会見はオンラインで開かれた。右は、ZホールディングスESG推進室室長の西田修一氏。
出典:Zホールディングス
1月19日、Zホールディングスのヤフーは、2023年度末までを目処に自社で消費する電力をすべて再生可能エネルギー由来のものに切り替えることを発表した。
また、Zホールディングスとしても、2021年度中に中長期の環境目標を発表し、早期に自然エネルギー100%を推進する国際イニシアティブであるRE100に加入を目指すとしてる。
日本では、菅首相の所信表明演説で「2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」と宣言されて以降、再生可能エネルギーなどに対する注目度や企業の取り組みが加速している。
中には2040年や2050年という、少し先の未来での達成を目標にしている企業もあるが、ヤフーはこの課題を直近の問題としてとらえ、2023年度末までという短期的な課題として再生可能エネルギーの導入に取り組む。
ヤフーがこの取り組みに踏み切った背景には、いくつかの要因が重なっている。
ヤフー執行役員、ZホールディングスESG推進室室長の西田修一氏は、「気候変動リスクに対する対応や事業の安定性の確保、Zホールディングスの大部分を占めるヤフーが実行に移すことで、グループとしてこの問題に取り組むことを示す意図がある」とした上で、特に海外の投資家、株主などの間で、ESGに対する取り組みを気にする傾向が強くなってきていることも背景にあるとした。
電力の95%はデータセンターで消費
Zホールディングス内における電力消費量の割合。ヤフーが全電力量の75%を消費している。ヤフーの電力源だけを再生可能エネルギーにするだけでも、グループ全体としての再生可能エネルギーの導入率が高くなる。
出典:Zホールディングス
Zホールディングスの2019年度の消費電力量は約2.71億kWh。
このうちヤフーが消費している割合は約75%にあたる約2億kWhだ。これを、2023年度末を目処に、すべて再生可能エネルギーで発電された電力に切り替えていく方針だ。
ヤフーによると、この消費電力量約2億kWhのうち95%はデータセンターで消費された分にあたる。福岡県北九州市や、福島県白河市にあるヤフーのデータセンターなどももちろん今回の取り組み対象だ。
データセンターにおける電力の切り替えは、基本的にデータセンターが設置されている各地域における再生可能エネルギーを取り扱う電気事業者と連携して進めていくとしている。
ただし中には、テナントを借りてそこにデータセンターを設置しているケースもある。こういったケースでは、ヤフーは電気事業者を自社の都合で切り替えることはできない。
そのため、こういったデータセンターや同じようにテナントを借りて使用しているオフィスにおける電力分については、「グリーン電力証書」(※)の購入によってカバーするとしている。
※グリーン電力証書:再生可能エネルギーで発電したときに生じる環境に対する価値を購入できる制度。環境に対する価値を価格に対応させ販売することで、実際に再生可能エネルギー由来の電力を使っていなくても、証書の購入によってその分の再生可能エネルギーを利用しているとみなすことができる。
また、ヤフーがアメリカに保有しているデータセンターについては、すでに再生可能エネルギーに対応している。
Zホールディングス広報によると、再生可能エネルギー由来の電力源へと実際に切り替える時期や、どういった再生可能エネルギーを取り扱う電気事業者と連携していくことになるのかなど、導入に向けた詳細はまだ決まっていない。
なお、電源切り替えにおける課題として、未だ国内では高コストとされる再生可能エネルギーの価格に対する懸念はあるとしながらも、電力の安定性などの質的に不安や懸念はないと説明。コストについても、今後、再生可能エネルギーが広く普及していく中で、低下してくと想定している。
(文・三ツ村崇志)