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2度目の「緊急事態宣言」 、前回と何が違う? 知っておきたい11のポイント

2度目の「緊急事態宣言」はどんな内容なのか。

2度目の「緊急事態宣言」はどんな内容なのか。

Business Insider Japan、撮影:吉川慧

新型コロナウイルスの感染が首都圏を中心に拡大していることを受けて、菅義偉首相は1月7日、1都3県(東京、埼玉、千葉、神奈川)に対し、新型コロナ特措法に基づく「緊急事態宣言」の発出を決定した宣言の効力は1月8日から2月7日まで

東京都によると、都内で1月7日(午後3時現在)に感染が確認された人の数が初めて2000人を突破し、2447人に達した。

日本医師会の中川俊男会長は1月6日の記者会見で、感染拡大に歯止めがかからず逼迫が続く医療体制についてすでに医療崩壊しているとの見解を示すなど危機感をあらわにした。

2020年4月の発出以来2度目となる「緊急事態宣言」だが、今回の宣言は前回と何が同じで、何が違うのか。緊急事態宣言の内容についてまとめた。

Q1.そもそも「緊急事態宣言」とは?

新型インフルエンザ

新型インフルエンザ等対策特別措置法の概要

内閣官房新型インフルエンザ等対策室

内閣総理大臣は、新型インフルエンザなど国民の大部分が免疫を獲得していない感染症が発生した場合、緊急の措置を講ずるために「緊急事態」を宣言することができる。これを「新型インフルエンザ等緊急事態宣言(以下、緊急事態宣言)」という。

根拠となる法律は「新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下、特措法)」だ。もともとは新型インフルエンザなど新感染症の対応策を定めるために2012年5月に公布されたが、2020年3月に新型コロナウイルスにも適用できるように改正された(「新型コロナウイルス特措法」)。

Q2.「緊急事態宣言」で何ができるの?

内閣総理大臣が「緊急事態」を宣言すると、対象地域の都道府県知事が法律に基づき、感染防止に必要な協力を要請・指示ができる

実際の「要請」や「指示」を発するのは、内閣総理大臣ではなく都道府県知事となる。

Q3.「緊急事態宣言」発令までのプロセスは?

内閣総理大臣が緊急事態を宣言するためには、特措法32条に基づき、以下の条件を満たす必要がある。

1)国内で発生した新型インフルエンザ等が、以下の2要件を満たすこと。

  • 「国民の生命や健康に著しく重大な被害を与えるおそれがある場合」
  • 「全国的かつ急速なまん延によって国民生活と経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある場合」

2)事前に感染症に関する専門家ら「諮問委員会」にはかり、その意見を踏まえて「緊急措置を実施すべき期間」(2年を超えない期間。ただし1年延長可能)「区域、緊急事態の概要」(患者が確認された地域、患者数等、ウイルスの病原性、症状、感染拡大を防ぐために必要な情報など)を定める。

3)緊急事態宣言の発令を国会に報告し、公示しなければならない。

Q4.「緊急事態宣言」は「ロックダウン」と同じ?

イギリスの行動制限等の現状

イギリスの行動制限等の現状について(4月1日現在)

厚生労働省

日本の「緊急事態宣言」はヨーロッパなどで見られる戒厳令のような「ロックダウン」とは異なる

内閣官房新型インフルエンザ等対策室は、以下のような見解を示している。

欧米におけるロックダウンのように強制的に罰則を伴う都市の閉鎖は生じません。特措法に基づき、都道府県知事により外出自粛要請、施設の使用制限に係る要請・指示・公表等ができるようになります。

そもそも、日本の現行法では「ロックダウン」の定義について定められていない。

日本の「緊急事態宣言」には、罰則を伴う外出禁止命令や強制力をもって交通機関をストップさせるような都市封鎖を実施できる規定はない。

Q5.交通機関・ライフラインはどうなるの?

JR・私鉄、バス、タクシーなどの公共交通機関の運行を制限するものではない。

電気、ガス、水道、電話、通信などのライフラインは平常通り維持される。銀行も全店で営業を続ける方針だ。

Q6.「緊急事態宣言」の対象となった自治体で外出はできるの?

