記者会見する菅義偉首相と尾身茂・新型コロナウイルス対策分科会会長(2021年1月7日)
出典:首相官邸You Tubeチャンネル
菅義偉首相は1月7日午後6時から記者会見を開き、新型コロナ禍で2度目となる「緊急事態宣言」の発出を決めた経緯を説明した。1月8日からの1カ月間で、政府が目標とする感染状況を「ステージ3」に近づけることは可能なのか。会見に同席した政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は「1カ月未満でステージ3に近づけるのはそう簡単ではないが、4条件を満たせば可能」と見解を述べた。
出典:首相官邸You Tubeチャンネル
菅首相は緊急事態宣言による感染拡大のポイントとして、飲食店の夜8時までの営業時短要請、テレワークによる出勤者7割減、夜8時以降の不要不急の外出の自粛、スポーツ観戦・コンサート等の入場制限の4つを挙げた。
菅首相は経営状況の悪化が懸念される事業者に向けては、雇用調整助成金や140万円の緊急小口資金、公庫からの無利子無担保の資金融資などを利用することを呼びかけた。
また、ひっ迫する医療提供体制を受けて、重傷病床の増床に応じた病院には1床あたり約2000万円を上乗せで補助することを表明した。
加えて、感染者の半分以上が30代以下だとしての「大切な命を守るために、ご自身のことと捉えて行動をお願いしたい」と呼びかけた。
一方で、新型コロナ対策で中小企業に最大200万円を支給する持続化給付金が1月15日申請期限を迎える。菅首相は、新たな持続化給付金や期限延長について問われたが、飲食事業者向けの協力金や雇用調整助成金、公庫の融資利用の呼びかけにとどめた。
尾身会長「ステージ3に近づくには4条件ある」
出典:内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室
政府は緊急事態宣言によって、感染状況を「爆発的な感染拡大」にあるとされる現在のステージ4から、一つ下のステージ3に抑え込みたいという意向だ。
会見に同席した政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は、今回の飲食業を対策の中心に据えた緊急事態宣言について、「1カ月未満でステージ3に近づけるのはそう簡単ではないが、4条件を満たせば可能」と述べた。
ステージ3に近づくための条件は4つあると思っている。
まずは具体的な、しかも強い効果的な対策を打つこと。
2つ目は国と自治体が一体感を持って明確なメッセージを国民に伝えること。
3番目は、なるべく早く法改正をしていただいて、経済支援などとしっかりひもづける。
そうした上で国民のさらなる協力が得られれば。この4つが重要だと思っている。
たしかに1カ月未満でステージ3に近づけるのはそう簡単ではないが、私はいま申し上げた4つの条件を満たすために日本の社会を構成するみんながしっかり頑張れば、1カ月以内でもステージ3に行くことは可能だと思っている。
(尾身茂会長)
政府は7日にも緊急事態宣言の発出に伴って政令を改正し、各都道府県知事が特措法に基づいて使用制限を「要請」できる対象に飲食店を加える。
ただし、飲食店への限定的な対策では効果は乏しいとする意見も専門家から出ている。
西浦博・京都大教授(理論疫学)は6日までに、昨年春の宣言時に近い厳しい対策を講じても、東京都内の感染者が十分に減るまでに約2カ月を要するとの試算をまとめた。より緩やかな対策では、今年度内に感染が十分減ることはないとした。
1月7日、都のモニタリング会議は「20代から60代において、接触歴等不明者の割合が 60%を超えており、活発な社会活動状況を反映し、感染経路の追跡が困難になりつつある」とコメントしている。
大阪府の吉村知事、緊急事態宣言の発出要請の意向
菅首相は、感染の中心は1都3県であり「この2週間で全国平均の約半分が集中している」と述べ、現時点で他の地域に緊急事態宣言を拡大する意向はないとした。
4日の年頭会見でも、菅首相は北海道・大阪など時短措置をとった都道府県は「結果が出ている」と述べていた。
ただ、首都圏以外でも感染状況は足元では悪化をしている。大阪府の吉村洋文知事は7日、緊急事態宣言の発出を要請する意向を表明した。
尾身会長は「集中的な対策は首都圏だ。どこかの地域でステージ4になれば、そういうこともあり得る。コンスタントに(数値を)評価する」と述べた。
例えば、兵庫などでは大阪から感染が広まっている可能性があるとして、仮に緊急事態宣言を発出する場合は「1つの生活圏」で判断することになるだろうと見解を述べた。
西村康稔・経済再生担当相は7日、緊急事態宣言の再発出に先立って開かれた国会への報告(衆院議院運営委員会)で、今回の緊急事態宣言を解除する目安の一つとして、東京の新規感染者が「1日あたり500人程度まで下がること」を挙げた。
なお、衆参の議院運営委員会のいずれにも出席しなかった。
菅首相の会見の模様
(文・吉川慧)