いま転職を考えている人なら、応募するポジションの内容だけではなく、その会社の経営陣や社風について、生の情報を知りたいと思うだろう。
そんなときの頼れる味方がGlassdoor(グラスドア)だ。このサイトにはアメリカのさまざまな企業の社員が匿名で口コミを投稿しており、給与情報、面接のアドバイスが見られるほか、社員の評価をもとに毎年「働きたい会社ランキング」も発表される。
2009年から始まったこのランキングでは、コンサルティング、バイオテック、ファーストフード、航空などさまざまな業界から200社以上の企業がトップ50にランク入りしてきた。このランキングは社員の口コミと、ワークライフバランスや報酬など8つの指標をもとにして作成される。
Glassdoorのランキングの常連はどんな顔ぶれなのかを知るため、Business Insiderが2011年以降にランキング入りした企業すべてを対象に分析したところ、ランキング上位は業界・規模ともにさまざまであることが分かった(※詳しい評価方法は記事末尾に記載)。
Glassdoorのチーフエコノミストであるアンドリュー・チェンバレン(Andrew Chamberlain)によれば、ランキング上位企業の共通点は主に3つあるという。
1つは、「事業の枠を超えたカルチャーや価値観」を持つ、ミッション主導型の企業であること。この価値観があるからこそ、自分は社会貢献のできるミッションの一翼を担っているんだ、利益を生み出す素晴らしい会社に所属しているんだと感じることができるという。残る2つは、キャリアチャンスの豊富さと、強いリーダーの存在だ。
「働きたい企業ランキングのトップ企業には多くの場合、社員と情報共有し、共感し合い、社員を気にかける経営陣がいるものだ」とチェンバレンは言う。
それでは、10年以上にわたるGlassdoorのランキング情報をもとにした「働きたい企業トップ10」を見ていこう。
10. HubSpot(ハブスポット)
業種:営業・マーケティングのソフトウェア
ランクイン実績:過去6年間で5回ランキング入り。トップ4入りが3回、2020年には1位を獲得した。
主な魅力:Glassdoorによれば、キャリアアップとスキルアップの面で優れている。またある社員が2018年に話してくれたように、柔軟な働き方ができるためワークライフバランスがとりやすい。
HubSpotのチーフ・ピープル・オフィサーであるケイティ・バーク(Katie Burke)は以前、「社員には、仕事に生活を合わせるのではなく、生活に合わせて仕事をするよう推奨している」と話している。
チェンバレンによると、この柔軟性こそがコロナ禍においてもHubSpotがうまくいっている理由だという。経営陣が社員の質問に直接答えるセッションを設けることで、この未曽有の事態においても社員の不安を緩和することができているという。
9. H-E-B
David J. Phillip/AP
業種:テキサスを拠点にするチェーン食料品店
ランクイン実績:2014年にランキングに初登場して以来、毎年ランクイン。最新の2021年ランキングでは10位に。
チェンバレンによると、H-E-Bは感染防止策と時給2ドルアップなどのコロナ対応に取り組んだことで、2021年は順位が上昇した。今までの最高順位は2015年の7位で、最低順位は2019年の31位だ。
主な魅力:Glassdoorに投稿された社員の口コミによれば、勤務時間に関しては賛否両論あり、学生にとっては柔軟で働きやすいという人もいる。
コロナ禍以前は、給与や同僚との良好な人間関係についてポジティブな口コミがあったとチェンバレンは話す。
「社員はお互いに同僚を業務におけるパートナーだと感じており、それがH-E-Bへの愛着を生んでいる」と言う。
8. サウスウエスト航空
Mike Stewart/AP
業種:航空会社
ランクイン実績:2010年から毎年ランキング入りしており、2010年は1位、2011年は2位、2019年と2020年は10位。だが直近のランキングでは21位となるなど、トップ10圏外となった年も。
主な魅力:Glassdoorに投稿された社員口コミでは、無料のフライトや旅行特典が長所だという。ダラス・ビジネス・ジャーナルによれば、給料6週間分相当の利益分配制度(業績連動賞与など)についてポジティブな投稿をしている社員もいた。
社員の満足度が高ければその雰囲気が搭乗客にも伝わるため、顧客の高評価にもつながるのだ、とチェンバレンは言う。
7. マッキンゼー・アンド・カンパニー
業種:コンサルティング
ランクイン実績:2011年から順位に変動はあったものの、トップ10には4度ランクインしている。2019年は19位、2020年は24位と下降したが、そこから回復して2021年には5位となった。
マッキンゼーのようなコンサルティング企業は人材で決まるが、いい人材を採用するためには高い社員満足度と魅力的な社風が必要だ。そのため、こうしたコンサルティング企業が年間ランキングのトップになるのは自然なことだとチェンバレンは言う。
主な魅力:多くの応募者の中から内定を勝ち取るのは簡単ではないが、社員の口コミを見るとマッキンゼーで働くことへの情熱が感じられる。Glassdoor上の口コミでは、社員はマッキンゼーで働くことで得られる学びや成長機会をポジティブに捉えているようだ。
6. LinkedIn(リンクトイン)
Rolf Vennenbernd/dpa/Getty Images
業種:キャリア特化型SNS
ランクイン実績:2013年に14位で初登場。翌年は11ランク上昇し、その後毎年ランクインしている。これまでに4度トップ10入りを果たしている。
主な魅力:Glassdoorの社員口コミでは、オフィスで提供される食事や社風が魅力として挙げられている。ワークライフバランス面が欠点だとする口コミもある。
