宇宙への投資は、多くの投資家にとってはるか彼方の出来事のように思える。宇宙に特化した企業は、そのほとんどが未上場ということも理由の一つだろう。
しかしここ数年で宇宙産業は多様化が進み、人工衛星機器・サービスを提供する企業も増えた。さらにスペース・ツーリズムなど、宇宙ビジネス市場は新たな分野にも拡大している。
バンク・オブ・アメリカは、最近発表した調査レポートの中で、宇宙産業の規模は今後10年間で1兆ドル(約100兆円)の成長を遂げるとの予想を示した。同社の株式アナリスト、ロン・エプスタインはレポートの中でこう述べる。
「新型コロナウイルス感染拡大によって一部の公共・民間事業(アリアンスペース、ロケットラボ、ESA)は延期されたが、宇宙事業への投資全般に支障を来すものではない」
宇宙軍予算は1年で385倍
主な成長ドライバーとなり得る要因としては、2019年にアメリカ軍に新設されたアメリカ宇宙軍の歳出が挙げられる。宇宙軍の費用は国防総省が拠出する予定だからだ。
エプスタインは、「アメリカだけでも、国防支出は過去15年間、一貫して増え続けてきた。その恩恵を最も受けているのは上場・未上場を合わせた民間企業だ」と述べる。
2021年度の国防省予算案では、新設された宇宙軍予算として150億ドル超を要求。その額は、2020年度の宇宙軍予算の実に385倍にものぼる。
「宇宙軍の予算は将来さらに増え、上場・未上場の宇宙事業者の契約増加につながるだろう」とエプスタインは予想する。
低コスト化する宇宙産業
商務長官ウィルバー・ロスは、宇宙産業においてアメリカが世界をリードするというビジョンを堅持している。そのため、エプスタインはアメリカの上場・未上場企業は、そのニーズを満たすうえで好位置を占めていると指摘する。
同時に、宇宙技術は利用しやすくなっており、企業の費用低減を後押ししている。エプスタインによれば、「特に第1段ロケット・ブースターが再利用できるようになったことで、宇宙ビジネス全体の費用が下がった」と言う。
宇宙産業の費用低減・再利用可能性を象徴するのは、スペースXだ。
「スペースXの試算が正しければ、第1段ロケット・ブースターの回収とフェアリング(流線形状性能)によって、ファルコン9の打ち上げ1回あたり2000万ドルも節約できる。ロケット1機が耐用期間中に10回飛行すると仮定すると、1億9600万ドルの費用を削減できるということだ」
宇宙産業がはらむリスク
宇宙産業にはリスクもある。例えば、宇宙事業の商業化によって宇宙ゴミが増加している。エプスタインは、この問題がESGを重視する投資家には懸念材料になり得ると言う。
また、収益性と安全面の課題も大きい。宇宙ビジネスのみに特化した企業の多くが未上場である理由は、リスクの大きさと不安定なキャッシュフローだとエプスタインは指摘する。
こうした課題はあるが、多くの上場企業は宇宙ビジネスを継続している。バンク・オブ・アメリカは、程度は異なるものの宇宙産業にさまざまなレベルで関わっている14社を特定。以降ではそのリストを公開する。
宇宙産業との関わりが深い銘柄
1. ボーイング(Boeing Co.)
Markets Insider
2. ノースロップ・グラマン(Northrop Grumman Corp.)
Markets Insider
3. ロッキード・マーチン(Lockheed Martin Corp.)
Markets Insider
宇宙産業との関わりが中程度の銘柄
1. ジェネラル・ダイナミックス(General Dynamics Corp.)
Markets Insider
2. ハリス・コーポレーション(Harris Corp. Registered SHS)
Markets Insider
宇宙産業に多少関わっている銘柄
1. バブコック・アンド・ウィルコックス(The Babcock & Wilcox Co.)
Markets Insider
2. ブーズ・アレン・ハミルトン・ホールディングス(Booz Allen Hamilton Holding Corp.)
Markets Insider
3. ハイコ(Heico Corp.)
Markets Insider
4. ヘクセル(Hexcel Corp.)
Markets Insider
5. マーキュリー・システムズ(Mercury Systems Inc.)
Markets Insider
6. パーソンズ(Parsons Corp.)
Markets Insider
7. レイセオン・テクノロジーズ(Raytheon Technologies Corp.)
Markets Insider
8. SPXコーポレーション(SPX Corp.)
Markets Insider
9. トランスダイム・グループ(TransDigm Group Inc.)
Markets Insider
(翻訳・住本時久、編集・野田翔)