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ソ連が作った軍用機は今も現役…アメリカ軍やNATO軍にとっては大きな脅威

ロシア軍の戦略爆撃機ツポレフTu-95

2008年8月、エンゲリス空軍基地に着陸するロシア軍の戦略爆撃機Tu-95(ツポレフ95)。

REUTERS/Sergei Karpukhin

  • ソビエト連邦は、1990年代初頭に崩壊するまで、数十年にわたって強大な軍事力を保持していた。
  • 旧ソ連領土のかなりの部分を受け継いだロシアは、その後数十年をかけて着実に自国軍を構築した。拡大を続ける軍事力の中核には、ソ連時代から生き残った軍用機が少数ながら存在し、今も任務を帯びて世界中を飛び回っている。

アメリカとその同盟国は、50年近くにわたってソビエト連邦を最大の脅威とみなしていた。ソ連軍は大規模だった上に、高い性能を持つ兵器を擁し、史上最高レベルの軍事力を誇っていた。

幸い、ソ連と北大西洋条約機構(NATO)加盟国との間の直接的な衝突は一度も起きなかった。しかし、戦争の危機がまったくなかったわけではない。そのため、ソ連とNATO軍は互いに常に監視の目を光らせてきた。

特に警戒が厳しかったのが海軍だった。冷戦期間を通じてソ連は、世界各地に展開されているNATOの海軍部隊を監視し、必要であれば攻撃するための膨大な数の哨戒機、対潜哨戒機や戦略爆撃機を配備していた。

冷戦は終わったが、こうしたソ連時代の軍用機のいくつかはいまだに現役で、ロシアの空軍や海軍で運用されている。


Tu-95(ツポレフ95、NATOコードネーム「ベア(Bear)」)

「ベア」ことTu-95。1980年9月28日、国際水域上空で、アメリカ空軍の戦闘機F-4ファントムIIに監視されている。

「ベア」ことTu-95。1980年9月28日、国際水域上空で、アメリカ空軍の戦闘機F-4ファントムIIに監視されている。

Corbis via Getty Images

海上の哨戒および攻撃任務を負うソ連・ロシアの航空機で最もよく知られているのが、このTu-95(ツポレフ95)だろう。NATOからは「ベア(Bear)」というコードネームで呼ばれた爆撃機だ。

Tu-95はアメリカの爆撃機B-29をリバース・エンジニアリングでコピーしたTu-4の代替機として、1956年からソ連の空軍および海軍で実用配備が始まった。

高度約4万フィート(約1万2000m)での飛行が可能で、航続距離9000マイル以上(約1万5000km)のTu-95は、2万6000ポンド(約11トン)以上の兵器を搭載可能だ。

Tu-95は、大陸間飛行の任務核実験に使われたことでその名を知られている。NATO加盟国との国境沿いを飛行する任務で使用され、NATOは警戒を怠ることができなかった。

ソ連海軍に配備が始まって間もない時期のTu-95はミサイルを搭載していた。ソ連領からはるか離れた場所にいる、敵軍の水上艦を攻撃するためのミサイルだ。

アメリカ空軍のステルス戦闘機F-22が、アラスカ州の防空識別圏(ADIZ)に侵入したロシアの海上偵察機Tu-142に対してスクランブル発進を行う様子。2020年3月9日撮影。

アメリカ空軍のステルス戦闘機F-22が、アラスカ州の防空識別圏(ADIZ)に侵入したロシアの海上偵察機Tu-142に対してスクランブル発進を行う様子。2020年3月9日撮影。

NORAD

しかし冷戦が続く中で、Tu-95は旧式となり、その任務は哨戒や電子偵察へとシフトしていった。こちらの派生型はTu-142と呼ばれる(NATOのコードネームは、ベアFまたはJ)

Tu-142は、水上艦および潜水艦の追跡に優れた能力を発揮したほか、ロシア軍潜水艦からの通信を中継する役割も担った。

しかし、Tu-95/142の能力にも限界があった。老朽化によって墜落事故が増加し、これが原因で2015年には、ロシア空軍が保有する全機の運用が一時停止された。また、騒音もかなりのもので、上空を飛ぶ音は水中を航行する潜水艦からも聞こえたという。

