撮影:伊藤有
楽天モバイルは新料金プラン「RAKUTEN UN-LIMIT VI」(楽天アンリミット6)を発表した。3段階制の料金プランで、その内容はほぼ、事前に出ていたリーク報道をなぞる内容だった。
月額料金価格で、ドコモ「ahamo」をはじめとする大手キャリアの格安プランのさらに下をくぐった価格設定としている。
- 月のデータ使用量1GB以下は無料
- 1〜3GBまでは月額980円
- 3〜20GBまでは月額1980円
- 20GB以上は月額2980円
三木谷氏は競合比較として、実際にキャリア名・サービス名(仮称含む)を挙げて、コストメリットに言及。対抗姿勢をあらわにした。
撮影:伊藤有
また、サポート面では、ドコモahamoをはじめとする大手キャリアの格安プランと違い、「店頭での加入も可能」という点もアピールする。
提供は4月1日から。正確には「新料金プラン」ではなく「Rakuten UN-LIMIT Vのアップグレード」という位置付けのため、既存会員は4月1日から新料金体系へと自動更新される。
5年前倒しで「2021年夏にカバー率96%」は可能?
楽天モバイル会長兼CEOの三木谷浩二氏。
撮影:伊藤有
三木谷浩二・楽天モバイル会長兼CEOは、発表会の冒頭からプレゼンテーションのすべてを一人で担当し、熱弁をふるった。
楽天は2020年のサービスイン以来、先着300万人限定の「1年間無料」施策を実施している。この思い切った施策をもってしても、現時点での対象回線は220万人。まだ80万人の「空き枠」がある。
この空き枠を多いと見るかはそれぞれだが、カバーエリアで勝る大手キャリアから格安プランが登場するなど競争環境が激変するなかで、「苦しい戦いを続けている」と言えるのではないか。
料金だけ安くても、回線の接続品質がともなわなければ、結局ユーザーは思うように増えない。
そうしたことも当然考えた上だろう、三木谷氏は、会見の後半でエリア状況についても言及した。
2021年1月現在で73.5%の人口カバー率を、2カ月後の2021年3月末には80%に、さらに2021年夏頃には一気に96%まで引き上げる見通しを発表した。
これは楽天の当初計画の「5年前倒し」にあたる。
猛烈なスピードアップが可能になった理由を、三木谷氏は4つのポイントであげた。
- 他社が基地局拡大をしていた時代は目視でアンテナ用地を開拓していたが、楽天はデータをみながら展開している
- ソフトウェアでネットワークを構築するため、設定・設置する機械の数が圧倒的に少ない
- 設置時の設定について、オートメーション化を進めている
- 楽天の営業力を使い、社員を動員してビルオーナーの地主開拓などをしている
撮影:伊藤有
質疑のなかで、三木谷氏は「(96%が)実現すれば」という仮定表現を使って説明していたことから、かなり急ピッチの拡大だという認識は楽天側にもあると思われる。
とはいえ、実際に地主開拓・アンテナ設備設置にあたる現場にとって、トップの三木谷氏から「夏頃には一気に96%」との発言があったことで、極めて高い期待を寄せられた、もっと言えば必達目標として伝わったのではないか。
大手3社よりさらに安価なプラン提供となるため、楽天モバイルは当初想定した損益分岐点(=利益創出のために獲得すべき会員人数)より、さらに多くのユーザーを集めなければいけないことになる。
損益分岐の変化と影響について聞かれた三木谷氏はこう答えている。
「損益分岐、それは変わります。ただ、獲得コストが下がるし、それから解約率が下がるんじゃないかと思う。(そうしたことを踏まえると)黒字化の“タイミング(時期)”は変わらないのではないか」
三木谷氏の期待値をトレースしていくには、「夏頃96%」の人口カバー率、会員増加施策、さまざまなものを同時に動かしていかなければならない。
どれが欠けてもいけない楽天モバイルの戦いは、2021年も続く。
(文・伊藤有)