アマゾンが密かに開発を進める睡眠監視デバイス、コードネームは「ブラームス(Brahms)」。
spatuletail/rvlsoft/Shutterstock.com/Business Insider Japan
- アマゾンが睡眠時の無呼吸状態をモニタリングするアレクサ対応デバイスを開発している模様だ。Business Insiderの独自取材で判明した。
- 開発情報に詳しい関係者によれば、同デバイスは非接触式。レーダー技術を活用して睡眠と呼吸のパターンを監視できるという。
- アマゾン社内では「ブラームス」のコードネームで呼ばれている。
- この睡眠監視デバイスの開発プロジェクトから、ありとあらゆるモノを音声アシスタントのアレクサと連携させるための「手当たり次第」的アプローチが続いていることが明らかになった。
- このアプローチからは、「アマゾン・エコー」のような大ヒット商品が生まれる一方で、アレクサ対応電子レンジや室内用ドローンなどの微妙なプロダクトも登場している。
アマゾンが、睡眠時無呼吸を監視・捕捉するアレクサ対応デバイスを開発していることが、Business Insiderの取材で明らかになった。
同社の製品開発に詳しい関係者によると、ナイトスタンドに置いて使う手のひらサイズのデバイスで、非接触技術を活用して睡眠障害をモニタリングできる。
主にミリ波レーダー(=対象との距離や角度など位置情報を高精度で検知するセンシング技術)を用いてユーザーの睡眠および呼吸パターンを監視し、睡眠時無呼吸にともなう呼吸停止が生み出す微細な変化を捕捉するという。
アマゾン社内では「ブラームス(Brahms)」のコードネームで呼ばれており、Business Insiderが入手した社内資料によれば、『子守歌(Wiegenlied)』の作曲者で、本人も睡眠時無呼吸に悩まされたとされるドイツの音楽家ヨハネス・ブラームスにちなんだ名称のようだ。
このデバイスがいつリリースされるのかは不明。アマゾンの広報担当にコメントを求めたが、返答は得られなかった。
開発中とされる睡眠監視デバイスは他のアレクサ対応デバイスと接続したり、スマホアプリなどに通知を送信したりできる模様。
情報提供してくれた関係者によれば、プロトタイプ(試作機)は金属ワイヤーベースの上に六角形のパッドを縦にして取りつけたような見かけをしているという。
アマゾンは2018年にアレクサ対応電子レンジを発表。「アレはさすがに失敗」など厳しい批評にさらされている。
Stephen Brashear/Getty Images
今回初めて存在が明らかになったこの睡眠監視デバイスにより、アマゾンが音声アシスタント普及拡大のため、家庭用ハードウェアを手当たり次第アレクサに対応させる戦略をいまだに継続中であることが明らかになった。
アマゾンはこの戦略を通じて、スマートスピーカー「アマゾン・エコー」のようなヒット商品を世に送り出すことに成功しているが、一方で、世間から微妙な反応を集める風変わりなプロダクトも生み出している。
2018年発表のアレクサ対応電子レンジや、2020年発表の(アレクサ対応)カメラ搭載室内監視ドローンがその例だ。
ヘルスケア市場は激戦区
アマゾンは2020年、初のウェアラブルデバイス「ヘイロー(Halo)」を市場投入。ただ、2020年12月の米ニューヨーク・タイムズは酷評している。
Screenshot of The New York Times website
ここ数年、アマゾンは睡眠監視デバイスの開発チームを強化。社内の他部門に頼ることなく、アプリケーションやクラウドの開発までチーム内で完結できるよう注力してきた。
インド・ムンバイへのチーム展開もその一環で、ソフトウェアやインフラ開発にあたる人材を現地で登用している。
また、睡眠時無呼吸にとどまらず、他の睡眠障害にも射程を広げるより深い睡眠分析プログラムを構築するため、アマゾンは同社の先進的な機械学習システムやクラウドインフラを活用する計画という。
アマゾンは1月4日、JPモルガン、バークシャー・ハサウェイと合弁設立したヘルスケアサービス会社「ヘイブン(Haven)」の事業終了を発表しているが、今回明らかになったコードネーム「ブラームス」の開発計画は、ヘルスケア分野への進出を加速したいアマゾンの意図を明確に示していると言えるだろう。
2020年をふり返ると、アマゾンは同社初のウェアラブルデバイス「ヘイロー(Halo)」とオンライン処方サービス「アマゾン・ファーマシー」をローンチさせ、ワイヤレスイヤホン「エコー・バッズ(Echo Buds)」にフィットネス・トラッカー(=歩数や消費カロリー、ワークアウト時間などの計測)機能を組み込んだ。
またその前年には、「アマゾン・ケア」と呼ばれる自社の従業員向けプライマリーケア(初期診療)プログラムを導入し、他社への有償提供も検討している。
いずれにしても、アマゾンはますます競争が厳しくなる睡眠監視デバイス市場に乗り込んでいくことになる。
アップルは2017年5月、睡眠監視デバイスを開発するフィンランドのスタートアップ、ベディット(Beddit)を買収。ハードウェア大手の韓国サムスンや中国シャオミ(小米)から、オーラ(Oura)やスリープスコアラボ(Sleepscore Labs)のようなスタートアップまで、同分野には新規参入が殺到している。
市場調査会社の360リサーチレポーツによると、睡眠監視デバイス市場はこれから年率およそ16%の勢いで成長を遂げ、2026年までに435億ドル(約4兆6000億円)規模に達する見込みという。
[原文:EXCLUSIVE: Amazon is quietly building a new Alexa device to help you sleep better]
(翻訳・編集:川村力)