最新の顔認証アルゴリズム、マスクをしていても認識率96%…空港などでマスクを外すリスク軽減に期待

2020年3月3日、新型コロナウイルスが大流行する中、住居に入るために顔認証システムの前に立つマスクをつけた女性。

2020年3月3日、新型コロナウイルスが大流行する中、住居に入るために顔認証システムの前に立つマスクをつけた女性。中国浙江省杭州市。

Cai Zixin/Getty Images

  • アメリカ国土安全保障省(DHS)は、マスクをした飛行機の搭乗者の顔を、96%の確率で識別できるという顔認証技術のテストを行った。
  • 新型コロナウイルスのパンデミック以前の顔認識アルゴリズムでは、マスクをした人の顔を識別できる確率は低かった。
  • 入国管理手続きなど、公共の場でマスクを外さずにすむように、顔認証技術の改善に向けた取り組みが増えている。
  • 顔認証技術は2020年の夏、多くのアルゴリズムに人種的な偏りがあるとの指摘によって注目された。

アメリカ国土安全保障省(DHS)科学技術局(S&T)の新たなデータによると、最新の顔認証技術では、マスクをした飛行機の搭乗客の顔をほぼ正確に識別できるという。

「これは最先端の技術だ」と、DHS S&Tの生体認証アイデンティティ技術センターでディレクターを務めるアルン・ヴェムリー(Arun Vemury)は述べた。

DHS傘下の試験所で開催された2020年度生体認証技術大会(Biometric Technology Rally)で、最高の成績を修めた認証システムは、マスクありで96%、マスクをなしではほぼ100%の認証率だった。ここでは、さまざまなカメラやアルゴリズムを組み合わせた60の顔認証システムがテストされた。

その結果を示す試験データによると、マスクありの場合、認証率の中央値は77%だったのに対し、マスクなしの場合は93%だった。最も成績の悪かったシステムは、マスクありの場合で4%、マスクなしの場合で11%の認証率だった。

「理想は、どんな状況でも認証率を100%にすることだ」とヴェムリーは結果について述べた。とはいえ「現時点で最も優れたアルゴリズムは、顔を見分けるのが得意な人間よりも、間違いなく優れている」と付け加えた。

DHSは、自動化された生体認証システムを開発するよう法律で義務付けられている。そのシステムとは、顔や指紋といった身体的特徴を利用して、出入国する外国人を識別するためのものだ。

この試験結果に基づけば、空港などの顔認証技術を使用する必要がある組織が適切なシステムを導入することで、旅行者などが顔認証のためにマスクを外す必要がなくなり、旅行者や空港スタッフの感染リスクを軽減できるだろう、とヴェムリーは述べた。2020年度生体認証技術大会のデータはまだ暫定版であり、今後さらに多くのデータが発表される予定だ。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が2020年7月に発表したレポートによると、当時、もっとも優れた生体認証アルゴリズムであれば失敗は5%だったが、パンデミック発生以前のいわゆる「pre-COVID-19アルゴリズム」のほとんどは、マスクありの場合、20%から50%の割合で顔認証に失敗していた。

その後、NISTが2020年11月に発表したレポートでは、パンデミック発生以後、アルゴリズムの精度が格段に向上したことが示されている。「2020年3月中旬以降に開発された多くのアルゴリズムは、パンデミック以前のものと比較すると、マスクありの場合の顔認証の失敗率が大幅に減少した」とレポートには記されており、中には失敗率が10分の1になったものもあるという。

一方、顔認証以外の生体認証システムは、パンデミックの時代に機能させるのは難しいと、生体認証アルゴリズム企業のランクワン・コンピューティング(Rank One Computing)は述べている。例えば、指紋による生体認証は接触によるウイルス感染のおそれがあり、虹彩認証は集団に対して使うのは難しいという。

顔認証技術は、これまでプライバシーに関する問題で、批判の的となってきた。最近では、ブラック・ライブズ・マターの活動家たちが、この技術には人種的な偏見があると批判してきた。また、いくつかのテック企業は、警察へのシステムの販売を拒否している。

2020年12月には、黒人男性が顔認証ソフトで万引き犯に誤認されたとして、ニュージャージー州の警察を訴えた。同年6月にも、デトロイトの黒人男性が顔認証ソフトによる誤認で30時間拘束されている。

NISTの2019年のレポートでは、白人の顔の画像と比較して、アジア系、アフリカ系アメリカ人、先住民の顔の画像では誤認証が多いことが示されている。マサチューセッツ州、カリフォルニア州、ニューハンプシャー州、オレゴン州ポートランドなど、いくつかの州や都市では、警察による顔認証技術の使用に制限を設けているが、地域によってそのルールは異なる

認証能力の違いに対応するため、2020年度生体認証技術大会では、60カ国から582人のボランティアの協力を得て、多様な人種のデータを集めたと、DHSのヴェムリーは述べている。

[原文:New facial-recognition technology can accurately identify travelers wearing masks 96% of the time, according to a test run by the Department of Homeland Security

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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