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河野大臣に聞いた。「過労死ライン」の長時間残業が横行する霞が関、働き方改革は本当に実現できるのか?

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オンラインで取材に応じた河野氏。

撮影:横山耕太郎

霞が関で働く官僚たちの過酷な働き方に注目が集まっている。

内閣人事局が2020年10・11月の残業時間を調査したところ、「20代キャリア官僚の約3割」が、過労死ラインの目安とされる「月80時間」超えて残業していることが明らかになった。

民間の調査では、「月100時間」を超える残業をした官僚が「全体の約4割」にのぼったという調査もあり、霞が関で長時間労働が常態化していることがあらためて問題視されている。

この霞が関の働き方の改革に切り込んでいるのが、2020年9月に行政改革大臣に就任した河野太郎氏だ。

河野氏は2020年11月、「危機に直面する霞ヶ関」という文章をブログに掲載し、若手職員の早期離職が進んでいる実態を指摘。霞が関を「ホワイト化」したいと表明した。

大臣として今後、どう霞が関の働き方改革に取り組んでいくのか?

河野大臣は、緊急事態宣言の発令された1月7日、国会や閣議以外は自らもテレワークを実践すると宣言。その言葉通り、翌8日、赤坂の議員宿舎からBusiness Insider Japanのオンライン取材に応じた。


テレワーク「コロナで時代に追いついた」

—— 大臣がテレワークを実践している例はまだ少ない中で、率先してテレワークに取り組む狙いは?

河野大臣(以下、河野):私が率先することで、部局のみんなにも7割の出勤回避を目標に、遠慮なくテレワークしてほしいと示すためです。

テレワークが可能かどうかは、省庁によって差があります。防衛省や外務省は機密を扱う性質上、別のシステムを使う必要があり、防衛省では端末が人数分なかったので、テレワークにはかなり厳しい状況でした。(※河野氏は2019年9月から2020年9月まで防衛大臣を務めた)

省庁や部署によって、まだ差があるのが現実です。

一方、霞が関で働く人の中にも、子育てや介護を抱えている人が増えています。コロナ下だけでなく、当たり前にテレワークできるようになれば、霞が関にとって大きな改革になると思っています。

—— テレワークを実践してみての感想は?

河野:私は1986年に富士ゼロックスに入社し、1980年代後半、埼玉県でサテライトオフィス実験をした時の現場責任者でした。30年前から、サテライトオフィスで十分勤務できるねと多くの人が言っていました。

ようやくこのコロナでテレワークが進み、時代が追いついてきたかなと正直思っています。

今は議員宿舎のテーブルに2つの端末を置いていますが、大臣室のテーブルとは高さが違うので、腰痛には気をつけたいと思っています。あと、マスクを外せるのは、アトピー性皮膚炎を持っている私としては助かります。

「力技で切り抜けてきた」世代と若手のギャップ

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厚生労働省が入る中央合同庁舎5号館。2021年1月12日午後10時頃に撮影。

撮影:今村拓馬

—— 官僚の離職について危機感を示したブログが注目されました。霞が関の働き方について、現状をどのように感じていますか。

河野:霞が関の働き方改革は待ったなしだと思っています。2020年10・11月の在庁時間調査では、明らかにサービス残業が発生していた。これまでは「サービス残業はない」という建前で人事院なども通してきたが、もはやそんなことが通用する時代ではありません。長時間労働の原因を一つひとつ潰していく必要があると思っています。

まず取り組むべきは、マネジメント。霞が関は管理職の研修をきちんとやってきていない。

それぞれの部局のトップにいるような人たちは、力技で切り抜けてきた世代の人。私ぐらいの年代は大学時代にパソコンがなく、私もアメリカ留学時にはタイプライターで論文を書いていた。パソコンが当たり前の新人とはかなり認識のギャップもあります。力技で“為せば成る”時代ではなく、合理的に技術の力をしっかり利用していく時代になってきている。

マネジメント研修でツールを学んで管理職になるプロセスを経る、部下のマネジメントができているのかを人事評価の柱とする、といった方策も必要だと思います。

—— マネジメント以前に、官僚が抱えている業務が多すぎるという指摘もあります。

河野:在庁時間を管理するツールを各省庁に急いで導入してもらおうと思っています。「出勤簿にハンコ」では、誰がどれぐらい働いているのか見えてこない。そこを「見える化」することで、部下のマネジメントもできてくると思います。

2021年度の予算編成では、国家公務員の増員を行います。増員は昭和54年以来、42年ぶり。減り続けていた人を増やさないと、働き方改革はできないと判断しました。

国会対応のデジタル「立法府の議論を待ちたい」

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夜の霞が関にずらりと並んだタクシー。2021年1月12日に撮影。

撮影:今村拓馬

—— 脱ハンコが話題になりましたが、霞が関では紙の資料が多く、業務の非効化が遅れていると言われます。どのようにデジタル化を進めていきますか?

