半導体大手エヌビディア(Nvidia)の経営幹部が、自動運転スタートアップのトゥーシンプル(TuSimple)に早くから注目し、出資に動いた理由を語った。
TuSimple
- 画像処理半導体のエヌビディア(Nvidia)は2017年の段階で自動運転トラック開発のトゥーシンプル(TuSimple)に出資している。
- エヌビディアのバイスプレジデントは、トゥーシンプルの持つテクノロジー、戦略、チームづくりを高く評価した。
- ライバルにはウェイモ(Waymo)やオーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)がいるが、同バイスプレジデントはトゥーシンプルがすでに「(競争から)一歩抜け出した」とみる。
セミトレーラー向け自動運転システムの開発を進めるトゥーシンプルが配送・流通業界から熱い視線を集めている。
2015年設立の同社は、ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の貨物輸送を請け負うほか、ナビスター(Navistar)、ペンスキー(Penske)、ユーエス・エクスプレス(US Xpress)といった輸送関連の大手企業とも提携する。
グーグル兄弟会社のウェイモ、アマゾン出資のオーロラ、ソフトバンク出資のアイク(Ike)など、トゥーシンプルのライバルは5年前の創業時より増えた。
しかし、そうした企業に先行して開発を進めたことで、2027年までに20億ドル(約2100億円)規模に成長するとされる自動運転トラック市場において、競合に対して優位なポジションを確保できている、トゥーシンプルはそう自己分析する。
また、同社のサプライヤーであり出資企業でもあるエヌビディアのバイスプレジデント(ビジネス開発担当)、ジェフ・ヘルプストもその見方に同意する。
「トゥーシンプルは(競合)集団から抜け出した感じがする」
Business Insiderのインタビューに応じたヘルプストは、トゥーシンプルに出資したのはなぜか、なぜ同社には明るい未来が待っていると考えるのかを語った(なお、エヌビディアは具体的な出資額を明らかにしていない)。
2001年から20年近くエヌビディアの成長に貢献を続けてきたバイスプレジデントのジェフ・ヘルプスト(本動画では創業からの成長プロセスについて語っている)。
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以下に、ヘルプストの見方を紹介しよう。
業界随一のテクノロジー
TuSimple
ヘルプストは初めてトゥーシンプルを訪ねた際、そのテクノロジーが「信じられないほどに素晴らしい」と感じ、その考えは現在も変わっておらず、同社は自動運転セミトレーラーを開発する他のどの企業より高い技術を誇ると評価する。
同社の長距離認識(コンピューター・ビジョン)システムは、何か起きても(重量が大きいために)急停止ができないセミトレーラーにとって、とくに重要な意味を持つ。
トゥーシンプルは、光学カメラとライダー(LiDAR、レーザー光を用いたリモートセンシング技術)の的確な組み合わせにより、1000メートル先の物体を検知するシステムを生み出した。
賢明な戦略
TuSimple
トゥーシンプルは、数ある自動運転開発企業のなかでも(ヘルプストが同社を訪問した)当初から大型トラックに特化して開発を進めてきた数少ない企業のひとつだ。
旅客用の自動車ではなく輸送トラックに特化することは、ふたつの理由で賢明な判断だと、ヘルプストは評価する。
ひとつは、一般乗用車向けより、トラック向けの自動運転システムを構築するほうが簡単だからだ。トラックは高速道路を中心にあらかじめ決められたルートを走るケースが多いため、(自動運転システムによる対応が難しくなるような)想定外の状況に巻き込まれる可能性が低い。
もうひとつは、利幅が狭く、ドライバー人件費の過大なコストに苦しむ配送・流通企業にとって、トゥーシンプルのテクノロジーが明確な利益をもたらすことができるからだ。
2015年のトゥーシンプル創業後、ウェイモやオーロラ、アイク、コディアック・ロボティクス(Kodiak Robotics)といった競合が次々に登場したことそれ自体が、トゥーシンプルの掘り起こしたビジネスチャンスが有望であることの証左といえる。
創業者の情熱とビジョン
創業者兼最高技術責任者(CTO)のホウ・シャオディ(侯暁迪)。
Vaughn Ridley/Sportsfile for Web Summit via Getty Images
ヘルプストは、トゥーシンプルの創業者で最高技術責任者(CTO)のホウ・シャオディ(侯暁迪)の情熱とビジョン、さらには彼と共同創業者のチェン・モウ(陳黙)がつくり上げたチームを高く評価する。
ヘルプストによれば、ホウは非常に柔軟で、自分の考えに固執することなく、ビジネスプランの修正が必要であると納得できればすぐに行動に移す人間だという。
「(トゥーシンプルを訪ねて対話したときから)必要なときに必要な方法で軌道修正をできる人間だと感じたし、いまもそう思っている」
(翻訳・編集:川村力)