2020年の自動車市場は「テスラ(Tesla)躍進」「時価総額世界一」一色だった。2021年、テスラ以上に魅力的な投資先は出てくるのか?バンク・オブ・アメリカの予想を紹介。
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- 米金融大手バンク・オブ・アメリカの最新レポートによれば、自動車関連はこれから数年、株式市場で「勝ち続ける」銘柄になりそうだ。
- ここしばらく、電気自動車(EV)メーカーの評価額が急上昇するケースが相次いでいるが、実はそんななかで、バンカメはレガシー自動車メーカーの株価上昇に注目している。
どこも事情はそう変わらないが、自動車産業にとっても2020年は非常に厳しい年になった。
新型コロナウイルスの感染拡大により、自動車メーカー各社は工場の閉鎖を余儀なくされ、サプライチェーンは寸断された。結果として、アメリカでの自動車販売額は前年比で15%減少した。
下半期(7〜12月)には回復が始まったものの、2021年も急回復というわけにはいかない、というのがバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)の見方だ。同社が1月18日に公表した調査レポートによれば、アメリカの自動車販売台数は2021年、前年の1450万台から2.5%の増加にとどまり、1480万台となる見通し。
それでも、自動車産業はゆっくりとながら2020年より前の販売水準まで回復すると予想され、その意味では、自動車関連株はいまが買い、とバンカメは指摘する。
先述のレポートによれば、「現在の株価はこれから数年続く強気相場の入り口」で、バンカメはカバーしている自動車メーカーの約8割について、投資判断を「バイ(買い)」あるいは「ニュートラル(中立)」としている。
電気自動車(EV)メーカーがにわかに注目を浴び、ここ数年、評価額が急上昇するケースが相次いでいるが、そんななかでバンカメは、レガシーと呼ばれる大手自動車メーカーの上振れに注目する。
2021年、バンカメがテスラ以上の奮闘(?)を期待する自動車関連銘柄は、以下の5社だ。
【推奨銘柄1】フェラーリ(Ferrari)
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【目標株価】307ドル
【推奨理由】フェラーリは世界でも比類のない超高級車メーカーだ。設計・生産ともに超高級車としてのパフォーマンスにこだわり、F1チームおよびその関連ビジネスも展開する。
強靭な財務体質、無形ながら圧倒的なブランドバリュー、紛れもない超高級車としてのステータスを備え、会社自体が象徴としての価値を持つ。
生産規模の拡大、価格の引き上げ、そして(バンカメ予測の対象期間における)新型モデルの投入時期や頻度といった要素を組み合わせた「戦略のバランスの良さ」が、売上高・利益ともに並外れた成長につながっている。
【推奨銘柄2】ゼネラル・モーターズ(GM)
米ゼネラル・モーターズが2016年に市場投入したEV「シボレー・ボルトEV」。2021年には新型「ボルトEV」も出荷される。
General Motors
【目標株価】72ドル
【推奨理由】景気サイクルあるいはマクロ経済面で強いプレッシャーがあるにもかかわらず、先を見据えて優位性のある市場や分野に注力する先をしぼり込み、(その市場や分野の)製品に投資を集中させることで、ゼネラル・モーターズ(GM)はコアビジネスの健全な運営に成功している。
また、現時点ではその真価を認められていないものの、近い将来にビジネス全体の成長につながるとみられる投資、例えば電動化関連(アルティウム[Ultium])、自動運転(クルーズ[Cruise])、モビリティサービス(クルーズ・エニウェア[Cruise Anywhere])なども注目される。
【推奨銘柄3】フォード(Ford)
2021年にフルモデルチェンジしたフォードのピックアップトラック「F-150」。
Ford
【目標株価】12ドル
【推奨理由】投資判断を「バイ(買い)」にしている理由は、フォードの業績が(底打ちして)上昇に転じる変曲点を迎えたとみているからだ。
最重要の北米市場では理想的なペースで新製品をリリースし、「グローバル・リデザイン」を旗印に掲げた構造改革も功を奏しつつある。
景気サイクルあるいはマクロ経済の状況は厳しいが、自助努力による改革は少しずつ投資コミュニティからの信頼を獲得し、また、経営およびコミュニケーションの改善により、改革は時間をかけて加速していくと考えられる。
【推奨銘柄4】マグナ・インターナショナル(Magna International)
傘下のマグナ・シュタイヤー(Magna Steyr)グラーツ工場で塗装を待つジャガーのコンパクトSUV「E-PACE」。生産受託のビジネスモデルも成長要因か。
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【目標株価】105ドル
【推奨理由】マグナは世界でも最高品質を誇る自動車サプライヤーの1つ。確かな特許技術とカスタマーリレーションシップ(顧客との関係)を武器に、他社との統合合併や買収を通じて事業を成長させていくと期待される。
景気サイクルあるいはマクロ経済の状況は厳しいが、マグナが積み上げてきた自動車や部品全般にわたる専門知識とノウハウは、産業構造の変化と技術発展が進んでいくなかで、他の競合に対する圧倒的優位をもたらすとみられる。
【推奨銘柄5】カーマックス(CarMax)
米インディアナ州インディアナポリスのカーマックス(Carmax)店舗。
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【目標株価】121ドル
【推奨理由】カーマックスの投資判断を「バイ(買い)」とする理由は、循環的な(=周期的変化の)視点と、長期的な視点の両方がある。
まず、下取りあるいはリース期間終了で市場に再流入する車の数は、2021年以降に記録的水準に達することが想定されており、中古車の供給量、ひいては市場での取引量も増える可能性が高い。したがって、カーマックスの取扱量も再び増加基調に向かうと考えられる。
また、カーマックスは新規(リアル)出店に力を注ぐと同時に、オンライン販売の規模も着実に拡大しており、それが同社の長期継続的な成長に寄与することが期待される。
[原文:These 5 auto stocks are better bets than Tesla in 2021, according to Bank of America]
(翻訳・編集:川村力)