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- ソーシャルメディアでフォロワーを獲得した多くの著名人、記者、メディア企業にとって、ファンと交流するための次の手段はテキストでメッセージを送ることだ。
- コミュニティ(Community)やメールチンプ(Mailchimp)など、新しいベンチャー企業や既存の企業プレイヤーがテキストメッセージ送信の分野に続々と参入している。
- Business Insiderは、テキストマーケティング業界の幹部や顧客に話を聞き、メディア業界がテキストメッセージを大量に使い始めた理由を探った。
2020年4月、TikTokのクリエイターで映画スターのアディソン・レイ・イースターリングは、100万人以上のフォロワーに自分の電話番号をツイートした。
「ハイ! これは、あなたからのメッセージが届いたことをお知らせするための自動メッセージです。リンク先の情報を入力したら、私はあなたと個人的にやりとりができるようになるの。あなたとつながるのが待ちきれない!愛をこめて、アディソン・レイ
イースターリングは彼女に返信してきた人たちにそうメッセージを送り、ファンに、名前、性別、年齢、住所をフォームに記入するようお願いした。
ほとんどのファンがすぐに気づいたように、彼らはイースターリングの個人携帯電話に連絡することができたわけではない。イースターリングは、俳優のアシュトン・カッチャーが支援するテキストマーケティングのベンチャー企業である「コミュニティ(Community)」のサービスを利用していたのだ。
コミュニティは、著名人、ネットのインフルエンサー、そして企業やビアコムCBS(ViacomCBS)のようなメディアが、ファンや顧客に直接テキストメッセージを送ることができるサービスだ。
アシュトン・カッチャーやジェニファー・ロペスなどセレブの利用も多い「コミュニティ」。登録したファンはお気に入りのセレブから個人的なメッセージを受け取る感覚で交流できる点が従来のSNSとは大きく異なる。
Communityのサイトより
コミュニティのプラットフォームは、ユーザーがオーディエンスとつながるためのさまざまな機能を提供している。ファンに一対一のメッセージ(誕生日のお祝いなど)を送ったり、商品、アルバムのリリース、テレビ番組のプロモーションのための大量のテキストを送信することもできる。地理情報、年齢、性別などの情報に基づき特定のフォロワーのグループにメッセージを送ることも可能だ。ファンは送られてきたメッセージに返信することもできる。
コミュニティのプラットフォーム上には、6000人 以上の「コミュニティリーダー」と、彼らのメッセージを受け取りたいと登録した2300 万人のユーザーがいると言われている。
「時間が経つにつれ、誰もが、自分が気になっている人や物とのよりリアルな関係性を望むようになる」と同社の共同創業者兼最高製品責任者、ジョシュ・ローゼンヘックは言う。
「『すごい! 大好きなスポーツチームやブランドや企業と直接個人的なつながりをついに持てるようになった』というように、人々がそれを新しいソーシャルの枠組みとして受け入れ、理解してもらえるようになってほしいと私たちは考えていました」
同社のプラットフォームでは、過去1年間で10億件以上のテキストメッセージがやり取りされた。つまり、2020年にコミュニティが急成長を遂げたのは、決して突然起こったことではない。
ソーシャルメディアでフォロワーを獲得したセレブ、記者、政治家、メディア企業は、顧客やファンにリーチするための新たな手段として、テキストメッセージを使い始めている。彼らはテキストメッセージサービスを利用し、自分たちのコンテンツを宣伝し、消費者に直接製品を販売し、メッセージを返信してくれた人たちから率直な反応を得ているのだ。
そして今、コミュニティ以外にも、サブテキスト(Subtext)、シンプルテキスティング(SimpleTexting、メッセージメディアの一部門)、そして最近チャッティティブ(Chatitive)というテキストマーケティングのベンチャー企業を買収することを発表したメールチンプ(MailChimp)など、この分野で新しいベンチャーや企業が続々と登場している。
消費者はセレブと直接つながりたい
自分の商品サイトの服でポーズするアディソン・レイ・イースターリング。
Fanjoy
メディアでのプロモーションツールとしてのテキストメッセージサービスは、人々が有名人やメディアとより直接的な交流を期待するようになったことでさらに広がりを見せている。
カメオ(Cameo)、ペアポップ(PearPop)、サブスタック(Substack)、オンリーファンズ(OnlyFans)といった企業は、著名人、インターネットスター、メディア企業がユーザーとより親密につながることを(収入を得ることも)可能にしている。
テキストメッセージのやり取りは、かつては内輪の人たちのためのものだったが、今やブランドやセレブがフォロワーと気軽に交流するための手段となっている。
「テキストメッセージというのは、今までよりずっと親密なものであり、友人や家族とのコミュニケーションの方法なのです」とサブテキスト創業者兼CEOであるマイク・ドナウエは語る。サブテキストは、インク・マガジン、USAトゥデイ、バズフィードやスタジオ71などのメディア企業が利用しているテキストマーケティングのプラットフォームだ。
インク・マガジンの記者でコラムニストでもあるキャメロン・アルバート・ダイッチは、このサブテキストを使い、購読者に毎日自分の記事の中から「最も興味深い価値ある小さな情報」を送っている。ダイッチの情報を購読するには月額3.95ドルかかるが、ダイッチは読者からの返信も積極的に受け付けている。
「これは、サブスタックの小さなミニテキストメッセージ版に似ています」と、ダイッチは購読型ニュースレターのプラットフォームとの類似点を指摘する。「購読モデルの種類もほとんど同じで、記者との毎日の交流を提供しているのです」
テキストメッセージは、フォロワーに商品を宣伝したいと考えている著名人やメディアにとっても、効果的な販売促進手段になりつつある。
ベンチャー企業のファンジョイが運営するイースターリングの商品サイトでは、10%割引を受けるため、ユーザーはメールではなく電話番号を入力する。これで、オンラインストアサービスのShopify上でポストスクリプト(Postscript)社が提供する「顧客用の自動テキストメッセージ(カートのリマインダーなど)」を受け取ることに同意したことになる。
2000年に設立され、世界中で6万5000社以上の企業と提携しているメッセージ送信ソフト会社、メッセージメディアのCEOであるポール・ペレットは、「忘れられているカートに関してテキストメッセージを送ることの投資効果は信じられないほど大きい。これは、Shopifyで最も急速に成長しているテキストメッセージの使い方の一つです」と言う。
テキストメッセージ業界も悪質コンテンツと戦う時が来る?
