「5Kの最新VRグラス」から「電子ペーパーメモ」新製品まで…パナソニックが“完全招待制”展示会【CES2021】

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東京・有明のPanasonic Centerでは完全招待制でリアル展示会が開催された。

撮影:コヤマタカヒロ

初のオンライン開催となった世界最大級のテクノロジーショー「CES2021」。長年にわたってCESに出展し続けているパナソニックは、2021年もさまざまな製品やテクノロジーを披露。さらにCES 2021に連動する形で、オンラインイベント「CES 2021 Panasonic in Tokyo」を開催した。

オンラインセミナーに加えて、CES期間中にはパナソニックセンター東京(江東区・有明)で完全招待制の展示会も実施、さまざまな自社イベントを通して、新たなテクノロジーを紹介している。

VRグラスは5K/HDRに進化

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5K/HDR画質を実現した小型軽量なVRグラス。

撮影:コヤマタカヒロ

昨年の「CES2020」で初めて出品されたパナソニック製VRグラスは、解像度と画質がさらにアップ。VRグラスの大手メーカーであるKopinとの共同開発により、5K/HDR表示(2560×2560ドット)に対応した。

残念ながら展示品はモックアップのため、実際の映像を試すことはできなかったが、担当者によると「他のVRグラスのようにドット(画素)が見えることはない」そうだ。

パナソニックのVRグラス

VRグラスを装着者側から。片眼2560ドット四方もの細かさの有機ELパネルを搭載しているとは思えないコンパクトさだ。

撮影:伊藤有

2020年の試作品と比べると装着性がアップしており、安定して使えるようになった。サウンド面では2020年モデルへのフィードバックを元に、内蔵スピーカーにより単体で音も聞ける設計に変更している。

センサー類は、より細かな頭の動きと連動する6DoFに対応。ヘッドマウントではなく眼鏡型を採用している理由については、企業の決裁者や女性層など、普段VRに親しみがない層にも受け入れやすいデザインを重視したという。

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眼鏡型なので装着性が高く、よりフィットするように改善されている。

撮影:コヤマタカヒロ

実際の利用シーンでは、5GスマートフォンとUSB Type-Cケーブルで接続することを想定しているそうだ。今後、商品化を目指して検討を重ねていくとしている。

年間5万人の子どもが誘拐されるインド発の忘れ物防止タグ

パナソニックインドで開発された忘れ物防止タグ「Seekit」は社会課題から生まれた製品だ。

パナソニックインドで新製品開発のリサーチをする中で、同国の人たちが最も困っているのが、1年間に5万人もの子どもが行方不明になる問題だった。

そこで低コスト(インドでは20ドル程度で流通とも)ながら品質の高い「紛失防止タグ」が開発された。担当者よると、開発着手時のインドでは、80ドルを超す高価な製品と信頼性に課題がある製品に二分されていたという。

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Jリーグチームのグッズに採用された「Seekit」。アプリが広がることで、位置情報精度もアップする。

撮影:コヤマタカヒロ

すでにインドをはじめとした海外市場では製品化されており、2019年にはスーツケースメーカーのサムソナイト向けにも供給が始まっている。

そして今回、Jリーグチーム「水戸ホーリーホック」のグッズの1つとしても国内展開が決定した。パナソニックはBtoBでの「Seekit」のさらなる普及を目指していくとしている。

子会社Shiftallは1万9999円の「クラウド対応の電子ペーパーメモ」を発表

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「Croqy」を発表したShiftallの岩佐琢磨CEO。

撮影:コヤマタカヒロ

パナソニックの100%子会社であるShiftallは、CES2021の開催にあたって新しい電子メモデバイス「Croqy」(クロッキー)を発表した。ディスプレイに電子ペーパーを採用し、さまざまな使い方ができるコミュニケーションデバイスだ。2021年1〜3月に発売し、価格は1万9999円を予定している。

Croqyのデモ

Croqyのデモの様子。付属のペンでメモのように書き込む。プロトタイピングでテストするなかで、家族と遠方の祖父・祖母とのコミュニケーション需要があることも見えてきたという。

撮影:伊藤有

基本的な使い方としては、付属のペンで画面にメモを書いて置いておく。ダイニングテーブルなどに置いておけば家族間の連絡メモとして使える。

他の電子メモ端末と異なるのは、スマホアプリやCroqy同士が、クラウド経由でメモの内容を同期できることだ。例えば、会社にいるときにスマホアプリから「帰るのが遅くなるからおやつ食べていいよ」といったメモが送れるのだ。

「Croqy」にWi-Fi機能が搭載されており、最短10分ごとにクラウドに接続してメモを同期できるので、スマホなどを使いこなせない子どもや高齢者でもスムーズにメモを見ることができる。

