を判断する「バフェット指数」(=株式市場の名目時価総額と名目GDPの比率)などの指標に足もとの状況が表れてくるだろう。

アメリカのバフェット指数は時々刻々と過去最高値を更新し続けており、2021年には「2.0」、つまり株式市場の評価額が実体経済のそれの「倍」に達するという、経験のない領域に突入しそうな勢いだ【図表1】。

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【図表1】アメリカのバフェット指数(2020年9月末時点)。

出所:Macrobond資料より筆者作成

その数字自体に理論的な意味はないものの、それほどまでに両者のかい離が大きくなっていることには、ぜひ留意されたい。

「実体経済とかい離した株高」は当面続く

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実体経済とかい離した世界の株式市場の騰勢は2021年も続きそうだ。再度の緊急事態宣言も近づく危機ながら、日経平均株価も衰えを見せない。

REUTERS/Kim Kyung-Hoon

こうしたなか、2021年の為替・金利・株式という主要資産市場をどう見通すべきか。

為替を見通す上では、金利の見通しが決定的に重要だ。さらに、金利の影響を受ける株価も見ておかなくてはならない。

基本的に、世界の金利は米連邦準備制度理事会(FRB)のスタンスに追従せざるを得ない。その文脈で言うと、FRBが2020年8月に導入した、新しい政策運営の枠組み「アベレージ・ターゲット(平均目標)」が注目される。

この枠組みのもとでは、インフレ率が「平均で」プラス2%に到達したら、物価が安定したものと見なされる。

現状の経済・物価見通しを前提とすれば、そのような状態にたどり着くのは2024年後半になるとの予想が多く出ている。裏返せば、それまでは物価安定に至らないため、2024年までゼロ金利政策が維持されるという見方が成り立つ。

世界の資本コスト(=企業の資本調達コスト)の基準となるアメリカの政策金利がそのような見通しである以上、必然的に、他の先進国の中央銀行も似たような運営を行うことが予想される。

冒頭で触れた株価上昇も、上記の流れに沿った価格形成と考えたい。市場参加者(運用者)目線に立てば、「定期的にインカムを生むアセットがもう株式くらいしかない」という状況が定着しており、株が物色されやすい局面は今後も続くだろう。

前出の【図表1】で示したバフェット指数は、リーマンショックから10年以上にわたって上昇を続けており、その間に共通する上昇要因は「世界で定着した低金利」くらいしか考えられない。

そう考えると、2024年までの低金利(ゼロ金利政策)はすでに説明したように「既定路線」なのだから、実体経済とかい離した株高も続くものと割り切ったほうがいい。

それを「バブル」と呼ぶかどうかは、率直に言ってどうでもいい話だ。投げやりに言うのではない。仮にバブルだったとしても、現時点で「だから潰せ」という政策判断はできないので、それなら議論しても詮なきことというわけだ。

金利は「まったく動かない」わけではない

もっとも、「金利の低位安定」は「そのまま全然動かない」という意味ではない。冒頭でも金融市場の期待感に触れたが、春先以降は明るいニュースが先行してくるだろう(と思いたい)。

新型コロナ感染拡大の収束はご覧の通りすぐに期待できる状況になく、中央銀行の緩和対応に大きな変化はないと思われるが、それでも「世界の新規感染者数ピークアウト」「一般市民へのワクチン接種開始」といったヘッドラインは、きわめて緩やかながらも米金利の浮揚を促す可能性が高い。

実際、ワクチン開発報道を受けた2020年11月以降、市場ベースでみたアメリカのインフレ期待は上昇を続け、年明けからついに2%に到達した。コロナ以前どころか2018年11月以来の水準だ【図表2】。

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【図表2】アメリカのブレイクイーブンインフレ率(10年)。

出所:Macrobond資料より筆者作成

先に触れた「アベレージ・ターゲット」の導入直後、パウエルFRB議長は「仮に強いインフレ圧力が見られたり、インフレ期待が目標を超えて動くような動きが見られたりした場合、我々は躊躇(ちゅうちょ)なく行動する」と述べていた。

そのことを踏まえると、緩和が継続される基本シナリオは変わらないにせよ、インフレ率平均プラス2%への到達を待たずとも、正常化への関心を寄せ始めるFRB高官が出てくる可能性はある。

米10年金利については、3月末までに1.0%台復帰、6月末までに1.2%台復帰という目線は持ちたい。それでもアメリカの潜在成長率に比べればかなり低い水準だ。

また、こうした金利上昇に応じて、実体経済とかい離した株高がある程度動揺する可能性も考えておいたほうがいい(正常化に向かう過程での動揺は、健全な調整と評価できる)。

