ドイツ銀行は自動車産業の2021年見通しについて、電動化や自律化など「自動車2.0」トレンドが続くとみる。
REUTERS/Agustin Marcarian
- ドイツ銀行が、2021年に注目する自動車関連銘柄8社を選び、レポートで紹介している。
- うち6社は電気自動車(EV)と自動運転車(AV)の台頭に恩恵を受ける企業だ。
- バンク・オブ・アメリカが1月18日に公表したレポートと比較すると興味深い。
自動車メーカーもテック企業も、過去10年の間に数十億ドルという資金を自動車の電動化や自動運転技術の開発につぎ込んできた。
昨今の自動車産業について投資判断するときは、そうしたトレンドのなかで、より資金調達の容易なポジションにつけている企業に注目すべきだ —— ドイツ銀行のアナリストたちはそう指摘する。
そうした観点から、エマニュエル・ロズナー、エディソン・ユー、コナー・ウォルターズの3人は1月20日、2021年に注目する自動車産業の銘柄をレポートで発表している。
「『自動車2.0』(電動化、自動運転、コネクティビティ)は2021年、引き続き最も強力な投資トレンドであり続ける」(上記レポートより)
アナリストたちが2021年の注目株として挙げた6社のうち、6社はEVやAVの普及から恩恵を受ける企業。また、リストアップされたうちの2社はEV、ガソリン車を問わず部品を供給するサプライヤーだ。自動車需要の回復や政府による追加的な景気刺激策は、両社に利益をもたらすことになる。
では、ドイツ銀行が選んだ自動車関連銘柄6社を紹介しよう。
ゼネラル・モーターズ(GM)
米ゼネラル・モーターズ(GM)が2022年に市場投入予定の電動ピックアップトラック「ハマーEV」。
Screenshot of General Motors website
【目標価格】64ドル
【推奨理由】GMはアグレッシブなEV戦略を展開し、それが市場での強いポジショニングにつながっている。おかげで投資する側も引き続き投資意欲をそそられる。同社のEVに関する揺るぎない技術と開発努力にはますます多くの投資家が信頼を置くところで、電動化とそのマネタイズに成功すれば、GM株はさらに高い評価を得て値上がりすることになる。
ルミナー(Luminar)
ルミナー(Luminar)の技術・製品紹介ムービー。
Luminar YouTube Official Channel
【目標価格】37ドル
【推奨理由】(ドイツ銀行アナリストチームの)ロズナーとユーは1月7日、ルミナーの経営幹部2人に話を聞いた。
それによると、ルミナーが開発を進めるLiDAR(ライダー=レーザー光を使ったセンサーの一種)のコストダウン(の軌道)は順調で、部品コストは現時点で1ユニットあたり3ケタ台(=1000ドル未満)。すでに確定している供給契約ベースなら2023年までに500ドルは無理なく実現できる状況で、2020年代半ばには100ドルを切るところまでいくという。
戦略的パートナーシップおよび顧客企業との合意済み契約について、ルミナーは今後2年以内に、計画通りB/Cサンプルの検証試験をクリアし、進行中の開発プログラムをすべてOEM(完成車)メーカーとの連続生産契約に切り替える。
ルミナーの卓越したシステムパフォーマンスと適切なコスト感、自動車メーカーとの信頼関係などをすべて踏まえると、「買い」判断および37ドルという目標価格は正当化されるだろう。
テスラ(Tesla)
テスラ(Tesla)が発表した電動ピックアップトラック「サイバートラック(Cybertruck)」の紹介ムービー。
Tesla YouTube Official Channel
【目標価格】890ドル
【推奨理由】2021年はテスラにとって重要な年になる。下記2工場で生産が始まり、複数の新製品がラインナップに加わる。
まず、すでに中国・上海のギガファクトリーで「モデルY」の生産が始まっており、2021年中に増産が予定されている。さらに、独ベルリンと米テキサス州オースティンでギガファクトリーが竣工し、いずれも年内に生産開始までたどり着く予定だ。
中期的に見ても、技術、生産能力、そしてとりわけコストについて、テスラが目指す意欲的な開発目標は、世界の電気自動車(EV)シフトを加速する後押しになるとともに、テスラ車の圧倒的な優位性をさらに高めることになるだろう。
また、テスラの車載電池開発計画は、現在想定されているコストダウンを前倒しで実現しようという勇敢な試みであり、これが実現すれば他社との競争ではかなり有利になる。
アプティブ(Aptiv)
アプティブ(Aptiv)の事業概況。左下に契約金額、221億ドル(約2兆3200億円)という規模感。
出所:APTIV OVERVIEW 2020
【目標価格】160ドル
【推奨理由】自動車産業において最高クラスの技術を誇り、高電圧製品に関する請負契約の入札では勝率70%以上、とくに配電システムの世界シェアは30%強に達する。高電圧製品の販売額は2022年まで年平均40%の成長を見込む。
アプティブ製品がバッテリー電気自動車(BEV=ハイブリッド車や燃料電池車を除く)1台のコストに占める割合は1000ドル以上。(ガソリン車など)低電圧の自動車のほぼ2倍だ。テスラ車については、アプティブ製品の顧客内シェアが50%超にもなる。
バリュエーション(評価額)については、企業価値/売上倍率(EV/Sales multiple)でほかのEV関連企業に比べるとまだまだ低いと考えられる(目標価格の160ドルも、2021年の予測値倍率をわずかに3倍と想定した数字だ)。
ニオ(NIO、蔚来汽車)
2020年9月に中国・北京で開催された国際モーターショーに出展された蔚来汽車(NIO)の電動コンパクトSUV「ES6」。
REUTERS/Tingshu Wang
【目標価格】70ドル
【推奨理由】1月9日に開催された年次イベント「NIO Day(ニオデイ)2020」は期待の高まる内容だった。同イベントでニオは、消費者や投資家がまさに期待していたような、今後2年間に関するきわめて力強いロードマップを提示した。
フラッグシップとなる高級セダン「ET7」や、蓄電容量150kWh(キロワットアワー)の個体電池を新たに発表。目下開発を進める自動運転技術(NAD)についてきわめて明るい見通しを強調しつつ、システムの提供そのものは(オプションとしての)サブスクリプションモデルを採用する方針を示した。
結論として、同社が示したロードマップをすべて予定通り実現するのはもちろん簡単なことではないが、その目標に最も近い場所にいるのがNIOだと考える。
ビステオン(Visteon)
ビステオン(Visteon)のワイヤレスバッテリー管理システムのイメージ。
Visteon
【目標価格】166ドル
【推奨理由】米ゼネラル・モーターズ(GM)の事業の柱となるEVプラットフォーム「アルティウム(Ultium)」に採用された、初のワイヤレスバッテリー管理システム(BMS)が、ビステオンの最新のテクノロジーの実力を証明し、同時にビステオンの「TAM」(=実現可能な最大の市場規模)を一気に押し広げた。
結果として、ビステオンはEVシフトの恩恵を受け、バリュエーション(評価額)を大きく高めることになりそうだ。また、GMが新型EVラインナップのローンチスケジュールを前倒しで進めようとしていることは、ビステオンの成長にとってもプラスになるだろう。
(翻訳・編集:川村力)