テスラがけん引する世界的「電気自動車(EV)シフト」。車載電池とその原料であるリチウムの関係企業にも大きな影響を及ぼす。もちろん、株価の動向にも。
REUTERS/Aly Song
- 電気自動車(EV)の需要増を受けて、リチウム関連・電池関連の株価が急上昇している。
- 米運用会社グローバルX(Global X)のアナリストが、この流れに乗るための「いま買うべき4つの電池・リチウム銘柄」を教えてくれた。
電気自動車(EV)産業に、投資家の注目がますます集まっている。規制、環境、テクノロジー、経済、社会……さまざまな形で追い風が吹き、これから数年の大いなる成長を後押しするとみられるからだ。
そうした追い風は少なからず、テスラとその一挙手一投足に注目が集まる(イーロン・マスク)最高経営責任者(CEO)、振れ幅の大きい同社の株価のおかげと言える。
国際エネルギー機関(IEA)によると、EVは世界の自動車販売額のわずか2.6%(2019年)を占めるにすぎない。だからこそ、投資家たちは大きなチャンスがあると考えている。
上場投資信託(ETF)に特化した資産運用を手がけるグローバルXのアナリストで、リチウム産業に詳しいペドロ・パランドラーニはBusiness Insiderの取材にこう語っている。
「EVは確実に浸透してきている。5年前、ウォール街のアナリストたちにEVについて聞いても、ここまで浸透すると100%断言できた人はいないはずだ。移動・輸送の未来が『電動化』にあるとはっきりしたのは、ここ数年のことにすぎない」
ただし、投資家たちが注目しているのは自動車メーカーだけではない。EV産業の成長見通しが立ったことで、自動車メーカーが必要とするリチウムや電池への関心も高まってきている。
現状を最も適切に表現しているのは、グローバルエックスが組成・運用した「リチウム&バッテリーテックETF」が、全ETF商品の99%を上回る126%のリターンをあげたことだ(2020年)。
EVシフトの減速はしばらく想定できないこの状況下で、リチウム・電池分野に眠るチャンスを活かすにはどこに投資したらいいのか、パランドラーニに聞いた。
この「4銘柄」を買うべし
ガンフォン・リチウム(贛鋒鋰業)の株価推移。
Markets Insider
リチウム分野でパランドラーニが推奨する銘柄は、中国の「ガンフォン・リチウム(贛鋒鋰業)」。世界のリチウム供給量の3分の2以上を握る。中国を本拠とすることで、サプライチェーン管理の面で優位に立つ。
「中国に本拠を置くことで、中国の電池メーカーと緊密な協業関係を維持している。EVと車載電池の生産、そのために必要な原料精製、いずれにおいても中国はきわめて重要な存在。そう考えたとき、ガンフォンはEV市場でチャンスをつかむ上で非常に有利なポジションにいる」
リベント(Livent)の株価推移。
Markets Insider
次の推奨銘柄は「リベント(Livent)」。米フィラデルフィアに本拠を置き、リチウム塩水資源の豊富なアルゼンチンで操業している。ガンフォン同様、地の利がある。
「アルゼンチンはリチウムの生産コストカーブを考えたとき最も有利。南米は生産コストがきわめて安いことで知られ、企業にとっては、世界のほかのどのエリアより競争優位性の高い操業が可能になる」
リベントはテスラ向けの水酸化リチウム供給契約を2021年末まで結んでおり、パランドラーニによれば、目下延長が検討されているという。
リベントのリチウム事業に関する紹介動画。電気自動車(EV)や車載電池との関係性もわかりやすく解説されている。
Livent
電池分野では、コスト低減に大きな役割を果たしている「パナソニック(Panasonic)」が買いだ。
「パナソニックは最近、テスラ向けに車載用円筒形電池『4680』の開発に着手している。この新型電池は従来より大容量で、生産プロセスを簡素化できるという、コストを現状よりさらに引き下げる2つの大事な要素を兼ね備えている。なお現在、EV生産にかかるすべてのコストのうち、約29%を電池が占めている」
パナソニックの株価推移。電池・リチウム専業でないため、他の銘柄とは値動きが多少異なる。
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パナソニックは顧客基盤の拡大にも余念がない。
「これまでのところ、アメリカで生産されるテスラ車向けのリチウムイオン電池はすべてパナソニックが供給している。ただし、パナソニックはテスラ以外にも車載電池の販売先を広げようと画策中。2020年、同社は電池工場建設に向けてトヨタ自動車と提携し、2022年には50万台分のリチウムイオン電池を供給する計画だ」
中国・上海で稼働中のテスラ「ギガファクトリー」。寧徳時代新能源科技(CATL)が車載電池のサプライヤー契約を結んでいる。
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そして、パランドラーニが最後に推すのが「寧徳時代新能源科技(CATL)」。パナソニックと同様、テスラと提携関係にあり、コスト低減を図る魅力的なプランを持っている。
「テスラとの提携関係はCATLにとって非常に重要だ。2020年2月、両社は中国・上海のギガファクトリー向けの電池供給について合意。
さらに最近、1キロワットアワー(kWh)あたり100ドルを切る低コストの『ミリオンマイルバッテリー』(=約160万キロ走行できる長寿命の車載電池)を2021年までに市場投入すると発表している。実現すれば、数十年の使用に耐え、ガソリン車の寿命をも上回ることになる」
(翻訳・編集:川村力)