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- スイスでは、ロックダウンする権限を政府から剥奪するかどうかを問う国民投票を行うことになった。
- フィナンシャル・タイムズによると、スイスでは個人の権利についての議論が活発化しているという。
- スイス政府は1月13日、新型コロナウイルス感染率の上昇に関連していると見られる感染力の強い変異種を懸念して、既存の措置を強化することを発表した。
スイスでは、個人の権利についての議論が活発化しており、政府からロックダウンする権限を剥奪するかどうかを問う国民投票が実施されることになった。
フィナンシャル・タイムズによると、市民団体「フレンズ・オブ・ザ・コンスティテューション(憲法の友)」が、2020年に施行された「コロナ対策法(COVID-19 Act)」の是非を問う国民投票を求めて8万6000人から署名を集め、1月13日に提出したことがきっかけになったという。
国民投票が行われるのは早くても6月以降だが、これはコロナ対策法が人権に与える影響について全国で議論が高まった結果だと、フィナンシャル・タイムズは報じている。スイス連邦は世界で最も古い民主主義国家の1つであり、個人の自由を重視する。連邦憲法では「国民の自由と権利」を守ることを謳っている。
ヨーロッパの多くの国々では、新型コロナウイルスのパンデミックの際には、厳重なロックダウンを実施したが、スイス政府はそれを行わず、代わりに個人の責任の重要性を強調してきた。しかし、ロイター通信によると、新型コロナウイルス感染率の上昇に関連していると見られる感染力の強い変異種に対する懸念から、スイス政府は既存の措置の強化することになった。必要不可欠ではない業種の店舗は営業停止、労働者は自宅待機を命じられ、個人的な集まりは最大5人までに制限されている。
「フレンズ・オブ・ザ・コンスティテューション」の理事会メンバーであるクリストフ・プルーガー(Christoph Pfluger)はフィナンシャル・タイムズに、政府は「パンデミックに乗じて、コントロールできることを増やし、民主主義を損なおうとしている」と語った。
スイスの直接民主制では、100日以内に5万人以上の署名を集めれば、国民投票を通して議会が提案した法律を否決することができる。同国では、ベーシックインカム、同性婚、オオカミ狩りなどについて多くの国民投票が行われている。
2020年3月、スイスでは新型コロナウイルスの感染拡大を防くために、同年5月に予定されていた国民投票を中止し、他の国民投票に向けた活動も一時中断する措置が取られた。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)