マイナビがアルバイト紹介サービス事業を開始。中長期のアルバイトで求職者ごとに職を提案するのは、大手では例がないという。
撮影:今村拓馬
マイナビは2020年12月中旬から、アルバイト・パートの求職者に対し、一人ひとりに合った職場を紹介する新サービスを始めた。
従来のアルバイト紹介事業「マイナビバイト」は、掲載された求人から、求職者が自分で企業に応募するサービスだった。新サービスでは、選任のコーディネーターが、経験やスキル・希望する職場条件などを電話やオンラインでヒアリングし、それぞれの求職者に合った職をきめ細かに紹介する。
新サービスの背景にあるのは、アルバイトの職探しが困難になっていることがある。
マイナビの担当者は「新型コロナの影響で、アルバイトで働きたくても働けない人も増えている。一方で旺盛に募集している職種もあり、マッチングの必要性が高まっている」としている。
コロナでアルバイト探し苦境
アルバイトの求職者は増えているものの、求人が減っている状況が続いている。
出典:マイナビ・2020年11月度労働市場レポート
新型コロナウイルスの影響で、アルバイトを取り巻く環境は悪化している。
「マイナビ・2020年11月度労働市場レポート」によると、2020年11月のパートタイム求人数は81万8000件で、前年比25万6197件減と大幅に減った。
一方で、パートタイム求職者数は72万7000人で、前年同期比で10万1909人も増加している(いずれも季節調節値)。
業界によっても、影響の違いの差が大きく出ている。
積極的にアルバイトを採用する業種と、採用を減らしている業種が見られる。
出典:マイナビ・アルバイト採用活動に関する企業調査
マイナビが2020年1月に発表した「アルバイト採用活動に関する企業調査」によると、2020年に「採用を増やした」と回答した企業が多かった業種では、「警備・交通誘導」や「販売・接客(スーパー・コンビニ)」、「清掃」、「保育」などだった。
一方で、採用を減らしたと答えた企業が多かった業種は、「接客(ホテル・旅館)」や「販売・接客(パチンコ・カラオケ)」、「ホールキッチン・調理補助」などだった。
紹介が成立すると1件7万円
マイナビのHPを編集部キャプチャ
「コロナ前までは、アルバイト・パートでも求職者が有利な『売り手市場』が続き、求職者側にとっては職場のバリエーションがある状況が続いてきた。
それがコロナの影響で、企業側がより採用に慎重になったことで、採用側と求職者側のニーズのマッチングが求められるようになっている」
新サービスのアルバイト紹介事業の責任者を務める、アルバイト情報事業本部新規事業準備課長の佐々木駿氏はそう話す。
求職者のヒアリングを行うコーディネーターはマイナビの社員が担当。求職者の経験や勤務条件に合った求人を紹介するだけでなく、面接の日程調整などもマイナビが行う。
従来の「マイナビアルバイト」事業では、掲載料を企業が支払うビジネスモデルだったが、今回のアルバイト紹介サービスでは、企業に人材を紹介できると1件につき7万円を企業がマイナビに支払う仕組みという(2020年3月末までは、1件につき5万円)。紹介の目標数などは公開していない。
2021年1月8日には、東京など 11都道府県で2回目の緊急事態宣言が出されるなど、アルバイトを取り巻く状況は厳しさを増していることもあり、アルバイト紹介サービスへの登録者は増えているという。
「介護やコンビニなどでの販売、清掃や警備などエッセンシャルワーカーは、採用意欲が旺盛な状況が続いている。一方で『アルバイトをしているのに応募しても採用されない』、『十分にシフトに入れない』という声も少なくない。
特にアルバイトの経験が少ない求職者は、飲食や販売を希望しがちだ。しかしヒアリングをしている中で、例えばニーズが高い介護職に興味を持つ人もいる。こうした人材をマッチングできれば雇用創出につながると考えている」(佐々木氏)
(文・横山耕太郎)