「ハッピーセット」のその先へ。マクドナルドが「正解のない問い」を問いかける理由

小嶌伸吾さん

「みんなで!どう解く?」プロジェクトを担当する日本マクドナルド マーケティング本部ナショナルマーケティング部マネージャーの小嶌伸吾さん

1971年に米マクドナルドが日本に進出してから、50年。進出以来、日本マクドナルドは日本市場で、新しい取り組みを続けてきた。中でも異彩を放つのが2021年1月からスタートする「みんなで!どう解く?」プロジェクト。

「何のために勉強するの?」

「嘘は絶対悪なのか?」

——こうした「正解のない問い」を子どもたちと一緒に探し、議論を深めるチャレンジ。「ハッピーセット®」を通じてファミリーに寄り添い続けてきた同社が、子どもたちの「答えのない問題に向き合う力」を育もうと企画したものだ

日本マクドナルドは、なぜいま子どもたちの学びを考えるのか?プロジェクトの担当者であるマーケティング本部ナショナルマーケティング部マネージャーの小嶌伸吾さんに聞いた。

「やってみたい」から子どもの成長のきっかけをつくる

小嶌伸吾さん

マクドナルドが1987年に始めた「お子さまランチ」は、1995年には「ハッピーセット」と名称を変えて現在まで続いている。セットメニューの内容は、時代と消費者のニーズに応えながら、多様な選択肢を用意する形へと変わってきた。同時に、当初からセットになっていたおもちゃも、さまざまな形につくり替えられるダイヤブロックから始まり、現在は子どもに人気のキャラクターとのコラボレーション商品も開発。消費者の求めるものに応えながら変化し、今日まで続いている。

こうしたおもちゃの開発には、同社の強いこだわりがある。たとえ人気キャラクターとのコラボであっても、必ず社内で開発を行っているのだ。

「おもちゃの開発では、子どもが遊びに夢中になるなかで、それが成長や発達のきっかけになるよう、工夫するようにしています。同じおもちゃを手に取っても、子どもによって好きになるポイントや遊び方は異なります。同じブロックでも、組み立てるのが好きな子もいれば、組み立てたもので遊ぶのが好きな子もいる。『やってみたい』と自発的に取り組んだ遊びが、子どもたちの成長や発達につながるように、また、親御さんが子どもたちの興味関心に気が付くきっかけを与えられるようにと考えて開発をしています」(小嶌さん)

ハッピーセットのおもちゃは進化を続け、2017年にはファミリーで遊べるオリジナルパーティゲームが登場。2018年からは絵本やミニ図鑑を選べる「ほんのハッピーセット」がスタートした

「ほんのハッピーセット」は、子どもたちが楽しく気軽に本に触れる機会を増やし、読み聞かせなど親子のコミュニケーションのきっかけ作りにも一役買いたいという思いから始まった。おもちゃの選択肢が約1カ月ごとに替わるのに対して、2~3カ月ごとに絵本やミニ図鑑のラインナップが変わる。スタートからの約2年で一定の人気を獲得し、2020年12月までに配布された絵本や図鑑はのべ32種類、累計2,500万冊に上る

ほんのハッピーセット

2018年から登場した「ほんのハッピーセット」。ミニ図鑑や絵本を提供しており、スタートからの約2年が経つ2020年12月までに配布された絵本や図鑑はのべ32種類、累計2,500万冊に上る。

「ハッピーセットは、子どもたちに楽しい体験を提供したいというところからスタートしています。子どもが楽しそうに喜んでいる姿から、親御さんにも幸せを感じていただきたいということが前提にあります。そして、いま考えているのはさらにその先に行けないかということ。『おもちゃがついたお子様セット』以上の価値を、どうやれば提供できるかということです」(小嶌さん)

「ほんのハッピーセット」からさらに進んだ、小嶌さんが「その先」と言うものの一つが、2021年に取り組む「みんなで!どう解く?」プロジェクトだ。

クイズ王と一緒に「正解のない問題」に挑む

小嶌伸吾さん

ポプラ社の「どう解く?」書影

ポプラ社の児童書『答えのない道徳の問題 どう解く?』(やまざきひろし/文、きむらよう、にさわだいらはるひと/絵)。いのち、正義など正解のない普遍的な問題を、言葉とイラストで分かりやすく問いかける。

