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PayPay系「コード決済」普及に続け、クレカ「タッチ決済」2021年の注目動向

コード決済とクレジットカード

各主要なコード決済には、それに対応した“優位な”クレジットカードが存在する。

作成:Business Insider Japan

2020年6月末で終了した経済産業省の施策である「キャッシュレス・消費者還元事業」。消費増税の緩和策として導入された事業だが、これによって日本のキャッシュレス比率は拡大した。

それを牽引したのは、2018年頃から盛り上がり始めていた“コード決済”であったことは間違いない。

キャッシュレス還元事業によって得られたデータから、キャッシュレスの使われ方や顕在化した課題を振り返ると、2021年のキャッシュレス業界の動きが見えてくる。注目ポイントを解説しよう。

【還元事業の総括】コードとクレジットカード、“使われ方”の違い

QR決済

今までキャッシュレス決済を扱わなかった店にも広がったコード決済。

撮影:小林優多郎

日本のコード決済は、2017年に「Origami Pay」(現在はメルペイに吸収)がコード決済に対応したのが実質的な始まりだ。2018年にはPayPayがサービスをスタートして利用者が拡大した。

経済産業省の集計では消費者還元事業において、対象となる決済金額は約7兆2000億円に達した(集計期間は2019年10月1日〜2020年3月16日)。

そのうち、クレジットカードは約4.6兆円(64%)、コード決済は約5000億円(7%)、電子マネーなどは約2.1兆円(29%)だった。金額的には低いコード決済だが、これが決済回数になると約9.9億回(29%)のクレジットカードに対して約5.4億回(16%)と多くなる。ちなみに、電子マネーなどは約18.7億回(55%)だった。

経済産業省資料

経済産業省が2020年1月23日時点で公開している最新資料。

出典:経済産業省「ポイント還元事業における登録加盟店の地域分布及び店舗の種類別の登録状況と利用状況」

SquareとMMD研究所が2020年11月下旬に実施した2万人の調査では、普段の支払い方法でクレジットカードは72%で、コード決済は36%だった。一方で、最近ではコード決済の利用が4割を超えたという調査結果(MMD研究所、2021年1月20日発表)もあり、コード決済は“少額の決済で比較的頻繁に使われている”と言える。

実際、前述の消費者還元事業での決済の平均額は、クレジットカードが約4600円なのに対して、コード決済は約900円、電子マネーなどは約1100円と、クレジットカード以外は少額決済がメインだった。

【課題】手数料問題は“加盟店”にも“事業者”にも悩みの種

一般社団法人キャッシュレス推進協議会アンケート結果

一般社団法人キャッシュレス推進協議会が実施したアンケート調査では「「当初想定よりも決済手数料などの 費用が割高だったから」と回答した店舗が多かった。

出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス調査の結果について」

コード決済は、加盟店手数料が無料もしくは安価で、導入が容易だというのが、店舗側にとっては最大のメリットだ。消費者還元事業では、店舗側にも補助金が出たため、これを機にキャッシュレス決済を導入した店舗も多かった。

ところが、還元事業終了後の一般社団法人キャッシュレス推進協議会(還元事業補助金事務局)のアンケートでは、導入店舗の1割前後がキャッシュレス決済の提供を取りやめるとしていた。決済手段を縮小するという店舗も含めて、その理由としては半数近くが「想定よりも決済手数料などの費用が割高だった」と回答。

つまり、振込手数料などを含めた手数料が安価なキャッシュレス決済なら、ほとんどの店舗が維持したいと考えているということだ。例えば、PayPayのようにジャパンネット銀行(4月5日からPayPay銀行)なら振込手数料を無料化するといった施策は有効だろう。

PayPay ジャパンネット銀行

PayPayは加盟店に対し、ジャパンネット銀行の口座を売上金の入金先に指定した場合、振込手数料無料・翌日入金であることをうたっている。

出典:PayPay

一方で、こうしたコード決済の普及がほかのキャッシュレス決済を圧迫しているかというと、そういうわけでもない。多くのコード決済は、銀行口座またはクレジットカードで残高にチャージをして支払う。電子マネーも同様だが、多くの場合でクレジットカードが必要になってくる。

コード決済にクレジットカードを登録して支払うというのは、店舗にとってはある意味「クレジットカードの手数料をコード決済事業者が肩代わりしている」という状況になる。

客側にとっては、「クレジットカードが使えない店舗でクレジットカードが疑似的に使えるようになる」とも言える。

ゆうちょ謝罪会見

不正利用問題の記者会見で登壇した、ゆうちょ銀行の池田憲人社長(右)と田中進副社長(2020年9月撮影)。ドコモ口座問題にからんで銀行口座からのチャージが一時停止されたことも、クレジットカードの存在感を高めた要因の1つといえる。

撮影:小林優多郎

自社グループ内にクレジットカードを保有するコード決済事業者は、自社クレジットカードであればポイント還元を高めるといった工夫でクレジットカードのコントロールをしようとしているが、こうした経緯もあって、コード決済の普及はクレジットカードの存在感を高めていると言える。