ツイッターやフェイスブックなどがフェイクニュースの拡散を止めなかったと批判されたように、テキストメッセージ業界も悪質なコンテンツと戦う時が来るかもしれない。
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コミュニティやサブテキストのようなプラットフォームの初期の使用例は、有名人が商品の宣伝をしたり、ジャーナリストが取材の舞台裏を共有したりと比較的良心的なものだが、これらの大量テキスト送信アプリがいずれ、ソーシャルメディア・プラットフォームを悩ませてきたのと同じようなコンテンツモデレーションの課題に直面する可能性があることは容易に想像できる。
これまでのところ、テキストマーケティングのベンチャー企業は、ツイッターやフェイスブックがフェイクニュースなどの拡散を食い止められなかったことで受けたような批判をほとんど受けてこなかった。しかし、この分野が著名人やメディアの間で人気を集め続ければ、悪質な行為を行う者も今後出てくる可能性がある。
WhatsAppやテレグラム(Telegram)のようなメッセージアプリは、過去に誤報をチェックするのに苦労してきた(テレグラムには、ユーザーがアプリ上のグループにメッセージを流すことができる一対多の機能がある)。
また、カメオやサブスタックのように、消費者との双方向コミュニケーションを収益化することでビジネスを構築してきた企業も、最近ではコンテンツのモデレーション問題に直面している。
若者向けデジタルメディアのバイス(Vice)によると、カメオは、ワシントンで起きたアメリカ連邦議会での暴動を非難していたのと同じ頃、オルタナ右翼団体のプラウドボーイズの共同創立者ギャビン・マッキンズに自社のプラットフォームを使わせていた(マッキンズのアカウントはその後停止された)。
また、サブスタックは、事実確認に関する但し書きを付けずに自社のプラットフォーム上で選挙詐欺に関するニュースレターを掲載し続けていたと批判を浴びている。
「誰がプラットフォームに載っていて誰が載っていないかを決めるという点において、今までそれらのことに対処しなければならない状況に遭遇していませんでした」とサブテキストのドナウエは言う。
アドバンスローカル(Advance Local)社が所有するサブテキストは、ユーザー規約で「暴力を扇動する活動」や「犯罪行為を構成する活動」を促進することを禁止している。
コミュニティ社も同様のポリシーを持っており、メッセージ内の「暴力の擁護、促進、またはその他の奨励」を禁止している。
テキストマーケティングの未来は「双方向のおしゃべり」
テキストマーケティングは新しいものではない。しかし、メッセージメディアのペレットによると、ブランドと顧客の間で双方向のメッセージのやり取りが広がっているのは新しいトレンドだという。
「ここ1、2年の間に、特にアメリカでは、テキストメッセージどう受け止められるか、どう使うか、どう導入するかという点で革命が起きています」とペレットは言う。「ビジネスメッセージや、企業が顧客とつながるためのテキストの利用が急増していますが、顧客が企業とつながるためのテキストの利用は、本当に新しくて重要なトレンドなのです」
このような双方向のコミュニケーションは、視聴者からのフィードバックを聞きたいと考えるメディア企業にとって、特に有益なものだ。
ビアコムCBSの一部門であるオーサムテレビ(AwesomenessTV)は2020年11月、YouTubeのリアリティ番組「オーサムテレビ、次のインフルエンサー(AwesomenessTV's Next Influencer)」の公開プロモーションのために、テキストマーケティングを行った。同社は番組のためにコミュニティ上で電話番号を設定し、各エピソードについてファンからテキストメッセージの受付を始めたのだ。
「視聴者はまるで僕らが友人であるかのように、過去のエピソードで起こった劇的な瞬間について話してきました」とオーサムテレビのマーケティングとソーシャル戦略ディレクターであるニコール・ポーターは言う。
「この経験を通じ、彼らが私たちに何を求めているのか、何をもっと見たいのかをリアルタイムで知ることができました」とポーターは言う。「おかげで、私たちのチームは、視聴者との会話においてもリアルタイムのやりとりに軸足を移すことができたのです」
(翻訳、編集:大門小百合)