「みんなで!どう解く?」プロジェクトは、『答えのない道徳の問題 どう解く?』というポプラ社の絵本の制作チームとのコラボレーション。同書は、2018年の出版以来、教育機関などで高い関心を集めている。

同プロジェクトが挑むのは「ネットで調べればすぐに答えがわかるのに、なんで勉強するんだろう?」「人を殴るのは悪いことだけど、“正義の味方”なら許されるんだろうか?」といった、正解のない「問い」。

正解がない、人によって、視点によってさまざまな答えが存在し得る「問い」についてみんなで考えることによって、ものを考えること、自分の考えを言葉にすること、多様な意見を受け入れることなどを学ぼうという企画だ。

これからの時代をつくる子どもたちには、答えのない問いについて考え、ほかの人の意見も取り入れながら合意を図ってものごとを進めていく力が不可欠になっていきます。さらに言えば、自ら『問い』を立てる力がなければ生き抜けない時代がくる。そうしたことに、幼いうちから取り組み、考えるきっかけ、機会を提供していきたいと考えています」(小嶌さん)

プロジェクトでは、ウェブサイトを通じて問いを投げかけ、それに対する子どもたちの答えを募集する。2月22日にはオンラインでワークショップを開催し、参加者が一緒に身の回りの「答えのない道徳の問題」について考え、発表し合う場を設ける予定だ。プロジェクトを通じて、クイズ王で知られる伊沢拓司さんが率いるQuizKonckが子どもたちと一緒に考え、ワークショップではファシリテーターも務めることになっている。

伊沢さんの参加が決まった背景には、伊沢さん本人がこのプロジェクトに強く賛同したことがある。テレビ番組ではたった一つの正解を言い当てることで活躍し、注目を浴びている伊沢さんが、このプロジェクトでは子どもたちと一緒に『正解のない問い』に挑むことになる。

2020年春から小学校で実施されている新学習指導要領の中でも「生きる力」を育む、「主体的・対話的で深い学び」「社会に開かれた教育課程」が強調されている。

「とても重要なことですが、それは教師だけでできることではないと考えています。地域社会や企業、家庭が一緒に取り組んではじめて、実現可能なことだと思うのです。マクドナルドは全国に店舗がありますし、子どもたちは楽しいイメージを持ってくれています。そんな場所でなら、構えることなく、わくわくしながらこうした問いにも取り組む機会が作れるのではないでしょうか」(小嶌さん)

ファミリーの領域のビジネスは「CSRxマーケティング」が重要

小嶌伸吾さん

実は、小嶌さんを含め、ハッピーセットの開発に携わるチームのメンバーは、それぞれにハッピーセット世代の子どもを持つ父親であり、母親なのだという。ビジネスパーソンとして「どうやれば売れるか」ということを考える一方で、常に「ハッピーセットを買う側」としての目線も持って開発に当たっている。

「リサーチから導きだされたデータや、『売ろうとしたらこうなる』という理論も、親として、消費者として、自分の子どもや子どもの友達を日常的に見ている立場からすると『受け入れられない』という場合もあって、よく議論になります。そういう意味では商品を、本当に役に立つ、求められるというところに着地させやすい体制になっていると思いますね」(小嶌さん)

ファミリーの領域のビジネスでは、マーケティングとCSR(企業の社会的責任)が重なる部分が大きいと、小嶌さんは話す。

「子どもに貢献したいからといって、単純に算数のドリルを配ればいいわけではない。想いだけでは企業のエゴで終わってしまいます。マクドナルドとして子どもに貢献することができ、かつ子どもが楽しんで取り組める何か、いかに子どもにも親御さんにも受け入れてもらえるものを提供するかを大切にしています」(小嶌さん)

社会の未来を担う子どもたちやその家族が、本当に魅力を感じる、必要とされる商品、サービスを顧客目線で親身になって考えることが、結局はビジネス自体にもプラスに働いていくのだ。

「みんなで!どう解く?」プロジェクトで、全国の子どもたちから集めた「みんなの答え」は、2021年12月中に『みんなで!どう解く?by マクドナルド』という本にまとめ、「ほんのハッピーセット」として子どもたちに届けることになっている。

また、ワークショップを含むプロジェクトの成果は、教育の現場でも活用できる形にして、エデュケーションツールとして全国の教育現場へ提供していく計画だ。


「みんなで!どう解く?」について詳しくはこちら。

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