PayPayや楽天「巨大経済圏」とどう戦う?「Kyash」「pring」の現在地

スマホ決済アプリ種別

国内の主な決済系スマホアプリの種別。独立系以外は資本的にも経済圏も強大なプレイヤーがほとんど。

作成:Business Insider Japan

キャッシュレス決済を提供する事業者は、電子マネーやクレジットカードも含めれば、その数は膨大になる。大手プレーヤーの状況は、先日の記事で総括した通りだ。

決済系スマホアプリは大きく分けて「銀行系」「携帯キャリア系」「ネットサービス系」「独立系」の4種類に分類できる。

その中で、独立系は決済ベンチャーによる小規模事業者が中心だ。例えばコード決済・送金の「pring」、バンキングアプリの「Kyash」が挙げられる。

独立系の先駆けとなったOrigamiがサービスを停止したこともあって、今後のサービス動向には期待と不安も入り混じる。大手に資金力で負ける独立系が、どのように生き残りを図っていくのか。

独立系の決済ベンチャーの「いま」を分析する。

【pring】投げ銭などコミニュケーション機能で独自色を出す

pring_seven_CEOs

pringの荻原充彦社長(右)とセブン・ペイメント・サービスの和田哲士社長。pringはセブン銀行ATMで残高を出金できる。

撮影:川村力

pringは、コード決済にも対応しており、JCBのSmart Code加盟店を中心に決済も可能だが、もともと「お金のコミニュケーション」を目指している。

どちらかというと、決済よりもメッセージング機能を搭載した送金アプリという位置付けだ。特徴的なのは銀行口座からの入金だけでなく、回数限定ながら「口座への出金」も無料化している点。

2020年になって出金手数料の無料回数が月3回から1回に削減されたことで同社の苦しさも見え隠れするが、月に1回だけでも無料で口座に出金できるため、個人間送金として利便性は高い。

業務用pring

経費精算やキャッシュバックキャンペーンの送金など、B2C向け機能の「業務用pring」。

出典:pring

加えて、法人向けのサービスも特徴的で、従業員への給与支払いや経費精算、自社ユーザーへのキャッシュバックなどのような用途が想定されている。

銀行口座に直接振り込むより、法人側にとっては手数料が削減でき、小口の送金にも適している。受け取った個人は無料回数内であれば、銀行へそのまま出金でき、口座番号などを知らせる必要もない。

法人としては日本瓦斯(ニチガス)などが採用しており、さらにオリコと提携して法人送金サービスを強化していく計画だ。

チームでの投げ銭機能はアイドルやスポーツクラブでも活用

愛媛FC

愛媛FCは無料送金アプリ「pring」を活用してイベントを行った。

愛媛FCのリリースより。

pringの特徴の1つがコミニュケーション機能を生かした“投げ銭”による「チーム」機能。ファンコミュニティーの作成と個人による金銭の支援が簡単にできるという点で利用が進んでいる。ももいろクローバーZなどのアイドルグループの動画に対してファンが投げ銭する、といった使い方がされている。

これを発展させる形でさらにファンコミュニティに特化したのが、サッカークラブの松本山雅FC、愛媛FC、ギラヴァンツ北九州、バスケットボールチームの宇都宮ブレックスのサポーター・ファン向けの専用アプリ提供だ。

こうした方面は、もともとコミニュケーションアプリのLINEが得意分野と思われがちだが、LINE自身は送金や投げ銭といった方向性より、決済に注力している段階。その意味で、送金・投げ銭に関してはpringが先行している。


【Kyash】新形態のバンキング目指すも新サービスが中止になったが……

Kyash経営陣

写真左からKyash代表の鷹取真一氏、CTOの椎野孝弘氏(2020年12月撮影)。

撮影:小林優多郎

Kyashは、アプリ内でバーチャルカードやクレジットカードの発行に対応。コード決済には対応せず、スマートフォンのタッチ決済または物理カードが使える決済サービスだ。

もともと個人向けのサービスに加え、法人向けの決済プラットフォーム「Kyash Direct」も提供していたが、これを売却して個人向けサービスに特化することを2020年に発表した。

Kyash Direct

2019年4月に発表したB2BのKyash Direct。その後、2020年10月に同事業をインフキュリオンに譲渡した。

撮影:小林優多郎

Kyashは、カード発行、送金業務を自社で運用している。大手銀行よりも動きが速く、小回りがきく点が特徴とも言える。カードの仕組みとしては、プリペイド(前払い)形式だ。

おトクから便利に、銀行に近いサービスの展開を想定

Kyashの強み

Kyashの強みは、自社でアプリ開発からカード発行まで行えている点にある。

撮影:小林優多郎

当初は還元ポイントで人気を博していたKyashだが、高還元のポイントは体力勝負であり、ベンチャーでは継続が難しい。決済カードとしては、アプリによるカード管理機能が充実していて、カードの発行からリアルタイムの利用履歴管理、利用制限などができる点も特徴。このアプリから利用できるサービスをさらに充実させるのがKyashの方向性だ。

その一環として12月には「残高利息」というサービスを発表したが、サービス自体の設計を見直すことになった。

Kyash広報は「ステークホルダーなど関係各所への迷惑がかからないように見直す」と話しており、内容見直しに至った詳細は現時点でも公表していない。いずれにしても、いわゆるチャレンジャーバンクなどと呼ばれる新たな銀行(的な)サービスの提供を狙っている。

2020年に資金移動業として登録したKyashは、正確な意味で言えばチャレンジャーバンクではない。が、より銀行に近いサービスを、アプリから簡単に利用できるようにすることが狙いだ。

銀行とまったく同じサービスの提供はできないが、与信や融資、ローン、為替といった分野に進出し、金融サービスを独自のテクノロジーで改善していきたいとしている。

残高利息

2020年12月1日に発表した「残高利息サービス」だが、12月7日にリリース中止を発表。Kyashはサービス名称及び内容を見直す方針。

撮影:小林優多郎

第1弾となる残高利息ではつまずいた形だが、Kyash社長の鷹取真一氏は2020年12月の発表会で2021年はさまざまなサービスを矢継ぎ早に提供していきたい意向を示している。これは、コード決済事業者のPayPayやau PAY(KDDI)、LINE Pay(LINE)も方向性としては近しいものはある。

ただ、PayPayとジャパンネット銀行、au PAYとauじぶん銀行、いずれも本格的な連携はこれからで、そもそもLINEは銀行の設立から始める必要がある。

大手を前に、新たなバンキングアプリとしてKyashが「独自性」を打ち出せるかが、2021年を生き抜くポイントになるだろう。これはpringも同様で、独自性とニッチでも確実な利用者の確保と事業の継続が実現できるか次第だ。

(文・小山安博


小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。

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