冷戦を生き延びたTu-95とTu-142は、ロシア空軍と海軍で使用され、アラスカ州カリフォルニア州、そして日本の沖合でスクランブル発進を受けたということがたびたび報じられている。開発からはかなりの年数が経っているものの、どちらのタイプも改修が行われていて、ロシアは2040年まで運用を続ける意向だという。


Il-38(イリューシン38、NATOコードネーム「メイ(May)」)

ソ連軍で哨戒と対潜水艦作戦を担ったIl-38(NATOでの呼称は「メイ」)が、アメリカ海軍の空母ミッドウェイの上を低空飛行する。1979年5月18日撮影。

ソ連軍で哨戒と対潜水艦作戦を担ったIl-38(NATOでの呼称は「メイ」)が、アメリカ海軍の空母ミッドウェイの上を低空飛行する。1979年5月18日撮影。

US Navy

Il-38(イリューシン38、NATOコードネームは「メイ」)は、ソ連のイリューシン設計局が開発した民間向け旅客機、Il-18を改修した軍用機だ。

海上の哨戒および対潜水艦作戦を担い、1967年からソ連海軍に配属された。その役割は、アメリカ軍のロッキードP-3 オライオンに近い。

Il-38は、高度3万6000フィート(約1万1000m)での飛行が可能で、航続距離は4700マイル(約7500km)、最高速度は時速400マイル(約645km/h)に達する。

機体内部に2つの爆弾倉を持ち、最大で2万ポンド(約9トン)の機雷や水中爆雷、さらには対艦ミサイルや魚雷を搭載することができる。

駐機中のロシア太平洋艦隊の海上哨戒機Il-38N。2016年9月6日、ウラジオストク近郊のツェントラナーヤ・ウグロヴァヤ空軍基地で撮影。

駐機中のロシア太平洋艦隊の海上哨戒機Il-38N。2016年9月6日、ウラジオストク近郊のツェントラナーヤ・ウグロヴァヤ空軍基地で撮影。

Yuri Smityuk\TASS via Getty Images

主な任務が対潜水艦作戦であることから、同機の爆弾倉には通常、ソノブイ(敵の潜水艦を探知するために水面に投下される音響装置)しか積み込まれていない。

前述のツポレフと同様に、Il-38もロシアではまだ現役だ。ソ連時代から、NATO加盟国の艦船の上を低空飛行する姿が目撃されてきた。

インドは、旧ソ連の他の主要兵器に加え、Il-38やTu-142も数機採用したことがある。インド軍ではTu-142はすでに退役しているが、Il-38はまだ現役だ。

ツポレフと同様に、Il-38も近代化改修が行われていて、こちらもアラスカ州日本の空域に侵入し、スクランブル発進の対象となった。


Tu-22M(ツポレフ22M、NATOコードネーム「バックファイア(Backfire)」)

ロシア空軍のTu-22M。2018年8月8日撮影。

ロシア空軍のTu-22M。2018年8月8日撮影。

Marina Lystseva/TASS

海上任務に就くソ連時代の軍用機のうち最大の脅威だったのは爆撃機で、なかでも超音速爆撃機Tu-22Mの威力は並外れていた。NATOではバックファイアというコードネームで知られ、特に改良型のTu-22M3は、NATO加盟国の海軍にとって、現在に至るまで大きな脅威となっている。

Tu-22M3は、巡航速度時速559マイル(約900km/h)、最高速度時速1400マイル(約2300km/h)。最高飛行高度は4万3600フィート(約1万3300m)を超え、航続距離は4300マイル(約7000km)という性能を持つ。

複数のハードポイント(爆弾やミサイルなどを機外に取り付ける場所)と内部に爆弾倉を1基備え、最大で5万3000ポンド(約24トン)の武器を搭載可能だ。

冷戦中は、Tu-22M3はNATOの水上艦、特に空母に対抗する上で主要な役割を担うことが期待されていた。Tu-22M3には、核あるいは通常の弾頭を装着したKh-15ミサイルが最大で3発、もしくは最大で10発のKh-22ミサイルが搭載可能だった。

ある対空母爆撃作戦では、Tu-22M3およびTu-16が最大で100機参加する計画だった。そのうちミサイル(一部は核弾頭を装着する)が搭載されるのは最大で80機で、あとはそれ以外の兵器を搭載するか、おとりとして作戦に参加することになっていた。

