マグナ・インターナショナルとLG電子が合弁会社を設立する。
Magna International
- カナダの自動車部品大手マグナ・インターナショナルと韓国のLG電子が電気自動車(EV)向けパワートレインの開発を目的とする合弁会社を設立した。
- 自動車産業のEVシフトが鮮明になり、マグナの存在感は増している。一方、LG電子も米ゼネラル・モーターズ(GM)と共同で、EV向け電池工場の設立を準備している。
- マグナのスワミー・コタギリ最高経営責任者(CEO)はBusiness Insiderの取材に応じ、「この展開は長らく待ち望んでいたものだ」と語った。
マグナ・インターナショナルの自動車産業における存在感は急速に増しつつある。
カナダに本拠を置く同社の時価総額は230億ドル(約2兆4000億円)と、すでに十分な巨大企業だ。設立は1957年、自動車部品サプライヤー大手の一角として知られる。
傘下のマグナ・シュタイヤー(Magna Steyr)は、オーストリア・グラーツで世界最大の委託製造工場を運営。独BMWやジャガー・ランドローバーなどの自動車メーカーから組み立てを請け負う。
ごく最近、マグナは2020年末、韓国LG電子と全電動パワートレイン(モーター・チャージャー・バッテリーから電力を取り出す技術など)を共同開発することで合意したと明らかにした。
新たに設立される合弁会社は「LGマグナ・イーパワートレイン(e-Powertrain)」。2021年半ばまでに政府規制当局およびLG電子株主からの承認を得る予定で、従業員は1000人規模となる。
Business Insiderの取材に答えたマグナのスワミー・コタギリCEOはこう説明する。
「この展開は長らく待ち望んでいたものだ。LG電子とはさまざまな方法で互恵的な関係を築いていけると確信している」
LG電子は、年間売上高1500億ドル(約15兆7000億円)を誇る韓国の巨大コングロマリット・LGグループの一角。合弁会社イーパワートレインの評価額は10億ドル(約1000億円)で、LG側が51%、マグナ側が49%を出資する。
アメリカとヨーロッパで電動パワートレイン生産
マグナ・インターナショナルのスワミー・コタギリCEO。
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コタギリは1月1日にCEOに就任したばかりで、以前の(別媒体から受けた)インタビューによれば、2025年までにグローバル自動車市場の4分の1を電動車が占めるようになるとみているようだ(現在は年間販売台数の約2%にすぎない)。
マグナにとって、LGグループとの提携は、拡大するEV市場で大きなシェアを確保するための(多様な提携)戦略の一環だ。
相手方のLGグループのほうも、傘下のLG化学を通じて米ゼネラル・モーターズ(GM)とオハイオ州に車載電池工場を建設している。投資額は両社計で23億ドル(約2400億円)。
マグナも、しばしばテスラのイーロン・マスクCEOのライバルと目される連続起業家、ヘンリク・フィスカー率いるフィスカーと提携。2022年末までに、オーストリアの子会社マグナ・シュタイアの組み立てラインで、フィスカーの新型EV「オーシャン(Ocean)SUV」の委託生産に着手する。
内燃機関から電動パワートレインへのシフトが急がれるなか、LG電子は今回合弁会社を設立することで、マグナがこれまでやってきたのとほぼ同じように、自動車メーカーからの生産委託を受けられるようになる。
「マグナはすでに各自動車メーカーにとって大きな存在になっている」(コタギリCEO)
マグナとLG電子による合弁会社は、EV生産をめぐるバリューチェーンと関連技術を統合することで、世界で最も大きく最も競争の激しいアメリカとヨーロッパの二大市場(の顧客である自動車メーカー)にシステムを提供しやすくなる。
コタギリによれば、決定的に重要なのは、この合弁会社が「スケーラブル」という点だ。市場の拡大に応じて増える需要に柔軟に対応できるよう考えられており、自動車メーカーがゼロから技術開発を行うことなく電動化を実現する手段を提供できる。
LG電子でEVコンポーネント・ソリューション・カンパニー長を務めるキム・ジンヨンは、マグナとの合弁が合意に至った際、次のようなコメントを発表している。
「自動車(委託)製造会社が、競争の激しいEV市場で先頭に立ち続けるには、破壊的な技術革新が求められる」
マグナとLG電子の合弁会社は、すでに触れた規制当局や株主の承認手続きを経て、2021年内には動き出す見通しだ。
(翻訳・編集:川村力)