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出典:第20回新型コロナウイルス感染症対策分科会提言

都道府県知事は、生活維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう「要請」できる。

政府の新型コロナウイルス対策分科会は、不要不急の外出・移動、行政機関・大企業を中心としたテレワーク(極力7割)の徹底、イベントの開催要件の強化、飲み会の自粛、飲食テイクアウトの奨励、学校のクラブ活動での感染防止作徹底などを首都圏などに求めている。

今回の緊急事態宣言では、東京都などは午後8時以降の不要不急の外出を自粛するよう求める。また、「週3日・社員の6割以上」のテレワーク実施も要請する方針だ。

医療機関への通院、生活必需品の買い物、必要不可欠な職場への出勤、健康維持のための散歩やジョギングなど「生活の維持に必要な場合」には外出できる。ただし、「要請」に応じなかった場合の罰則はない

特措法45条:特定都道府県知事は(中略)当該特定都道府県知事が定める期間及び区域において、生活の維持に必要な場合を除きみだりに当該者の居宅またはこれに相当する場所から外出しないこと(中略)を要請することができる。

Q7.使えなくなる可能性がある施設は?

新宿交差点

REUTERS/Issei Kato

前回の緊急事態宣言と大きく異なる可能性があるのがここだ。

そもそも緊急事態宣言下では、各都道府県知事は「多数の者が利用する施設」の使用制限を「要請」することができる。

特措法45条の2:特定都道府県知事は(中略)学校、社会福祉施設(通所または短期間の入所により利用されるものに限る)、興行場、その他の政令で定める多数の者が利用する施設を管理する者又は当該施設を使用して催物を開催する者に対し、当該施設の使用の制限若しくは停止または催物の開催の制限若しくは停止その他政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。

前回の宣言下では、カラオケボックスやライブハウスはもとより、一定以上の規模の大学や学習塾、パチンコ店やゲームセンターなどの遊技場、劇場、博物館、美術館、生活必需品以外を販売する商業施設などが休業要請を受けた。営業自粛が相次いだり、学校の一斉休校もあるなど、幅広い業種が影響を受けた。

では、今回はどうなるのか。

政府は7日に決定する「基本的対処方針」の新たな案に、「感染拡大の防止を最優先にする」と明記した。ここだけを見れば、これまでの「経済活動維持との両立」から大きく方針を転換したかたちだ。

ただ実際は、一言で言えば、経済への影響を最小限に抑えたいとする政府の意向によって「限定的」なもの。今回は飲食店を中心とする施設への休業要請がメインだ。

Q8.飲食店、学校、百貨店、劇場などはどうなる?

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出典:東京都

・飲食店は?

今回の緊急事態宣言では、飲食店への営業時短要請が強化が念頭に置かれている。

菅首相は4日の年頭記者会見で「経路不明の感染原因の多くは飲食によるものと専門家が指摘している」と発言した

東京都などは緊急事態宣言に伴い、飲食店に以下の内容を要請する方針だ。

1月8日〜11日まで
「酒類を提供する飲食店」などの営業時間は午後8時まで、酒類の提供は午前11時〜午後7時まで。
1月12日〜31日まで
「全ての飲食店」営業時間は午後8時まで。

政府は定められた期間の全期間で時短要請に応じた1都3県の事業者には、店舗ごとに1日あたり6万円の協力金を支給する。

政府は7日にも緊急事態宣言の発出に伴って政令を改正し、各都道府県知事が特措法に基づいて使用制限を「要請」できる対象に飲食店を加える方針だ。

ただし、飲食店への限定的な対策では効果は乏しいとする意見も専門家から出ている。

西浦博・京都大教授(理論疫学)は6日までに、昨年春の宣言時に近い厳しい対策を講じても、東京都内の感染者が十分に減るまでに約2カ月を要するとの試算をまとめた。より緩やかな対策では、今年度内に感染が十分減ることはないとした。

(時事ドットコム、2021年1月7日)

1月7日、都のモニタリング会議は「20代から60代において、接触歴等不明者の割合が 60%を超えており、活発な社会活動状況を反映し、感染経路の追跡が困難になりつつある」とコメントしている。

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出典:東京都

一方で日本経済新聞などによると、政府は緊急事態宣言を再発出するなか、新型コロナ対策で中小企業に最大200万円を支給する持続化給付金について、15日までとしている申請期限を延長しない方針を固めたという。

・学校、入試は?

