「災害は平等だが結果は平等ではない」READYFOR 支援団体へコロナSOS基金設立

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いのちとこころを守るSOS基金。

提供:READYFOR

クラウドファンディングサービス「READYFOR」を運営する、READYFOR社は東京コミュニティー財団とともに、生活困窮家庭の支援や医療従事者のメンタルケアを行う団体への助成を目的とした基金『新型コロナウイルス感染症:いのちとこころを守るSOS基金』を新設した。長引くコロナで苦境に陥る、医療や福祉の最前線で支援を行ってきた団体のサポートが目的だ。

寄付の募集期間は、1月6日から3月26日まで

寄附は1口あたり1000円から1000万円までのいくつかのパターンから選ぶことになる。なお、寄付した金額に応じて、税制優遇措置が受けられる。

集まった寄付金の助成先は、2月上旬を目処に公募されたのちに、READYFORと東京コミュニティー財団の助成委員会、それぞれの審査を経て決定、発表される。

助成金の支給は4月上旬を目処に開始される予定だ。

国内最高金額となる寄付総額「27億円」を目指す

米良さん

READYFORの米良はるか代表。

撮影:三ツ村崇志

READYFORと東京コミュニティー財団は、2020年の4月から12月にかけても、医療従事者やエッセンシャルワーカーへの助成を目的とした『新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金』を設立していた。

この基金では、2020年12月31日の最終日までに2万人を超える支援者から、国内のクラウドファンディングでは最高額となる8.7億円もの寄付を集めることに成功。

集まった資金は、2020年4月から段階的に、マスクやアルコールなどの購入資金として活用されている。

READYFORの米良はるか代表は、今回あらためて基金を設立する背景として、こう語る。

「感染拡大から1年が過ぎようとしています。コロナの影響は当初の想定を越えて長期化しています。そのような中で、医療や福祉の最前線で支援を行ってきた団体が苦況に陥っている状況が見えてきました」

READYFORでは、2020年11月に、生活困窮者などの支援団体などを対象にアンケートを実施(回答団体数は348団体)。

新型コロナウイルスの流行の長期化によって、支援が必要な生活困窮者などが大幅に増加したことで活動費用が増え、9割以上の支援団体が「すでに資金が不足している」「今後、資金が不足する可能性がある」と、深刻な資金不足におちいっている状況が明らかになったという。

READYFORによると、現時点ですでに17億円の資金が不足しており、今後、緊急事態宣言の発出によって支援の需要が高まれば、さらに10億円程度の資金が不足する可能性があるという。

米良代表は、今回の基金の目標金額として、今後不足する可能性のある総額27億円を目指したいとしている。これは当然、国内のクラウドファンディング史上、最高額となる。

READYFORが2011年に創業してから、これまでに支援してきた資金総額は約170億円。その約15%を一度のプロジェクトで集めることは、かなり無謀な目標のようにも感じる。

米良代表は、プロジェクトに臨む上で次のように語った。

「今まで、日本に寄付文化がないと言われている中で、クラウドファンディングは広がってきました。より透明性高く、現場がこう変わったということを伝えて、『応援してよかった』という気持ちを高められるかが非常に大事だと思っています」

なお、READYFORでは、今回の基金に際して、サービス手数料は無料としている。(別途決済手数料、運営費は一部かかる)

緊急事態宣言で「困窮者増」を憂慮

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左から、READYFORの米良代表、村木厚子氏、医療法人悠翔会佐々木淳理事長。

撮影:三ツ村崇志

なぜこれほど資金が不足しているのか。

新型コロナウイルスの流行によって感染者が増え続けることで、医療従事者たちの間では、長時間、過酷な労働が強いられている。こういった現場はよく報道されているが、実は、これと似たような状況が、増え続ける生活困窮者などを支援する団体でも起きているという。

内閣府からは持続化給付金や雇用調整助成金など、「経営状態が悪くなった事業者」に対する支援策が提示されている。また、厚生労働省のコロナ関係の補正予算の中には、生活困窮者の自立支援のための予算もある。