5. In-N-Out Burger(イン・アンド・アウト・バーガー)
AaronP/Bauer-Griffin/GC Images/Getty Images
業種:創業者一族が経営するファーストフードチェーン
ランクイン実績:対象期間中上位にランクインしている。2013年に初めてトップ50にランク入りし、2015年以降は毎年ランクイン。2018年以降はコンサル企業やIT企業に挟まれトップ4に入っている。
主な魅力:この会社が社員からの評価が高いのは「価値主導型」だからだ、とチェンバレンは言う。上場という道を選ばず、高品質の商品を提供するというミッションを追求していることもそのひとつだ。
「会社訪問をすると、実際に社員が笑顔で働き、仕事に満足している様子が伝わってきます」とチェンバレンは言う。
また、社内におけるキャリアアップのしやすさをメリットと感じている社員も一定数いそうだ。ホームページの情報によれば、店長は皆、時間給のアソシエイトから始めて昇進している。Glassdoor上の匿名の社員口コミでは高収入を豪語する者もあるが、業務のスピードが速くてストレスになる、というコメントもある。
4. ボストン・コンサルティング・グループ
業種:コンサルティング会社
ランクイン実績:2011年以降9回ランキングに登場。一番低い順位は2020年の13位、最新の2021年ランキングでは1ランク上昇。最高順位は2017年と2018年の3位。
主な魅力:Glassdoorでの社員口コミでは、会社の健康保険や有給休暇の多さが長所として挙げられているが、長時間勤務を欠点として挙げる社員もいる。
3. Facebook(フェイスブック)
Jeff Chiu/AP
業種:SNS
ランクイン実績:2011年から毎年ランキングに登場しており、一番低かった順位は2020年の23位。2021年は11位と、惜しくもトップ10を逃した。2011年、2013年、2018年の3回、働きたい企業1位となっている。
フェイスブックについては近年ネガティブな報道も見られるものの、ランキングへの大きな影響は見られない、とチェンバレンは言う。
「会社に問題があれば逆にそれを解決しようという気概が生まれる、という社員の声もあります。また、世界をつなげるというフェイスブックのミッションに社員は心から共感しているのです」とチェンバレンは言う。
主な魅力:休暇の多さや4カ月間の有給育児休暇など、福利厚生が長所として挙がっている。他にも、健康やメンタルヘルス関連で対象となる費用を720ドルまで補助する制度や、メンロパーク本社および近辺にアクセスしやすいヘルスセンターなども提供している。
2. Google(グーグル)
TOLGA AKMEN/AFP via Getty Images
業種:インターネット・サービス
ランクイン実績:このランキングが始まって以来、毎年トップ50に登場している2社のうちのひとつがグーグルだ。2011年以降はトップ10に9回ランクインしている。2011年に30位となってから、2015年は1位、2020年は惜しくもトップ10から漏れるなど、ランクは上下している。
主な魅力:Glassdoorの社員の口コミで長所としてよく言及されるのは、食事、健康保険、マッチング拠出などの手当だ。ホームページによると、社員のボランティア活動時間への寄付もするとのことで、慈善事業に興味がある人ならうれしいはず。
人材がすべてだと理解しているグーグルは、素晴らしい社風を築いてきた。それがトップクラスの人材を惹きつけているとチェンバレンは言う。「社員に権限と選択肢を与え、大きな規模でクリエイティブな仕事をしてもらうこと、その社風が成功の秘訣だ」という。
カリフォルニア州マウンテンビューのキャンパスでは、社員が屋外でバレーボールなどのアクティビティを楽しむこともでき、新しく提案されたキャンパスでも同様のサービスが提供される。
1. ベイン・アンド・カンパニー
Rick Friedman/Getty Images
業種:コンサルティング
ランクイン実績:毎年ランキング入りしている3社のうちのひとつであり、常にトップ4に入っている。2011年以降9回、働きたい企業ランキングのトップ2に入っており、2021年のランキングでは1位。
主な魅力:元社員が話すように、コンサルティング企業で働くことは過酷なこともある。しかしベインは、研修やブートキャンプなどを通して社員がコンサルタントとして成功するのに必要なスキルを身につけるのをサポートしている。
Glassdoorの口コミによると、社員は「グローバルリーダーと一緒に注目されるプロジェクトに携わることができる」ことや、優秀な同僚と仕事ができることも良い点だと考えている、チェンバレンは言う。
ベインのチーフ・タレント・オフィサーであるラス・へイギーは、2020年のランキングについてプレスリリースで次のように述べている。
「当社はどこにも負けないカルチャーを築くのに尽力していますし、またそれがうまくいっていることを社員からも確認させてもらっています。当社の社風が、ベインに入社し、ベインでキャリアを積む重要な理由となっています」
評価方法
2011年以降の働きたい企業ランキングにランクインした企業を対象に、11年間を通してどの企業が高く評価されているかを分析した。
過去11年間における本当のベスト企業ランキングを作成するにあたり、新しいランキングの順位ほど重み付けされるよう加重平均した。
Glassdoorは2018年からランキングを「トップ50」から「トップ100社」へと拡大した。そのため、企業によってはトップ51位以下にランクインした年がある可能性もあるが、ここではトップ50までを評価の対象とした。
(翻訳・田原真梨子、編集・野田翔)