もはや世界的な流行。CES2021でも「サステナブルと再生エネルギー」がの注目トレンド

CES2021のイノベーションアワード

CES2021のイノベーションアワード商品のうち、サステナビリティー部門の受賞商品。このジャンルには従来から一定の注力をしていたが、出展数が半減した2021年でも注目ジャンルであったのは確かだ。

撮影:伊藤有

新年にラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー展示会「CES」。コロナの影響で完全オンライン開催にシフトした。

CESを運営するCTA(Consumer Technology Association:全米民生技術協会)は従来から、会場設営機材のリサイクルやエコ化に一定の力を入れてきた。

Sustainability

出典:CES 2021

数年前から筆者が注目するカテゴリーにSustainability(持続可能性)がある。関連するスタートアップをピックアップしたり、Climate change(気候変動)に注目したり、省エネやエコ、再生エネルギー関連の出展を増やしている。

そうしたテーマに対し、2021年のCESではまず大企業が動きを見せた。

ゼロエミッション(排出物削減)に向けたEV化が加速

大きな動きを見せたのがGM(ゼネラルモーターズ)だ。

本格的なEV(電気自動車)の導入を発表しているGMは、「GM Exhibit Zero」をテーマに掲げたCES専用のサイトを公開し、会長兼CEOのMary Barra(メアリー・バーラ)は基調講演で、「zero crashes, zero emissions and zero congestion(無事故、ゼロエミッション、渋滞ゼロ)」の実現に向けた変革戦略を発表した。

GM Exhibit ZERO

出典:GM Exhibit ZERO

2025年末までに30種類の発売を予定しているEVから、最初の2台(シボレー・ボルトEUV、キャデラックCELESTIQ)をプレビューし、その基盤となるGMが新開発した「アルティウム」バッテリーシステムの安全性やリサイクル性を紹介した。

GMは、EV専用工場の「Factory ZERO」を開設し、企業ロゴデザインも一新するなど、業界のEV化に向けてサステナブルな取り組みでもリーダーシップを発揮することを強調した。

また、100%再生可能エネルギーを動力源とするEVによる自動運転車の開発を目指す子会社のCruiseは、サンフランシスコでドライバーレスの公道実証実験を行っており、ウォルマートと連携した非接触・非対面の配送サービスでの活用も進めている。

出展数「激減」のなかでサステナビリティ系出展は健闘

リアルではなくオンライン開催となった影響で、CES2021では出展数が2020年の4400から2000以下と激減した。

一方で、いつもの米国市場よりグローバル市場からの注目が期待されたのか、出展社をサステナビリティー(Sustainability)で検索すると200以上がヒットする。

リアル開催だった2020年までは、CES会場の「スタートアップ村」Eureka Park (エウレカパーク)は注目の存在だった。2018年から開催されている、同エリアを対象とする「Eureka Park Climate Change Innovator Awards」も目玉の1つだが、CES2021ではキャンセルされた。これを受け、サステナビリティーの出展数はもっと減るのではないかと思ったが、実際には、オーディオ機器やゲーム、ホームエンターテイメントといったジャンルより数は多い。

全出展者の中から選りすぐりのテクノロジーを選出する「イノベーションアワード」では、28あるカテゴリの一つに「Sustainability, Eco-Design & Smart Energy 」があり、22製品が受賞している。

そのうち気になる4製品を紹介しよう。

1. 小型太陽電池を使って水を99.99%をろ過するポータブルシンク「GoSun」

GoSun Flow

出典:GoSun

小型太陽電池パネルを使って水を99.99%をろ過できるコンパクトな手洗い用シンク「GoSun Flow」は、アウトドア用調理器などを販売する米国のGoSunが開発した。

手洗いはコロナ対策でマスクの着用とあわせて必要とされ、どこでも清潔な水が使えることからクラウドファンディングのIndiegogoで5000万円近く調達して商品化された。CESで注目を集めれば、発展途上国などで購入が進むかもしれない。

2. ペーパータイプの生体酵素燃料電池(BeFC)