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アプリも含めた端末間でメモを自由に共有できる。接続台数に制限はない。

撮影:コヤマタカヒロ

また、「Croqy」に書いたメモは、送信ボタンをタップすることでスマホアプリや他の「Croqy」に送ることができる。

記録したメモはすべてクラウド上で管理されており、アプリから過去のメモをさかのぼって確認したり、画像として保存したりすることもできる。

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メモデータはすべてクラウドに管理。アプリでは複数の「Croqy」をタイムラインのように管理できる。

撮影:コヤマタカヒロ

Shiftallの岩佐琢磨CEOは、「CES 2021で発表したのは、海外の反応を見たいという考えもある」と語る。ただし、昨今の情勢を鑑みて、まずは今年度中に日本国内向けに発売したいとしている。

会場ではチョコレートドリンクと厳選したお茶を提供

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ベンチやテントなどがすべてボックス型ユニットで構成されている。

撮影:コヤマタカヒロ

CES 2021会期中、会場の中庭には特設カフェとして「100BANCH BOX SQUARE」が登場する。100BANCHIはパナソニックが次の100年を作るために運営する実験の場。100のプロジェクトを募集し、スタートアップ支援を行なっている。

100BANCHI BOX SQUAREは移動型コミュニティのプロトタイプでトラック型店舗。周りに並んでいるテントや椅子などを全て乗せて移動できる仕組みだ。

カフェとして並ぶのは、パナソニック出身で飲むチョコレートを提案する、ミツバチプロダクツのチョコレートドリンクと、2020年に一般発売がスタートした、Road&LoadのIoTティーポット「Teplo」で淹れたお茶。

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ミツバチプロダクツの製品。独自開発の専用マシンは元Appleのデザイナーの手によるもの。

撮影:コヤマタカヒロ

ミツバチプロダクツが振る舞うチョコレートドリンクは、高温のスチームとブレンダーで素早くチョコレートを乳化させる専用マシンによるもの。独自に開発し、現在、この専用マシンとチョコレートを月額5万円で飲食店向けに提供するサブスクリプションもスタートしている。

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こちらの「Teplo」は度重なる施策とクラウドファンディング、そして量産段階でのコロナ騒動を乗り越えて一般発売を実現した異色の「テクノロジーでお茶をおいしく淹れる」製品。

撮影:コヤマタカヒロ

自分を見つめ直す「瞑想系」参考出展も

コロナ下で「自分を見つめ直す」という意識の高まりを反映してか、瞑想系のサービスや実証の参考出展もあった。

カメラを使ったオーラ分析システム

椅子に座って数秒待つだけで、被写体の体調を分析して、人の「オーラ」を模した色とりどりの宝石のようなオブジェクトを表示する、オーラ可視化システム「aura meditation」も参考出品されている。

顔の輪郭や表情、顔、視線の動きなどをカメラで捉えて、ストレスレベルなどを判定。288通りに分類された「オーラ」から、その人の状態に合致したものを表示する。

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オーラを可視化することにより、客観的に自分を認識できるほか、最適な商品のリコメンドなどもできる。

撮影:コヤマタカヒロ

特別なカメラは使っておらず、パソコンに搭載されているWebカメラで撮影して表示しており、パナソニックが得意とするカメラの画像処理技術の応用例と言うこともできる。今後はこのテクノロジーを、さまざまなカメラを利用するソリューションに展開することを考えているそうだ。

微細なミストと光で瞑想をサポート

除菌や暑さ対策など、さまざまな使い方ができるのが極微細多目的ミスト「シルキーファインミスト」だ。粒径6~10mmの極微細粒子は水だけで生成されていながら、濡れることがなく、安全に空間演出ができる。

「CES 2021 Panasonic in Tokyo」では、何もない空間に光と音とミスト、香りを満たすことで、五感に“ゆらぎ”を与える「(MU)ROOM」(ム・ルーム)を提案。集中力の瞑想と気づきの瞑想という2つのプログラムを用意し、約30分の瞑想体験ができるインスタレーションを用意した。

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「シルキーファインミスト」の活用例として「瞑想」ソリューションを提案。

撮影:コヤマタカヒロ

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瞑想体験には生体データセンシング技術も使われる。心拍・呼吸などの計測をもとに、客観的なスコアとしてフィードバックされる仕組み。

撮影:伊藤有

この「(MU)ROOM」は、ホテルなどを経営する宿泊事業者向けに開発されたソリューションで、2021年2月より、ホテルアンテルーム京都で効果検証を開始。実際に「(MU)ROOM」に宿泊することができる。

瞑想プログラムは早稲田大学人間科学学術院の熊野宏昭教授が監修。利用時の心拍や呼吸を計測して、瞑想状態を専用アプリでスコア化できる仕組みとなっている。

(文、写真・コヤマタカヒロ

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