ザ・ノース・フェイスとスパイバーの共同開発プロジェクトで生まれたアイテム「ムーン・パーカ」。表地の素材には構造タンパク質「ブリュード・プロテイン」が使われている。
Koki Nagahama/Getty Images
世界的なエコ意識の高まりを追い風に、脱石油素材の大本命と言われる人工タンパク質素材「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」を開発するバイオベンチャー、Spiber株式会社(以下、スパイバー)。同社の技術は国内外でも非常に高く評価されており、日本が誇るユニコーン企業として、いま急成長のさなかにあります。
そんなスパイバーが、量産体制に向けた新工場設立のため、新たに250億円もの資金調達をした。しかも「事業価値証券化」という耳慣れない方法で——というのが前回のトピックでした。
一般的に資金調達方法といえば、銀行からの融資による借入(デットファイナンス)か、新株発行(エクイティファイナンス)のどちらかが王道です。しかしスパイバーは今回、そのどちらの方法も選びませんでした。
その理由は前回解説したとおりです。すなわち、スパイバーは赤字が続いているため融資での調達は難しく、かといってこれ以上新株を発行すれば株式の希薄化が進んでしまうためエクイティでの調達も難しい、という事情ゆえです。
そこでスパイバーが着目した第3の調達方法が「事業価値証券化」だったというわけです。でもこれ、いったいどのような手法なのでしょうか?