医薬品開発には膨大な費用と時間が必要だ。そのプロセスを迅速化し、コスト削減を可能にするAI技術に投資が集まっている。
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- この記事はインサイダー・インテリジェンスによる調査レポート「医薬品開発におけるAI活用(AI in Drug Discovery and Development)」のプレビュー版。レポート完全版(有料)はこちらから
これまで製薬業界では、デジタルヘルス技術の導入が進んでこなかった。一般に製薬会社では事業戦略にAIや機械学習を組み入れるのが遅く、これが幅広いデジタルトランスフォーメーションを難しくしている。
製薬会社は医薬品開発のチャンスを生かすために開発戦略に先進的なヘルステックを組み込む必要がある。
医療業界でデジタル技術の活用が急速に進んでいる一方で、製薬業界は遅れをとっている。これに着手している企業も、明確な戦略とデジタル化に焦点を当てたリーダーシップを欠いているため、取り組みに一貫性が見られない。
医薬品開発プロセスにおける「AI」と「機械学習」の活用
新しい薬が製品として市場に出るまでにおよそ28億ドルの資金と12年以上の年月を要する(写真はイメージです)。
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医薬品開発には膨大な時間と資金がいる。バイオテクノロジー企業のタコニック・バイオサイエンシズ社(Taconic Biosciences)によると、新しい薬が製品として市場に出るまでに、およそ28億ドル(約2900億円)の資金と12年以上の年月を要するという。
AI技術と機械学習は、創薬プロセスのあらゆる段階で役立つと考えられている。ヘルスケア関連のAIスタートアップへの投資額は2020年第3四半期に20億ドルを超えたが、なかでも「創薬プロセスをAIで合理化」しているスタートアップは、他に比べ群を抜いた額の資金を調達した企業が多い。
探査研究におけるAI活用(第1段階)
探査研究には、「既存文献の分析」や、「薬の候補物質が標的分子にどう作用するのかを調べるテスト」などが含まれている。インサイダー・インテリジェンスによる「医薬品開発におけるAI活用」レポートは、AI技術の活用で探査研究のコストを70%も削減可能だとしている。
非臨床開発におけるAI活用(第2段階)
非臨床開発段階では、候補物質の有効性や安全性を調べるために動物実験を行う。AIを活用することで実験を円滑に進めたり、薬物の作用をより早く正確に予測することが可能となる。
臨床試験におけるAI活用(第3段階)
非臨床開発段階を経て、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けた後、人間の被験者(治験ボランティア)への投与を行う臨床試験が始まる。4つのフェーズからなっており、創薬プロセスにおいてもっとも多くの時間とコストがかかる段階とされている。
AIは臨床試験中の被験者のモニタリングを容易にし、より多くのデータをより迅速に得ることを可能にする。治験ボランティア個々人に合わせた対応が容易となり、脱落防止にもなる。
製薬分野でのAI技術への投資
2020年第3四半期、ヘルスケア関連のAIスタートアップへの投資額は、世界全体で初の20億ドル超えとなった。
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IT大手はこれまでにない勢いで製薬分野向けのAI技術に投資している。AIとクラウド関連のソリューションを幅広く提供するIT大手は、これらの技術への多岐にわたるニーズがある製薬会社にとって重要なパートナーとなり得る。
例えば、モデルナはアマゾンが提供するクラウド・プラットフォームのAWSを活用し、医薬品の開発プロセスを迅速化させている。同社は新型コロナウイルスのワクチン開発で名を馳せたが、AWSを活用しながらたった40日間でがんワクチンを開発したことも注目に値する。
モデルナの他にも多くの製薬会社が、デジタルヘルス分野への進出を拡大させるIT大手と手を組んでいる。IT大手は強みであるAI技術を活かし、今後も多くの製薬会社との提携関係を結んでいくだろう。
本レポートで言及される企業:
AbbVie, Amazon, Apple, AstraZeneca, Atomwise, Biofourmis, Eli Lilly, Exscientia, Google, Insilico, Litmus Health, Microsoft, Moderna, Novartis, Otsuka, Pfizer, Recursion Pharmaceuticals, Repurpose.AI, Roche, Sanofi, TriNetX, Verily, Verisim, XtalPi
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[原文:Big pharma is using AI and machine learning in drug discovery and development to save lives]
(翻訳・野澤朋代)