アメリカの老舗雑誌ニューヨーカー(The New Yorker)の従業員組合が、社内の年収格差是正に取り組んでいる。
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- 米誌ニューヨーカーの従業員組合が、大きな給与格差の存在を明らかにする社内調査の結果を発表した。
- 調査結果は、全社的に不当な低賃金労働がまかり通り、とりわけ有色人種の女性が給与上冷遇されていると結論している。
- また、20年勤続のプルーフリーダー(校閲担当)の年収が5万7000ドル(約600万円)など、一部の社員が「ロイヤルティ・ペナルティ」をこうむっていることも指摘されている。
サリンジャーやカポーティら世界を代表する作家を生み出してきたアメリカの老舗雑誌『ニューヨーカー』の編集部門の従業員組合は1月19日(現地時間)、社内に大きな給与格差が存在することを明らかにする調査結果を公表した。
同調査結果によると、給与格差は人種、性別、部署、勤務形態など多岐にわたる理由を背景に行われているが、「性別による格差、とりわけ有色人種の女性が受けている不利は大きい」という。
「男性と女性の平均年収の差額は4000ドル(約42万円)。有色人種の従業員については、男女の平均年収差は7000ドル(約74万円)ほどまで広がる」
「有色人種の女性の平均年収は白人女性より低く、しかもその額面は、会社全体の平均年収を下回る他の従業員よりさらに低い」
なお、ニューヨーカーの平均年収は6万4000ドル(約670万円)で、ニューヨーク市内のメディア従事者の平均年収6万7271ドル(約700万円)を5%以上下回る(※マサチューセッツ工科大学「生活賃金カルキュレーター」による試算に基づく)。
また、従業員組合による調査結果は、勤続期間が長くなると(従業員の実績にかかわらず)昇給が鈍化する問題、いわゆる「ロイヤルティ・ペナルティ(忠誠による不利益)」の存在を明らかにしている。
例えば、平均勤続年数が20年と長いプルーフリーダー(校閲担当)の場合、平均年収は5万7000ドル(約600万円)にとどまる。
ちなみに、編集部門のなかで最も年収が低いのは編集アシスタント。平均年収が4万2000ドル(約440万円)、平均在職期間は4年と短い(会社全体の平均在職期間はそれより短く、わずか2年だ)。
従業員組合の説明によると、今回の給与調査は、ニューヨーカーを傘下におくコンデナスト社が団体交渉の資料として提出した「給与月額、雇用者数、自己申告によるデモグラフィック(=人種・年齢・雇用形態・居住地など)データ」をベースにしている。
不当な給与格差については世間から厳しい監視の目にさらされており、バイデン新政権もすでにこの問題に本腰を入れて取り組むとともに、現行の差別禁止関連法を厳格に運用していく姿勢を明らかにしている。
ニューヨーカーの従業員組合は今回の調査結果公表と同時に、紙媒体・ウェブを問わず、全社的な(あるいは特定のポジションにおける)最低給与の引き上げ、定期昇給の導入、在職期間中に給与や社員教育、昇進を継続して得られるシステムの導入を求めていく考えを明らかにしている。
(翻訳・編集:川村力)