学校への一斉休校は要請しないと、すでに萩生田光一文科相が表明している。感染防止策を徹底しながら、対面指導とオンライン学習を組み合わせての学校運営が続くことになる。

また、16日から始まる「大学入学共通テスト」も予定通り実施するとしている。

文科省は、宣言期間中に予定されている小・中・高校の入学試験も予定通り実施するように求めている。

東京都などは、部活動や合唱など、飛沫感染の可能性の高い活動は中止する方針だ。

・映画館や劇場は?

東京都は、今回の宣言に伴って映画館や百貨店、興業場への特措法に基づく営業自粛などの「要請」は実施しない方針だ。ただし営業時間を午後8時までとするよう、法律には基づかない「呼びかけ」をする予定だ。

Q9.イベントはどうなるの?

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出典:東京都

政府は、イベントの開催指針として「収容人数(定員)の50%」か「5000人」のうち、より少ない方を上限とするよう求める方針だ。

すでに東京都などはイベントの延期、オンライン開催、規模の縮小、無観客での開催などを検討するよう求めている。

特措法45条の2に基づき、都道府県知事はイベント開催の中止などを「要請」することができる。

また、正当な理由がないのに施設管理者やイベント主催者が「要請」に応じないときは、都道府県知事が必要があると認めるときに限り、中止を「指示」することができる。

「要請」や「指示」をした場合、都道府県知事はその旨を公表しなければならない。ただ、この場合「要請」「指示」に応じなかった場合の罰則はない

特措法45条の3:施設管理者等が正当な理由がないのに前項の規定による要請に応じないときは、特定都道府県知事は(中略)特に必要があると認めるときに限り、当該施設管理者等に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを指示することができる。

Q10.他にどんなことができるの?

臨時の医療施設を開設するために土地・建物を使用や医薬品・食品などの物資の売渡しを要請できる。

  • 特措法49条に基づき、都道府県知事は臨時の医療施設を開設するために土地・建物を使用できる。所有者の同意が得られない場合は強制的に「収用」できる
  • 特措法55条に基づき、企業などに医薬品や食品など物資の売り渡しを「要請」できる。所有者の同意が得られない場合は強制的に「収用」できる。また、物資の保管を「命令」することができる。

Q11.「要請」「指示」に応じなかった場合、罰則はないの?

現状特措法の中で罰則が定められているのは、以下の2つだけだ。

命令に従わず物資を隠したり、廃棄、搬出などをした場合

特措法76条 第55条第3項の規定による特定都道府県知事の命令又は同条第4項の規定による指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長の命令に従わず、特定物資を隠匿し、損壊し、廃棄し、又は搬出した者は、6月以下の懲役または30万円以下の罰金に処する。

物資の保管場所の立ち入り検査を拒否したり、妨害、虚偽報告などをした場合

特措法77条 第72条第1項若しくは第2項の規定による立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をした者は30万円以下の罰金に処する。

ただし、飲食店をめぐっては政令が改正された場合、都道府県は「正当な理由」なく要請に応じなかった店舗名を公表できるようになる。

国会では緊急事態宣言の根拠法である特措法の改正も検討されている。昨年は政府与党が12月18日に国会を閉会すると決めたことで、特措法の改正は年明けに持ち越された。

菅首相は特措法の改正も視野に入れている。菅首相は年頭会見で「給付金と罰則をセットにして、より実行的な対策をとるために特措法(改正案)を通常国会に提出する」としている。

特措法の改正案をめぐっては、政府や自治体の休業要請に従わなかった事業者への罰金や営業停止などの罰則有無や、休業に伴う補償などが論点になると見られる。

感染を抑え込むためには強制力を持った措置もやむを得ないという意見もある一方、憲法が保障する国民の権利の制限にもつながるため慎重に検討するべきだという声もある。

加藤勝信官房長官は1月7日の記者会見で、特措法について「私権制約を伴う措置も含めて制度改正を見据えた検討を進めている」と述べた。

(文・吉川慧

【UPDATE】緊急事態宣言の発出を受けて、記事を更新しました(2021/01/07 17:37)

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