河野:これまで自民党の部会に提出する資料はすべて紙で、何十ページもある資料を100部コピーしている途中で差し替えがあり、またコピーし直す……ということも多々ありました。それを下村(博文)政調会長の提案で紙資料をやめ、タブレットに切り替えた。国会議員へのレクも、タブレットでできるだけで、コピーという作業がなくなります。

オンライン会議システムも、これまで各省庁ごとに発注してきたため全部で5つぐらいあり、省庁間で異なる。システム面はデジタル庁ができれば、横串を通せるようになると思います。

立法府の理解もいただきながら、デジタル化を進められるところは進めていきたい。平井(卓也)デジタル改革担当大臣の尽力で、国会審議前の質問通告についてはすでに、Zoomを使用できるようになっています。

—— 長時間労働の背景には、国会議員の質問通告が直前すぎることや、野党合同ヒアリングへの対応の負担などが重いといった指摘もあります。質問通告の期限など、国会との関係についてはどう考えますか?

河野:緊急事態宣言もあって、立法府もさまざまな問題意識を持っていると聞いているので、そこは立法府の議論を待ちたいと思っています。

「やりがいある仕事」ができない官僚の現状

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霞が関の働き方改革を求める署名約2万7000件を受け取った時の河野氏。署名はサイボウズ社長の青野慶久氏らが発起人。 2020年12月2日撮影。

撮影:横山耕太郎

—— デジタル化以外に、官僚の業務の効率化させる方策を考えていますか?

河野:不要な業務をやめる必要もあります。例えば、基幹統計以外にさまざまなデータを集める調査も霞が関でやっていますが、回収率が非常に悪いものもある。漫然と続けている調査も、今やる必要があるのか見直す。

大きな話では、財務省と日本銀行がそれぞれ別に行っている金融機関への検査や考査は、受ける側は二度手間になっている。デジタル通貨を含めたフィンテックなど、金融庁が対応すべきものもあり、財務省や日銀などと連携してシェアできるものはシェアしていく。

小さいところでは、(閣議決定などの正式な文書は)青枠の5ミリのところへ文書を印刷しなきゃダメだという決まりのために、定規で測って「ずれているからやり直し」みたいなこともある。そこにどんな付加価値があるのか。立ち止まって考えたらそれ何か意味あるの、という部分をどんどんやめていく。

小さいことから大きなことまで、聖域なく踏み込んでいきたい。

—— 官僚が離職する原因として、多忙さだけでなく、国会対応などで疲弊し、「魅力的な仕事ができない」という理由も多い。やりがいをどう創出しますか?

河野:霞が関は決して給料が高いところではない。それを分かった上で、国のための仕事をしたいという人が来てくれています。

ただ、残念ながら今の若手官僚から話を聞くと、煩雑な業務に忙殺されている。デジタル化でバックオフィスの業務を改善し、官僚が現場に出て、現場の声を吸い上げて、政策に変えていく仕事ができるようにしたい。

民間と行き来できる「回転ドア」 を

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夜の霞が関を歩く官僚ら。2021年1月12日撮影。

撮影:今村拓馬

—— 防衛省が初めて実施した中途採用では、約1500人の応募があり注目されました。デジタル庁も、民間からの人材を含めて募集しているが、民間人材の活用をどう考えていますか?

河野:デジタル庁では、高い給料よりも国のシステムを作る仕事に働きがいを感じる人材が来てくれると思う。霞が関での仕事を勲章にして、民間で戻ったときにレベルアップもできるでしょう。

さらに言えば、霞が関と民間企業の間で人材が行ったり来たりできる「回転ドア」を制度化したい。デジタル人材だけでなく、外交でも民間で国際的なビジネスをやってきた人、国際的な人脈を築いてきた人が入ることで、双方にプラスになる。

—— 多忙を理由にした転職など、霞が関から民間への人材流出も起きています。

河野:スタートアップでも、寝る間も惜しんで仕事をしている会社もある。何とか会社を成功させたいと働いているベンチャーの社員は、霞が関で予算編成している財務省並みに働いていると思う。

民間企業も3年以内の離職率は低くなく、霞が関の人材だけが離職しているわけではない。

ただ、若いうちはバリバリ働いても、子育てや介護という年代になれば、それに応じた働き方ができること。それは官民も一緒だと思います。

霞が関にいい人材が集まらなければ、国の行政は回っていかない。その意味でも人材を集める必要があります。

霞が関で自分の夢を実現する。「回転ドア」を使って民間と行ったり来たりして夢を実現してもいいと思っています。霞が関だけでなく、日本全体でそれぞれが夢を実現できるような働き方改革を実現したいと思っています。

(取材・文、横山耕太郎浜田敬子

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