「トランプ勝利」のマスクを着用して議場に姿を見せたマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(2021年1月3日、ワシントンD.C.)。
Erin Scott/Pool via AP
- アメリカでは1月6日(現地時間)、全米50州およびワシントンD.C.の選挙人による投票結果の証明書をアルファベット順に読み上げ、集計する上下両院合同会議をペンス副大統領が取り仕切る。
- 多くの下院議員と少なくとも13人の共和党の上院議員が、この合同会議でバイデン氏が勝利した複数の州の選挙人投票の集計への異議を唱える考えを示している。
- こうした動きは近代史上、他に類を見ないものだ。
- 連邦議会議員には、選挙人投票の集計に異議を唱える権利があり、異議があった場合は下院、上院それぞれに分かれてその申し立てについて話し合い、採決を行うことになる。
- これにより、手続きは数時間遅れることになる(場合によっては翌日までもつれ込む可能性もある)。だが、実際の選挙結果に影響を与えることはない。
アメリカでは1月6日、全米50州およびワシントンD.C.の選挙人の投票結果の証明書をアルファベット順に読み上げ、集計する上下両院合同会議をペンス副大統領が取り仕切る。これは11月の選挙でバイデン氏が勝ったことを改めて確認する手続きだ。
この合同会議はこれまで、憲法上の手続きの1つとしてほとんど注目されることもなく行われてきた。だが、アメリカ史上初めて、かなりの数の共和党議員が選挙人投票の集計に異議を唱える見込みだ。
2020年12月14日の選挙人による投票で、民主党のバイデン氏は306人を獲得した。トランプ大統領は232人だった。
多くの下院議員と少なくとも13人の共和党の上院議員がこの合同会議でバイデン氏が勝利した複数の州の選挙人投票の集計に異議を申し立てる考えを示している。
わたしたちが知っておくべきこと
- 選挙人団制度の下、合衆国憲法と連邦法は選挙人を選び、その結果を認定する手続きの権限を州に委譲している。
- 連邦議会は選挙人投票の結果を認定しない。連邦議会はそれぞれの州およびコロンビア特別区(ワシントンD.C.) が認定した選挙人投票を集計するのみ。
- ただし、1887年の選挙人団法の下、連邦議会議員は州知事によって「法律に従って認定された」州の選挙人投票の集計に対し、これらが「規則どおりに与えられた」ものでない場合は異議を唱えることができる。
プロセスは?
- 下院議員と上院議員、少なくとも1人ずつが異議を申し立てなければならない。異議が申し立てられたら、下院と上院それぞれに分かれてその申し立てについて話し合い(2時間以内)、採決を行う。
- 議員らはバイデン氏が勝利したアリゾナ州、ジョージア州、ペンシルベニア州の選挙人投票の集計に異議を唱えることで合意している可能性が高そうだとポリティコは1月5日に報じた。ただ、状況によってその州の数は増減する可能性もある。
- それぞれの州の選挙人による投票の結果はアルファベット順に読み上げ、集計されることから、例えばアーカンソー州の結果はアリゾナ州の結果に対して唱えられた異議について十分に話し合い、採決されるまで集計できないということだ。
"異議の申し立て"はうまくいく?
- 答えはノー。
- 異議の申し立てによって手続きは数時間遅れることになる(場合によっては翌日までもつれ込む可能性もある)が、実際の選挙結果に影響を与えることはない。
- 州の選挙人投票を拒否するには、下院と上院の両方で過半数を取らなければならない。
- 下院は民主党が過半数を占めているため、"バイデン勝利"に対する異議は事実上死んでいる。
- 上院は共和党がギリギリ過半数を占めていたが、1月5日(現地時間)にジョージア州で行われた決選投票では民主党が2議席を獲得する見込みで、確定すれば民主党が上院も支配することになる。
- そして、20人以上の共和党の上院議員が選挙人投票の集計への異議には一切賛成しないと明言またはそうする考えを示しているため、上院でも"異議"が通る望みはない。
同じようなことは前にもあった?
- 選挙人団法(1887年)が成立して以来、下院と上院で選挙人投票の集計について話し合い、採決を行うことになったのは2度しかない。
- 1969年には、2人の議員がノースカロライナ州の不誠実な選挙人の票の集計について異議を申し立てた。2005年には、バーバラ・ボクサー(Barbara Boxer)元上院議員とステファニー・タブス・ジョーンズ(Stephanie Tubbs Jones)元下院議員がオハイオ州では有権者の投票妨害が横行していたとして、ジョージ・W・ブッシュ氏に投票した同州の選挙人投票の集計に異議を申し立てた。
(翻訳、編集:山口佳美)