「ドルの過剰感」が引き続き為替に影響

ここまで解説したような金利や株式の見通しを踏まえた上で、ここからは為替の先行きを検討したい。

2020年の為替市場は、ひと言で言えば「ドル安の年」だった。2021年もこれが続くという予想が多い。

ドル安の背景はふたつ考えられる。ひとつは上述した「金利の低位安定」、もうひとつは「ドルの過剰感」だ。とくに現在の局面では後者から目を離せない。

ドルの過剰感は、米政府の財政赤字(対GDP)が第二次世界大戦後に匹敵する水準まで膨張したことに象徴される。

経済の教科書に書いてある通り、財政赤字と名目実効ドル相場の間には、安定した関係がある【図表3】。

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【図表3】アメリカの財政赤字と名目実効ドル相場の関係。

出所:Macrobond/IMF/The White House資料より筆者作成

だから、対GDPで約19%もの財政赤字を記録した2020年はドル安が必然だった。2021年については現在、国際通貨基金(IMF)予想でマイナス9%とされているが、今後実施される追加経済対策の規模次第で財政赤字はさらに膨張する可能性がある。

上の【図表3】を見る限り、ここからドル高相場にはっきりと転換してくると予想するのは、さすがに勇気が要る。2021年も「ドルの過剰感」が為替市場の潮流を規定していくことになりそうだ。

「実需」の視点から見た為替

一方、現在のような金利差なき世界で尊重されるのは、「実需」の視点だと考えている。【図表4】は、ドルの名目実効為替相場(=ある通貨の相対的な実力を測る指標、NEER)に対する各国通貨の寄与度を見たもの。

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【図表4】ドル名目実効為替相場の年初来変化率と寄与度。通貨変化率は2019年12月31日から2020年12月21日のもの。

出所:BIS/Bloomberg資料より筆者作成

2020年12月21日時点で、ドルの名目実効為替相場は年初来3.1%ポイント下落している。このうち1.5%ポイントが人民元の上昇、1.6%ポイントがユーロの上昇によってもたらされたものであることが分かる。つまり、ドル安圧力のほとんどは人民元とユーロに由来していたわけだ。

なお、それに続くのが日本円の0.4%ポイント上昇で、この3カ国・地域に共通するのは、いずれも世界の経常黒字大国であることだ。ユーロ圏と中国は、世界の貿易黒字2大国でもある。

為替は需給だけで決まるわけではないが、金利というドライバーを失った状況のもと、経常収支や貿易収支・財政収支といった需給に関わる基礎的経済指標の影響力が増している可能性は高い。

とくにユーロは、マイナス金利が深くても、政治情勢が相変わらず混沌としていても、新型コロナの感染拡大が危惧されても、対ドルで値を上げ続けた。これはユーロ圏の経常黒字・貿易黒字が世界最大であることと無関係ではあるまい。

日本円はどうなるのか?

では、日本円はどうなるだろうか。

日本が29年連続(2019年末時点)で「世界最大の対外債権国」というステータスを維持している以上、実需が尊重される金利差なき世界では、円相場が著しく下落するような展開は考えられない。

ただ、対外債権国といっても、日本はユーロ圏と違って、ほとんどすべてが第一次所得収支(=対外金融債権などから生じる利子・配当金の収支)の黒字だ。その大部分は外貨のまま再投資されてしまう。

2012年以降、日本の貿易収支は黒字がおおむね消滅した。もう日本には拠って立つ実需(貿易黒字)がない。だから、かつてのようなヒステリックな円高にもならない。

思い返したい。アベノミクスのかけ声のもと、円安を受けて輸出が増えて貿易黒字が回復するかと思われたが、そうはならなかった。およそ48%も円安・ドル高が進んだのに、輸出額は5%も増えなかった。

円安と輸出がリンクしなくなった理由には諸説あるので割愛するが、日本はもう通貨安で貿易黒字を積み上げ、そのフィードバックで強烈な通貨高が起きるような国ではない。2021年の為替を見通すこのタイミングで、あらためてこの事実は認識しておきたい。

米金利もドルも「V字」「U字」上昇は想定しにくい

現状、多くの市場参加者はドル安に賭けているようだ。

2020年にドル安をもたらした「金利の低位安定」「ドルの過剰感」は2021年も続くだろうから、ドル安という大まかな方向性には筆者も同意する。しかし、1年を通じてドル安が続くとは考えていない。

すでに述べたように、ワクチンの開発・認可・接種に関する前向きなニュースに呼応してインフレ期待は上昇しており、米10年金利が年央から年後半かけて1.0~1.5%にシフトアップしてくる可能性はある。

そうなってもドルが下がり続けるということはあり得るのだろうか。

その点、年央にかけて自然発生的に出てくるだろう米金利とドルの相互連関的な上昇を、FRBがいかに抑制するかが最大の注目点だ。FRBはある程度の上昇を容認する状況だと筆者は考えている。

ドル/円で言えば、「悪夢の冬」の最中にある1~3月期に100円割れはあり得ると考えるし、年前半は100~105円が主戦場になるだろう。その後、米金利の上昇に応じて、年後半は105~110円に舞台を移すと筆者は予想する。

もっとも、アフターコロナの世界が完全には見えてこない以上、方向感として徐々に米金利とドルが上昇するとしても、それ一辺倒というわけにもいくまい。「V字」や「U字」ではなく、「L字」の横棒がガタつくような動きを筆者は想像している

いずれにしても、2021年はしばらくドル全面安が進んだあと、その後のテイクオフ(上昇)を探るステップになるだろう。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。

(文:唐鎌大輔


唐鎌大輔(からかま・だいすけ):慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構、日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局に出向。2008年10月からみずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)でチーフマーケット・エコノミストを務める。

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