転売対策はどうなる?メルカリ「基本原則」発表と新機能で見えてきたもの

アラート機能

メルカリは転売問題への対応の1つとして「アラート機能」を2021年春〜夏にかけてリリースする。

出典:メルカリ

メルカリは1月27日、外部有識者とともに策定した「マーケットプレイスの基本原則」を公開した。この基本原則は、既に施行されている利用規約やユーザーガイドの背景となる概念で、2次流通のプラットフォーマーとしての役割や行動指針を取りまとめたものだ。

基本原則の公開にともない、新しく「アラート機能」のリリースもアナウンスされた。

アラート機能はユーザーに対し、価格が急騰した商品を買う前に“気付き”を与える機能で、出品規制には該当しないが需要バランスが著しく崩れた製品や検索結果に表示される。実装時期は2021年春〜夏の見通し。

メルカリ上級執行役員の田面木宏尚氏は同日の記者会見で、具体的にどの製品に、どんな条件でアラートが表示されるのかなどの詳細について「決めている最中」とコメントしているが、「1次流通の企業や権利者などと連携して判断を行なう」としている。

マスクやゲーム機などの転売問題にも対応

登壇者

記者会見に登壇したメルカリ上級執行役員の田面木宏尚氏(写真右)と、オンラインで参加した有識者会議メンバー。

出典:メルカリ

今回の基本原則やアラート機能は、コロナ禍により一層の注目を浴びた「転売問題」に対するメルカリとしての1つの回答と言える。

基本原則は、外部有識者およびメルカリの一部役員が参加した「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」で策定された(会議は2020年8月〜12月に、計6回実施)。

有識者会議では「多様な価値観を持った人たちが、自由に取引できるマーケットプレイスを創ること」を基本理念とし、マーケットプレイスのプラットフォーマーとして「多様な価値観を持った売り手と買い手の自由な取引を通じ、需給のマッチングを実現」することを目指すとしている。

パンデミック

マスクのようにメルカリで流通することにより、必要な人に届くのがさらに遅くなる可能性のある商品もある。

出典:メルカリ

一方で、ユーザーが安全に利用できる環境の確保という側面では、マスクや消毒液といった「生命身体の安全や健康の維持に関わる必需品」への対応は必要であると明記。

さらに、「需要バランスが著しく崩れ、急激に価格が高騰するもの」、例えば新型ゲーム機やSNS上で“バズった”ものに対しての対応方針も示された。

転売問題

生命維持などに関係はないが、需要のバランスが著しく崩れているケースには「アラート機能」でまずは対応する。

出典:メルカリ

有識者会議では、自由取引の結果として価格が高くなる現象はある程度容認しつつも、世論の批判的な意見や販売元の意向、ユーザー自身が意図せずに高値で買ってしまう危険性もあることから、販売元(メーカー)と連携し「購入する人が冷静に判断できるような情報提供を行っていく」方針としている。

メルカリでの転売と買い占め行動は無関係?

山口真一氏

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏。

メルカリ記者会見にて、筆者によるスクリーンショット

会見では、有識者会議メンバーで国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏も登壇し、コロナ禍のマスクにまつわる2次流通市場(メルカリ)と1次流通市場の関係分析結果を報告した。

メルカリでは政府の要請もあり、2020年3月13日にマスクを取引禁止項目に指定したが、メルカリ内では禁止項目指定前から、報道などの影響もありユーザー自身が出品を自粛する傾向があったという。

取引量と価格の関係

メルカリ内の取引増加にともなって、1次流通市場の価格が増加する動きは見られなかった。

出典:メルカリ

また、メルカリでのマスク取引量と1次流通市場の取引量に大きな規模の差がある点、フリマやオークションサービス全体でマスクが取引禁止になった後も価格が戻らなかった点から、「(マスクについて)転売があるから品薄になる、というのは言いにくいのでは」(山口氏)と考察した。

ただし、マスクは禁止項目指定前に約4%のユーザーが1次流通の価格より高い値段でメルカリ内で購入していることから、メルカリ内の取引シェアとメルカリ内の価格には関連性が認められる、としている。

メルカリ内の取引量と価格。

メルカリ内の取引量と価格。

出典:メルカリ

山口氏は「マスク以外の消毒薬などの緊急時の必需品や、ゲーム機などの需要と価格のバランスが崩れた製品にも同じ傾向が言えるか」というBusiness Insider Japanの質問に対し、「(データの制約上)正確なことは言えない」としつつも、「メルカリでの取引が在庫不足(買い占め)に影響する、というのはどの財についてもあり得ない」と回答している。

メルカリでは今後、半年に1度の基本原則の見直しに加え、ヤフーや楽天、アマゾンジャパンなどが参加するオンラインマーケットプレイス協議会を通じて、業界への基本原則の浸透につとめていく方針だ。

(文・小林優多郎

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