GameStop株の乱高下は空売りファンドと個人投資家の争いだった。
REUTERS/Mike Blake
- 空売りファンドはGameStop株の上昇で大損害を被った
- GameStop株を買い支えたのはRedditに集まった大勢の個人投資家だった
証券アナリストが「不合理」としたゲーム販売店チェーンのGameStopの株価上昇が、Redditのグループ「Wall Street Bets」によって引き起こされ、空売りファンドは大打撃を受けている。
市場が「合理的」に動いている場合、投資家は株式を空売りする選択肢を持つ。GameStopの場合、メルビン・キャピタル(Melvin Capital)とシトロン・リサーチ(Citron Research)が空売りのリストに名を連ねていたが、彼らの賭けは大失敗した。Reddit(アメリカの巨大ネット掲示板)のあるグループに集まった200万人以上のメンバーがここ数週間GameStopの株を買い支えており、株価は1月中旬から1200%以上も急騰したからだ。
その結果、空売りファンドは何億ドルもの金を失った。
株式を「空売り」するとは、投資家がその会社の株価が下がると予想することを意味する。通常の投資では、投資家は株価が上昇することを期待して株を買う。(売ることをショート、買うことをロングという)
株式を「空売り=ショート」する場合、まず投資家は貸し手から株を借りる。ここでは1株10ドルだと仮定しよう。投資家は株をその価格で売る。その後、株が1株当たり1ドルに下がったら、投資家は株を1ドルで買い戻して貸し手に返却し、1株当たり9ドルを懐に入れるのだ。
「A社を100ドルで売り、翌日に10ドルになったとしよう。ポケットから10ドルを取り出して、株を買い戻し、借りた人に返す。するとポケットには90ドルが残るというわけだ」と、ウェドブッシュ(Wedbush)証券のアナリスト、マイケル・パクター(Michael Pachter)は述べた。パクターは、株式の借り入れには利息(手数料)を支払うための追加のコストがかかるが、投資家が1カ月程度ショートポジション(空売りしている状態)を保持しているだけの場合、それはごくわずかだ、と付け加えた。
しかし、GameStopの場合のように、株価が上昇すると空売り筋が「搾り取られる」こともあると、テルシー(Telsey)のアナリスト、ジョー・フェルドマン(Joe Feldman)は言う。
つまり株価が上がると、空売り筋はより高い価格で株を買い戻さなければならない。つまり、株が10ドルだったときに株を借りて、株が20ドルになると、その投資家は1株あたり10ドルを失うことになる。
GameStop株を空売りしていたメルビンとシトロンは、株価が急上昇したときに多くの金を失っただろうとパクターは述べている。その後、彼らはともにこれ以上の損失を避けるためにショートポジションをクローズ(株を買い戻して返却)した。CNBCは、メルビンは巨額の損失を被ったと報じている。シトロンのマネージングパートナーであるアンドリュー・レフト(Andrew Left)は、GameStop株が約90ドルを付けたときに「100%の損失」でポジションをカバーしたと述べた。
「空売り筋が『これはクレイジーだ、もう私は降りる』と言うポイントがある」とパクターは述べている。
高値で株をショートして、それが通常レベルに戻る(下がる)ことに賭けることの問題は、株価の非合理的な上昇がどこで止まるのか分からないということだ。「それが無限に上昇するとしたら?」とパクターは問いかける。
ニューヨーク大学のスターンビジネススクールで教鞭をとり、ゲーム業界に詳しいジュースト・ヴァン・ドリュネン(Joost van Dreunen)は、現在のGameStopの株価は「現実とはまったくかけ離れている」と述べている。今回の乱高下に先立つGameStopの過去最高値は、任天堂からWiiとSwitchが発売された2007年と2013年で、株価は約60ドルにまで上がった。
「それが彼らの絶対的な最高水準であり、それ以来、そこまで回復することはできていない」とドリュネンは述べている。
「現在の状況は、現実とはまったく関係ないポストモダニズムの金融ドラマに過ぎない」
GameStop株は1月27日の終値で約347ドルを付けている。
フェルドマンは、「基本的には、会社自体は何も変わっていない」と述べている。
「どちらかと言えば、この四半期は少し残念な業績だったかもしれない」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)