もっと主体的に生きていい。でもどうやって? 自律したキャリア戦略を描く15分ワークのすすめ【田中研之輔】

プロティアン思考術

撮影:今村拓馬

「一生懸命働いています。でも、年収は上がりません。貯金も貯まりません。生活費はかさむので、ギリギリやりくりしています。このままでいいのでしょうか? これからどうやって生きていったらいいのか、不安でしかたありません」

私はキャリア論の研究者という職業柄、ビジネスパーソンたちからこんな悩みを打ち明けられることがよくあります。

働くこと、稼ぐこと、そして、生きていくこと。

このバランスを上手に保ちながら、私たちは生活をしていかなければなりません。かつての先輩たちが過ごした時間よりもはるかに長い人生を、私たちはなんとか生き抜いていくのです。

でも、どうやって?

これからの働き方、稼ぎ方、生き方。この一番大切なことを、誰も教えてくれません

社会人として独り立ちして働くようになってからは、親に心配をかけるわけにはいきません。友達や同僚に相談することも気が引けるでしょう。

誰にも相談できなくて、打ち明けにくい不安や悩みを一人で抱え込む。そこから抜け出せずに、悪循環に陥る。メンタルに不調を来す人も少なくありません。実際、私のところに来るキャリア相談の件数は増えていますし、悩みもより深刻なものになってきています。

ふとした時に、不安を感じたり、孤独を感じたり、虚しさを感じたり。これからの人生を生き抜いていく希望が見えず、落ち込んでしまう。思うように眠れないし、何をやっても楽しくない。……これではどうしてもネガティブな思考に陥ってしまいます。

落ち込む自分を責めてはいけない

コロナで変わる働き方

コロナ禍で働き方には大きな変化が。変化に直面すると不安を感じるのはごく自然な反応だ。

kohei_hara/Getty Images

まず前提として、メンタル的に落ち込んでしまう状態は、誰にでも起こりうる、みんなが当事者であるということを理解しておいてください。

だから、もし今、あなたがそのような状態にあるなら、「自分はダメだな」とか「メンタルが弱いな」と、自分自身を責めては絶対にいけません。そして、「自分には関係ない」と思うのも間違いです。人生100年時代を生きていくには、メンタル的にもさまざまな状態を誰もが経験しうるのですから。

悩みや不安が増幅する理由の一つは、私たちをとりまく環境が劇的に変化しているから。これまでの「当たり前」が通用しなくなる歴史的な過渡期を過ごしているからです。

特に、コロナ禍でオンライン化やテレワークが一気に進みました。対面が前提とされていたすべての集まりが、抑制されることになりました。私たちはみんな孤立化したのです。

この孤立化の中で、私たちはこれからの働き方や生き方について考える時間が増えています。新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの働き方や生き方を根底から見直す機会となったのです。

変化に翻弄され、これまでの生き方に固執するか、変化を受け入れ、これからの生き方を構想していくか——私たちの目の前には、今、2つの選択肢があります。

これまでの日常が安定していてルーティン化していた人にとって、変化とは痛みを伴うものに違いありません。

けれどこの連載「プロティアン思考術」を読んでくださっている方々はおそらく、そうした変化を受け入れ、前向きな気持ちでこれからの生き方の方向性のヒントを掴みたいと考えているのではないでしょうか。

もっと主体的に生きていい

多くの人は、いずれかの組織に所属しています。どんな組織であれ、そこにはルールが存在します。ルールを大きく逸脱するようなことがあれば、注意を受けたり、時には処分を受けることもあります。そうしたことを経験するうち、いつしか私たちは組織のルール内で行動することを身体化させます。

もちろん、それ自体は悪いことではありません。しかし、組織のルールを遵守する中で、確実に失われていくこともあります。それが、私たちの「主体性」です。

田中研之輔

撮影:今村拓馬

今、企業ではこの主体性が問題になっています

私は職業柄、人事担当者をはじめ企業の方とお話しする機会も多くありますが、彼ら彼女らからは「主体性を持って働く社員がいない」「社員に主体性がない」という言葉を頻繁に耳にします。企業のルールや企業内での働き方を遵守する中で、主体性が削がれているのです。

自由に生きることと、主体的に生きることの違いはどこにあるか分かりますか? 答えは「自らの行動が所属する組織に対して責任を伴うか否か」です。

自由に生きるとは、思うがままに、たとえ時に組織のルールから外れたとしても、やりたいことをまっとうすること。それに対して、主体的に生きるとは、自らの意思で行動する際に、組織のルールも考慮した上で最大限のびやかに行動していくことです。

つまり、「もっと自由に生きる」というのが現実的には難しい人たちでも、「もっと主体的に生きる」ことは可能なのです。

76%の社員に行動変容が起きた

主体的に生きる方法については、拙著『プロティアン』と『ビジトレ』の2冊にまとめています。

『プロティアン』は、主体的に生きることの理論枠組みについてキャリア論の視点からまとめました。プロティアンとは「変幻自在」「一人で何役もこなす」という意味。プロティアン・キャリアとは、自分らしさを大切にしながら、社会変化に適合していくキャリア論です。

プロティアン・キャリア論が気づかせてくれることはいくつもあります。とりわけ、(1)組織にキャリアを預けるのではなく、自ら主体的にキャリア形成していくことの大切さ。(2)人はいつからでもキャリア形成が可能であるということ。(3)主体的に働くことで、心理的幸福感が高まること。そして、(4)個人と組織の関係性もより良いものにしていくことができる、といったことを実感できるはずです。

一方の『ビジトレ』では、「人は変われるのか」「働かされていた人が、自ら主体的に働くようになるのか」という問いを探究しました。結論から言えば、答えはイエス。この本では、NTTコミュニケーションズで実際に行われているキャリア開発プログラムを分析した結果、プログラムを受講した社員の76%に行動変容が生まれたことを明らかにしています。

「もう定年まで特に新しいことをしなくてもいい」と感じていた社員が、プログラムに参加して自分自身を見つめ直したことで、新たなことに積極的に取り組む。なかにはそんな劇的な変化を遂げた人もいました。人は職位にかかわらず、いつからでも変わることができるし、主体的に働くことができる——分析結果はそう物語っています。

「プロティアンキャリア開発シート」実践のすすめ

そろそろ、「どうやったら自分もそんなふうに主体的に働けるようになるだろう」と思っている読者の方も多いことでしょう。そこで皆さんにおすすめのワークシートを1つ紹介しますね。

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