2.ペーパータイプの生体酵素燃料電池

出典:BeFC

フランスのBeFCが開発するBioenzymatic Fuel Cellsは環境に優しいペーパータイプの生体酵素燃料電池だ。空気中の糖と酵素を結合する生体触媒作用でエネルギーを生成するという。

金属やプラスチックを一切使用しないため、有害なボタン電池の代わりになるとする。また、薄いため折り曲げることができ、汗や水道水など少量の液体で発電するので、ウェアラブルデバイスなどをさらに小型化できる可能性もある。

3. 有機物でできた太陽電池「Layer」

Layer

出典:Dracula Technologies

屋内で使用するIoTやRFID機器の電源として使える有機物でできた太陽電池(OPV)の「LAYER」(DRACULA TECHNOLOGIES)も受賞。室内の照明でも蓄電できるAmbient Photonicsの太陽電池が受賞している。

4. 三密を避ける移動手段としてEVスクーターの人気高まる(Segway-Ninebot)

倒れないスクーターとしても注目されている「eScooter T」

倒れないスクーターとしても注目されている「eScooter T」。

出展:Segway-Ninebot

本来なら「Vehicle Intelligence & Transportation」に入りそうなEVスクーターなどのスマートモビリティもこのカテゴリに入っている。世界各地でシェアサービスの参入競争が激化しているが、三密を避けられる都市部の移動手段としては今後も需要が高まると見られている。

小型スクーター「eMoped B」

小型スクーター「eMoped B」。

出典:Segway-Ninebot

日本でも知られるセグウェイを販売しているSegway-Ninebotは、最新のEVスクーターは、倒れないスクーターとしても注目されている「eScooter T」や、さらに小型化されて街乗りがしやすい「eMoped B」(上の写真)などで複数受賞している。

「eMoped B」は、サステナブルを追求した製品とうたっている。オートクルーズモードで省エネ走行も可能だ。

「サステナブルx食」フードテックの潮流

CES2020のインポッシブル・フーズの出展。

CESのフードテックの出展は近年の流行の1つ。前年、CES2020でのインポッシブル・フーズの出展。現地ラスベガスでは、代替豚肉「Impossible Pork」の試食が話題になった。

撮影:伊藤有

サステナブルやエコのキーワードではデジタルとは直接関係無いような「食」関連の出展、いわゆるフードテック分野も増えている。

植物由来の代替肉(大豆ミートなど)や代替乳製品を製造・開発するインポッシブルフーズ(Impossibie Foods)は前年のCES2020に出展して大きな注目を集めた。今年は残念ながら出展していないが、現在はミルクの開発に着手していることをCESのサイトで発表している。

impossible

ミルクの開発を発表するインポッシブルフーズのプレスリリース。

出典:CES2021

CES2021のフードテック関連では、宇宙飛行士の健康を保つスーパーフードを開発するMission: Space Food社が、必要な栄養素を少量で美味しく食べられるチョコレートのような「ASTREAS」を出展している。

インポッシブルフーズと同じようにさまざまな食品を開発中で、ミシュランで星を持つシェフも協力している。

Mission: Space Food

出典:Mission: Space Food

また、AIを使って食事の質を調べる「食品スキャナー」を開発する韓国のNUVI labのように、食事の質や栄養素をチェックする技術や、ニューノーマル時代に欠かせないフードデリバリーやフードロスを解消するソリューションも出展されていた。

オランダの「Heat Box」は電気スチームで食事が温められる弁当箱で、充電式で何度でも繰り返し使うことができる。日本で同様の商品を企画すると、おそらく食べものが傷みやすくなるという理由で採用されないだろうが、クラウドファンディングでは1900万円近い資金を調達し、発売されている。

Heat Box

出典:Heatbox

こうして見るとサステナブルの領域は幅広く、ここで紹介した以外にもスマートシティやスマートホームでも関連する製品はいろいろ出展されている。中には今までにありそうなものもあるがグローバルで見ると目新しく、そうした製品を広く発表できるというCESならではの機会は、オンラインでも発揮できたと言えそうだ。

サステナブルな運営を目指すCESが、今回のオンラインでの経験と世界の変化を2022年に開催されるであろうリアルイベントに反映できるのか、注目したいところである。

(文・野々下裕子

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