【2021年の動向1】クレジットカードも“タッチ決済”になっていく

広まるタッチ決済

クレジットカードでもタッチでの決済が広まりつつある。

撮影:小林優多郎

日本の場合、クレジットカードのIC化が遅れたこともあって、「クレジットカードを店員に渡してスワイプしてからサインをする」という支払い方法がいまだに存在している。

ただ、クレジットカードは現在「客がリーダーにクレジットカードを差し込み、テンキーでPINを打ち込む」のが一般的な使い方だ(サインが必要な場合、PINを打ち込まない“PINレス”で済む場合もある)。

IC対応には、店舗側の決済端末の更新とクレジットカードのIC搭載が必要なので、ここ1~2年でようやく一般化してきた。しかし、「スマホでタッチ」するだけで支払えるApple Pay/Google Payの方が利便性が高いことは誰しも認めるところだ。

茨城交通

茨城交通の高速バスに設置されたタッチ決済のリーダー。

撮影:小山安博

ただし、店舗側からみると、国内のApple Pay/Google Payは、店舗決済端末側にも特別な対応と契約が必要なことが、一層の普及のハードルになっている(同決済の仕組みとして一般的なiDとQUICPayを読み取れる必要があるため)。

それに対して、2020年に一気に拡大してきたのが「クレジットカードのタッチ決済」。専門的には、“EMVコンタクトレス”と言われるものだ。

【2021年の動向2】利便性高まる「三面待ち」

EMVコンタクトレスのマーク

こうしたEMVコンタクトレスのマークがタッチ決済の目印。

撮影:小山安博

仕組みとしては、業界団体のEMVCoが策定した規格を利用する。

比較的新しい決済端末であれば、すでに対応している場合が多く、クレジットカードをタッチするだけで決済が終了する。一定金額以下(日本ではおおむね1万円以下)であればサイン/PINレスなので素早い決済が可能だ。

これによって、クレジットカードの手間だったサインやPIN入力が省け、日本人の多くが慣れた「タッチ決済」がクレジットカードだけで可能になる。

Apple PayやGoogle Payでもすべてのカードではないが、EMVコンタクトレスとして登録ができるカードもあるため、スマートフォンでもクレジットカードのタッチ決済ができる。

決済端末側もクレジットカードの磁気ストライプ、IC、EMVコンタクトレスの3種類を同時に待ち受ける、いわゆる「3面待ち」に対応していることが多い。

3面待ち

店員の表示。いわゆる3面待ちで、店員側が操作する必要はない。

撮影:小山安博

そうした端末であれば、決済時に「クレジットカードでの支払い」と店員に告げれば、客側は磁気のスワイプ、ICの差し込み、EMVコンタクトレスのタッチのいずれも使えるので分かりやすい。店員側も、普段のクレジットカード決済の処理をすればよく、あとは客任せのため店頭オペレーションはスムーズだ。

他の決済手段のように、「PayPay」「Suica」「iD」などといった区別もない。日本だとまだ店員側で「クレジットカードのタッチ決済」を知らない場合もある。EMVコンタクトレスのマークがある決済端末であれば試してみるといいだろう(反応がなければすぐさまICに切り替えればいい)。

京都丹後鉄道

京都丹後鉄道の列車内に設置されたタッチ決済のリーダー。公共交通機関での導入も進められている。

撮影:小山安博

クレジットカードのタッチ決済を使えるようにするには、

  • 加盟店側でタッチ決済が可能な契約を結んでいて、決済端末もタッチ決済に対応している上で、
  • 使用するクレジットカード側もタッチ決済に対応

していなければならない。Visaやアメリカン・エキスプレスは比較的多くのカードでタッチ決済をサポート。

ダイナースクラブも2020年12月からカードデザインを刷新してタッチ決済に対応する。逆にJCBやマスターカードの対応は遅めで、対応カードはまだ一部にとどまる。

【2021年の動向3】異例の業界団体「スマートワレット協会」の動き

EMVCoによる標準仕様であるため、基本的にどのブランドでもそのまま利用できるのが理想だが、加盟店契約などがあるため、すべてのタッチ決済対応クレジットカードがすべてのタッチ決済対応店舗で使えるとは限らない。そういった混乱が発生しているのが現状の課題だ。

スマートワレット将来構想イメージ図

スマートワレット協会が掲げる将来構想イメージ図。

出典:一般社団法人スマートワレット協会

こうした現状に対して、ダイナースを除くクレジットカード4社がスマートワレット協会に参画。クレジットカードのタッチ決済普及などを図っていく意向。2021年は、本格的な「クレジットカードでタッチ決済」の年になることが期待される。

クレジットカードのタッチ決済は、海外でも広く普及しており、海外旅行時も使えるのがメリット。逆に海外からの訪日観光客が日本でもタッチ決済を利用できるようになる。

今後、店舗側はクレジットカードに対応するならタッチ決済もサポートすることは必須となっていく。利用者側も、タッチ決済対応のクレジットカードを発行するといいだろう。

(文・小山安博


小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。

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