クラウド市場でのシェア拡大に向け次々と施策をくり出すオラクル。2020年にはズーム(Zoom)との提携を発表。公式サイトでも大々的に(画像右上)紹介されている。
Screenshot of Oracle website/Business Insider Japan
- ドン・ジョンソンは半年前の2020年6月、「より幅広いクラウド分野全体に関わるミッションに専念」するため、オラクル・クラウド・インフラストラクチャ(OCI)を離れると発表している。
- ところが現在、ジョンソンはOCIに復帰し、新設の「オラクル・クラウド・プラットフォーム&AIサービス」と呼ばれる組織の運営にあたっていることがわかった。
- OCIについては、組織改編後も、ジョンソンが後任に指名したクレイ・マグワイクが「しっかりと」の陣頭指揮を続ける模様だ。
オラクルがクラウドと人工知能(AI)に関する新組織を設立。昨年までオラクル・クラウド・インフラストラクチャ(OCI)の責任者を務めていたエグゼクティブ・バイスプレジデントのドン・ジョンソンがその運営にあたる。
ジョンソンは、オラクルの創業者で最高技術責任者(CTO)のラリー・エリソンから、(サフラ・カッツと並ぶ)共同最高経営責任者(co-CEO)の候補者と目される有力幹部の1人。
「オラクル・クラウド・プラットフォーム&AIサービス」と呼ばれる新組織は、OCIの延長上にある。
12月11日の社内メールによれば、「オラクル共通の新たなユーザーエクスペリエンス(UX)を生み出すために、社内各部門からさまざまなチームが集まり、全社のクラウドビジネスが一体となって、根幹となるサービスをサポートしていく」という。
クラウド市場では、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が絶対的存在感をもって立ちはだかる。
REUTERS
クラウドプロバイダーとしてのオラクルは依然として、トップを走るアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とマイクロソフトに遅れをとったままだ。
米調査会社ガートナーが2020年9月に発行したレポートは、オラクルの実勢について「最も急速に成長を遂げているクラウドプロバイダー」ながら、すでに大きな実績のある競合とはまだ開きがあり、「ニッチなプレーヤー」の域を出ていないと指摘する。
組織改編に際して、オラクルの社内向けに送られたメールにはこう書かれている。
「オラクルはいまや、根源的にはクラウド事業者であり、シンプルかつ明確なビジョンを持っている。それは、最高のクラウドインフラ基盤と優れたデータプラットフォームを、最も浸透したクラウドアプリケーションと結びつけることだ」
次期共同CEOの有力候補
オラクルの次期CEO候補と目されるエグゼクティブ・バイスプレジデントのドン・ジョンソン。
Oracle
ジョンソンがAWSからオラクルに移ったのは2014年。クラウド市場に殴り込みをかけたオラクルのリーダーとして突出した活躍を見せたジョンソンを、エリソンはマーク・ハード共同CEOの後継者候補に挙げた。
しかし、ハードが2019年に病気療養のため休職し、その後まもなく世を去ると、エリソンはサフラ・カッツを単独のCEOとして残し、結局、ジョンソンを共同CEOに指名することはなかった。
Business Insiderが取材過程で確認した2020年6月の社内メールでは、ジョンソン自身がエリソンに対し、新しいポジションに移り「より幅広いクラウド分野全体に関わるミッションに専念」することを報告している。
ジョンソンは当時、従業員向けに送ったメールのなかで、(そのメッセージが)オラクル・クラウド・インフラストラクチャ(OCI)担当として最後のアナウンスとなり、「自分が負っているすべての責務は(アマゾンから自分が引っ張ってきた)バイスプレジデントのクレイ・マグワイクに引き継いでいるところだ」と書いている。
それからおよそ6カ月。ジョンソンはOCIの延長上にあるとされる「オラクル・クラウド・プラットフォーム&AIサービス」という新たな組織のトップに立つことになった。12月11日の従業員向けメールによると、OCIは引き続きマグワイクが「しっかりと」指揮していくという。
オラクルは、ジョンソンとマグワイクがエリソンに対してメールで報告を行ったことは認めつつも、それ以上のコメントは控えるとしている。
新組織で何が始まるのか?
オラクル創業者兼最高技術責任者(CTO)のラリー・エリソン。ドン・ジョンソンを次期共同CEO候補の1人と語っている。
Justin Sullivan/Getty Images
「オラクル・クラウド・プラットフォーム&AIサービス」の設立を含む組織改編の発表メールには、次のように書かれている。
「注意してほしいのは、新組織はOCIの延長上にあり、別組織ではないということだ。全体会議、製品ロードマップ、定期ミーティングなど、OCIとは今後も一体的に活動する。大きな1つのチームであり、カルチャーも共通だ」
新組織にはOCIからプラットフォーム担当のチームも加わり、「インフラ基盤だけでなく、オラクルのクラウド全体に射程を広げる」。
また、「オラクル・フュージョン・アプリケーションズ」のような大企業向けビジネスアプリケーションや、クラウドサービスの「オラクル・グローバル・ビジネス・ユニット」などからもチームが加わり、「あらゆるオラクル製アプリケーションをサポートするプラットフォームサービスを生み出すべく、対象領域を拡大していく」。
さらに、機械学習インフラや人工知能(AI)サービスの構築を担うチームも参加。「同じインテリジェンスシステム上で、顧客企業と社内のあらゆるアプリケーション、両方を強化できる共通の機械学習プラットフォームを提供していく」という。
12月11日の社内メールにはこうある。
「アプリケーション部門のチームのみんな、ようこそOCIへ!OCIのチームのみんな、新組織に加わっても、仕事の規模がより大きくなること以外には何も変わらない。さあ、仕事を始めよう」
(翻訳・編集:川村力)