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宇宙ステーションも完全民営化…2030年までにISSを廃棄して代替施設に移行

アクシアム・スペース

2010年2月19日、NASAのスペースシャトル「エンデバー」から宇宙飛行士が見た国際宇宙ステーション。

NASA

  • NASAは、10年以内に国際宇宙ステーション(ISS)を廃棄しようとしている。
  • NASAとアメリカ議会は、ISSが太平洋に落ちる前に、その代わりになるステーションを軌道上に乗せることを望んでいる。
  • 元NASA幹部によって設立されたスタートアップ、アクシオム・スペースは、全民間の前哨基地「アクステーション」の建設、打ち上げ、組み立てに取り組んでいる。
  • NASAの元宇宙飛行士であり、アクシオム・スペースの事業開発担当バイス・プレジデントでもあるマイケル・ロペス=アレグリアによると、NASAが新しいステーションを利用するための費用は、ISSに毎年支出している35億ドルよりもはるかに少ないという。
  • 「それは経済的にも理にかなっている」とロペス=アレグリアはBusiness Insiderに語り、NASAは浮いた予算を月、火星、そしてその先の深宇宙探査に使うことができるとした。

国際宇宙ステーション(ISS)はサッカー場ほどの大きさの実験施設で、時速2万7000km以上の速さで地球の周りを回転している。この施設にはこれまで20年にわたって継続的に人間が居住してきたが、今、岐路に立たされている。

スペース(SpaceX)が多くの宇宙飛行士をISSに送り込むようになり、彼らは数多くの新しい科学実験を行い、ISSはついに最大限のポテンシャルを発揮できるようになった。一方で、ISSは老朽化が進んでおり、アメリカ議会は2030年までに宇宙飛行士を退去させ、施設を廃棄することを望んでいる。

政権交代によって退陣する予定のNASA長官、ジム・ブライデンスタイン(Jim Bridenstine)は、民間セクターを活用する代替案を提唱してきた。ISSが軌道を外れて太平洋の「宇宙船の墓場」に落ちる前に、民間企業がモジュールの建設、打ち上げ、テストを行って新たな施設を作るのを支援するというアイディアだ。

ワシントン・ポストによると、ブライデンスタイン長官は2020年初頭に上院の公聴会で、もしNASAが地球低軌道の基地から撤退して、その領域を他国に譲り渡せば、「それは悲劇になる」と語った

だが、急成長中の民間航空宇宙会社アクシオム・スペース(Axiom Space)の計画通りにすべてが進めば、そのような未来を回避し、地球低軌道上におけるアメリカの強力かつ継続的な存在感を示すことができる。その上、NASAは、新たな最先端の施設を利用しながら、年間数十億ドルを節約することができるだろう。

ISSの運用と維持のために「NASAはISSの維持管理に年間35億ドル(約3600億円)の予算を投じている。もちろん、共同で管理している4つの機関も支出している」と、アクシオムの事業開発担当バイス・プレジデントでNASAの元宇宙飛行士でもあるマイケル・ロペス=アレグリア(Michael López-Alegría)は、以前Business Insiderに語った。

「彼らはその予算のいくらかを、アルテミス計画あるいは次の政権が決める計画のもと、深宇宙探査に使いたいと考えている」

この35億ドルのうち、NASAが科学技術開発に投じているのは約5億ドル(約520億円)だけだ。

「例えば、ホテルを所有するのではなく、ホテルの一室を借りれば費用は安くなり、その少ないコストでこれまでと同じメリットを受け続けることができる」とロペス=アレグリアは言う。

「それは経済的にも理にかなっていることだ」

ISSは廃棄しなくてはならない

民間企業初となる宇宙ステーション「アクステーション」の完成予想図。

民間初となる宇宙ステーション「アクステーション」の完成予想図。

Axiom Space

ISSの最初の部品であるロシアのモジュール「ザーリャ」は1998年に打ち上げられ、その2年後から、乗組員が施設での継続的な居住を開始した。

NASAはこの施設を軌道上で15年間使用する計画だったが、必要であれば30年は維持できると述べていた。さらに、NASAと他国のパートナーは、その期間をあと2年、つまり2030年までは延ばすことができると考えている。だが、ロペス=アレグリアは最終的にはISSを「廃棄すべきだということは間違いない」と言う。

「自然に朽ちていくに任せるわけにはいかない。もし制御できない状態になった場合、何かに損害を与える可能性が非常に高いからだ。我々は宇宙ステーション『ミール』でその恐怖を味わった。ISSはこれまで運がよかっただけだ」と彼は言う。

「ISSはミールよりもはるかに大きく、廃棄する際に大きな破片が地上にまで到達するかもしれない。慎重に行わなければ、最悪の事態になる可能性もある」

そうなる前に、アクシオム・スペースはNASAと締結した1億4000万ドル(約145億円)の契約に基づき、少なくとも1つは新しいモジュールをISSに取り付けたいと考えている。その後、同社はさらに多くのモジュールを打ち上げることを計画している。

「2024年に最初のモジュールをISSの前部に取り付け、その後、半年間隔でさらに2つのモジュールを取り付ける」とロペス=アレグリアは述べた。彼は民間企業だけで運用する宇宙船の最初の司令官になる準備もしている。「Ax-1」と呼ばれるこのミッションでは、2021年後半にスペースXの宇宙船「クルー・ドラゴン」で3人の有料の乗客をISSまで運ぶことを目指している。そしてその乗客の1人は俳優のトム・クルーズ(Tom Cruise)かもしれない

ロペス=アレグリアは「5年後にはもうISSではなく、アクシオム・モジュールに飛ぶことになるだろう」と語った。

最終的に、アクシオム・スペースによる民間初の宇宙ステーション「アクステーション(AxStation)」にはISSから独立して機能する、独自の電力、水、ロボットアームなどのシステムを備える予定だ。同社は2028年から2030年の間にアクステーションをISSから切り離し、単独で軌道を周回させたいとしている。

「商業的に成功した実績のある後継機があれば、実現できるはずだ」とロペス=アレグリアは言う。「つまり、NASAと他の4つの宇宙機関はこれまでISSでやってきたことを新しいプラットフォームに移行して、ISSを廃棄できるということを意味する」

アクシオム・スペースは、「アクステーション」を2028年までに組み立てることを計画している。

アクシオム・スペースは、「アクステーション」を2028年までに組み立てることを計画している。

Axiom Space

ただし「アクステーション」はISSと同様に多額の投資が必要で、実現が保証されているわけではない。これまで、トランプ政権はこのプロジェクトのために年間1億5000万ドル(約160億円)の予算を要求してきたが、議会に拒否されてきた。そして2020年には要求額から大幅に削減された約1700万ドル(約18億円)が割り当てられた。

しかし、アクシオム・スペースの最高技術責任者であるマット・オンドラー(Matt Ondler)によると、同社は政府からの資金援助に大きく依存しているわけではないという。NASAから受け取る1億4000万ドルの契約金についても、最初のモジュールの設計、建設、打ち上げから「データと教訓」を得るために利用されるとオンドラーはエアロスペース・アメリカに語っている

「アクステーションは、投資家からの出資金や我々のビジネスの収益から資金を得ているため、アクシオム・スペースがすべてを所有し、運営することになる」

[原文:A private astronaut explains how Axiom plans to replace the International Space Station and potentially save NASA billions per year

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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