演習中のロシア空軍の爆撃機Tu-22M3。2019年8月10日撮影。

演習中のロシア空軍の爆撃機Tu-22M3。2019年8月10日撮影。

Anton Novoderezhkin\TASS via Getty Images

Tu-22Mは、ソ連によるアフガン侵攻の最後の年に、爆撃機として実戦に参加した。ソ連の崩壊以降は、引き続きロシア軍で使用されている。2008年にロシアと現在のジョージアの間で起きた南オセチア紛争にも投入され、1機がジョージア軍によって撃墜されている。

Tu-22Mはしばしば、ヨーロッパおよびアジア地域での偵察任務に使用されてきた。また、シリア内戦にロシアが介入した際には、再び実戦に投入された

Tu-22M3には空中給油に関する近代化改修が行われ、航続距離がさら伸びている。搭載されるミサイルの種類も刷新され、Kh-101、Kh-55、Kh-32が新たに加わった。超音速ミサイルのKh-47M2キンジャル(Kinzhal)も開発が進んでいる。

Tu-22と並ぶジェット爆撃機のTu-16は、ロシア軍では退役しているが、中国では派生型のH-6がいまだに現役だ。対艦任務を持つ海上作戦用の派生型、H-6Kも開発された。


Su-24(スホーイ24、NATOコードネーム「フェンサー(Fencer)」)

ロシア空軍のSu-24。2018年8月27日、ロシアのチェリャビンスク州にあるシャゴル飛行場で撮影。

ロシア空軍のSu-24。2018年8月27日、ロシアのチェリャビンスク州にあるシャゴル飛行場で撮影。

Donat Sorokin\TASS via Getty Images

Su-24は、全天候型の爆撃機、迎撃戦闘機で、その派生型の一部は哨戒任務も担っている。可変翼と左右に座席が並ぶコックピットが特長で、ソ連の空軍と海軍で使用された。

航続距離は1724マイル(約2775km)、最高高度は3万6000フィート(約1万1000m)と、より大型のツポレフ機に比べるとかなり見劣りするが、Su-24はより海岸に近い地域での作戦を念頭に設計された。翼と胴体部分の下に合計9箇所のハードポイントを擁し、1万7000ポンド(約8トン)以上の武器が搭載可能だ。

海上任務においては、Su-24は超音速対艦ミサイルKh-31を3発搭載可能だ。これらのミサイルは、敵軍のレーダー施設を攻撃することも念頭に置かれていた。

2016年、バルト海でアメリカ海軍のミサイル駆逐艦ドナルド・クックの上を飛ぶロシアのSu-24。

2016年、バルト海でアメリカ海軍のミサイル駆逐艦ドナルド・クックの上を飛ぶロシアのSu-24。

US Navy

ソ連およびロシア軍で運用されているSu-24は、アフガニスタンやチェチェン、ジョージア、シリアで爆撃作戦を遂行した。その間、少なくとも5機が敵の攻撃によって失われている。ソ連とロシア以外では、6カ国がこの爆撃機を採用している。

Su-24は、他のロシアの爆撃機や哨戒機と同様に、NATO軍との対決の最前線に今も配備されている。

2014年4月には、1機のSu-24が、黒海上の国際水域を航行中だったアメリカ海軍の駆逐艦ドナルド・クックの至近距離を飛行するという出来事があった。この時、そのSu-24はドナルド・クックから水平方向に1000ヤード(約910m)、高さでは500フィート(約150m)しか離れていなかった。この1年後には、同じ海域で、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦ロスに対して、2機のSu-24が水平方向にわずか550ヤード(約500m)、垂直方向に200フィート(約60m)の距離まで接近した

また、2016年にはバルト海で、2機のSu-24がまたしてもドナルド・クックの上空を旋回した。アメリカ軍はこれを「攻撃の予行演習だ」と非難した。この時の映像には、2機のジェット機が、この駆逐艦から垂直方向に100フィート(約30m)しか離れていない場所を何度もかすめる様子が収められている

2017年および2018年にも、イギリス、ベルギー、オランダの海軍の艦船にSu-24が異常接近した事例があった。

[原文:Decades after the USSR collapsed, Russia still has Soviet-designed planes flying all over the world

(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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