ただし、基本的に自治体経由で委託されているNPO以外の草の根的に活動する団体にまで、そういった予算が十分に行き渡っているとは言い難い。

首都圏で若者などに対する支援を中心に活動している、村木厚子氏(元厚生労働事務次官)は、児童養護施設を出た後の子どもたちや、若年女性の間で次のようなことが起きていると話す。

「飲食店などの三次産業で働いている若者や、非正規の若者の失職が目立ちます。また、2020年春に東京に出てきたばかりの人の困窮も目立っています。


若年女性の支援を行っている若草プロジェクトでは、コロナの影響が顕著に出ていました。4月からLINE相談が急増し、週2日だったものを毎日に切り替えました。2020年は5月がピークで、以降、だんだんおさまってきましたが、緊急事態宣言でどうなるか憂慮しています」

若年女性からの相談で多いのが、メンタルの問題と家族関係に関する内容。

仕事を失った。家に居場所がない。最も深刻なケースでは「死にたい」という相談も増えているという。実際、2020年7月以降、女性の自殺数が急増している。

変更相談件数が増えれば、こういった支援に必要とする費用がどんどん膨らんでいく。結果、支援団体自体も資金難に直面する状況が起きつつあるようだ。

「過去から引き継いだ脆弱性や格差が露見した」

厚生労働省資料

厚生労働省の支援実績。

出典:厚生労働省

北九州で生活困窮者に対する支援を行っている認定NPO法人「抱樸」(ほうぼく)代表の奥田知志氏は、

「過去から引き継いできた脆弱性や格差が、今コロナで表出しているのだと思います」

とコロナ禍で浮き彫りになった課題を語る。

2020年12月25日の厚生労働省から発表によると、コロナの影響による失業者は全国で約8万人に及んでいる。

もともと厚生労働省では、失職に伴い住居をなくす可能性がある人に対して、一定期間の家賃を支給する「住居確保給付金」という支援制度を設けている。

2019年度は、この制度の申請件数は約4000人だった。一方、2020年は4〜10月だけで約11万件の申請があった。

また、無利子・無担保で借りられる「緊急小口貸付」などの貸付制度の申請も、2019年度は1万件程度だったのに対して、2020年度は4〜11月までで約133万件。生活困窮者が殺到している状況が伺い知れる。

奥田氏はこう話す。

「災害は平等に来ると言われているが、結果は平等ではありません。もともと脆弱な環境にいた人たちは、この“災害”の影響をまともに受けてしまっている状況です」

奥田さん

特定NPO法人「抱樸(ほうぼく)」代表の奥田知志氏。

撮影:三ツ村崇志

また、奥田氏は支援を継続する上での資金不足となる理由、課題について、大きく3つのポイントがあると話す。

「1つ目はコロナによって通常の支援活動以上の資金がかかるようになった点です。たとえば消毒など、当初見込んでいなかったことにも資金が必要になっています。


2つ目は人件費です。(支援団体には)今まで想定していた枠組みを遥かに超えた量の相談が来ているので、職員も超過勤務や休日出勤をしないといけなくなっている状況が続いています。


また、この状況は1年、2年では済まず、長期化すると思っています。3つ目のポイントとして、支援を継続的、持続的にするための仕組みづくりに資金を投入しても良いと思っています。」

増え続ける感染者を抑えるために1月7日、政府は緊急事態宣言を発出する。

これによって、ある程度感染者の増加は抑えられるかもしれないが、同時に、飲食店を中心に経済的な打撃は免れない。つまり、これからさらに生活困窮者が増加する可能性をはらんでいるということだ。

行政からの十分な支援とともに、現場で活動する支援団体の活躍の重要性も増していくことは間違いない。

なお、READYFOR設立の基金への支援額は、公開から1日経過した1月7日午後2時の段階で、すでに500万円を越えている。基金への寄付はこちらから。

(文・三ツ村崇志

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