日本医師会の中川会長「現実はすでに医療崩壊」と危機感 東京の感染者1591人

東京都で1591人の感染者が確認された1月6日、日本医師会の中川俊男会長が記者会見を開いた。

中川会長は、12月から感染の拡大が止まらない現状において、政府が1都3県に対して緊急事態宣言の発令を検討しはじめたことについて、「大いに評価する」としながらも、現状の医療について「すでに医療崩壊している」との見解を示した。

1月6日、東京都の感染者数1591人(重症者は前日より2人増の113人)の内訳は以下の通りだ。

  • 10代未満:42人
  • 10代:66人
  • 20代:439人
  • 30代:326人
  • 40代:278人
  • 50代:196人
  • 60代:111人
  • 65歳以上:179人

20代、30代の感染者数が依然として多いが、それ以上の年代でも感染は広がっている。

なお、東京都の20代の人口は約170万人。例えば、20代の感染者が一日300人確認され続ければ、1カ月後(30日後)には20代だけで感染者は9000人に及ぶ。大雑把にいえば、200人に一人が感染する計算となる。

“新型コロナはただの風邪”に苦言 「感染力は桁外れ」「重篤化率、致死率が違う」

中川会長

日本医師会の中川会長。

出典:日本医師会「日医オンライン」

記者会見では、中川会長から現状の医療提供体制などに関する説明がなされた。

一部では、民間病院などで新型コロナウイルス感染症の受け入れが少ないことなどを指して、「医療崩壊していない」との声も囁かれている。

中川会長は、この考え方は間違いだと指摘した上で、現在の医療提供体制、医療崩壊の考え方について次のように話す。

「新型コロナ対策の医療と、通常の医療が両立することで機能しています。その両立が困難になるのが医療崩壊です」

ICUや病棟がコロナ患者で占められてしまえば、通常の重症者に対して使用できなくなることは自明だ。

新型コロナの診療は、こういった役割分担のもとづいて行われているため、感染者が増加すれば、その分、通常の診療が圧迫されていくこととなる。

すべての医療機関で日常診療と同時に新型コロナウイルス感染症の診療を行おうにも、医療機関に混乱が生じ、さらなるクラスター発生リスクを背負うことにもなりかねない。もしそうなってしまえば、通常の医療との両立ができなくなる恐れもある。

「必要なときに適切な医療を提供できない、適切な医療を受けることができないというのが、医療崩壊です。医療自体を提供できない『医療壊滅』のような状況にならなければ医療崩壊ではないというのは誤解です。現実はすでに医療崩壊です」(中川会長)

また、中川会長は、いまだ根強い「新型コロナはただの風邪」という意見にも苦言を呈す。

2020年1月以降、新型コロナウイルスの流行にともない手洗いやマスクなどの取り組みが進んだことで、インフルエンザの感染者数は激減している。しかし、その一方で新型コロナの感染はとどまる気配がない。

「感染力が桁外れに強いのです。そしてなによりも、重篤化率、致死率の違いがあります」(中川会長)

季節性インフルエンザは約1300万人が罹患し、インフルエンザウイルス以外の二次感染症を理由に、3000人〜7000人が死亡しているという。

一方、新型コロナウイルスは既に25万人に感染し3700人以上が新型コロナウルス自体で亡くなっている。仮に新型コロナがインフルエンザと同規模にまで広がった場合の深刻さは、想像に難しくはないだろう。

加えて、臓器などに多くの後遺症が残ることも分かってきている。

「新型コロナを単なる風邪の一種だと甘く見てはいけないのです」(中川会長)

国会議員は全面的に会食自粛を。「まずは、隗よりはじめよ」

記者会見で中川会長は、国会議員に夜の会食の全面的な自粛を求め、あらためて2020年4月頃に行われた強い感染対策を実行できる連帯感を取り戻す必要性を述べた。

中川会長は、緊急事態宣言の効果を最大化にすべく「国会議員に手本を示していただきたい。『まず隗より始めよ』です」と訴えた。

また、緊急事態宣言の発出にともない、大きな打撃を受けることが想定される飲食業界への配慮や保健所などへの支援も強く求めている。

自民・森山国対委員長「会食4人まで」の考え

自民党の森山国対委員長(2015年)

自民党の森山国対委員長(2015年)

REUTERS/Yuya Shino

衆参両院の議院運営委員会は、緊急事態宣言下における国会議員の会食のあり方におけるガイドラインをまとめる方針だ。

産経新聞によると、自民党の森山裕国対委員長は1月6日、について「1都4県においては、会食の参加人数は4人までとすることを明確化する考えを示した」という。

森山氏は「1都3県では夜の会食は午後8時までとし、アルコールをいただく時間は同7時までとすることを、しっかり守っていくことと、大勢で会食をすることは問題もあるので、4人までとすることを議運で合意ができればありがたい」と語った。
(産経ニュース2021年1月6日)

コロナ禍における政治家の会食をめぐっては、菅義偉首相が2020年12月14日夜、都内のステーキ店で自民党の二階俊博幹事長らと5人以上で会食したことで批判を受けた。政府が5人以上での会食を控えるよう呼びかけていた最中だった。

菅首相は12月25日の記者会見で「大人数での会食を避けることを要請する立場にありながら、深く反省をしている。改めてお詫び申し上げる」と陳謝している。

(文・三ツ村崇志

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