トランプ氏は去ったものの、米中貿易戦争の行く先にまだまだ不透明感があるなか、ファーウェイ(Huawei)はアメリカでの事業拡大に向けて一歩を踏み出した。吉と出るか、凶と出るか……。
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- 中国のファーウェイ(Huawei、華為技術)が、アメリカでの事業拡大に向けて広告世界最大手のWPPグループを起用する。
- WPPにとってはポリティカル(政治的)あるいはレピュテーショナル(信用・ブランド価値低下)リスクを負うことになる。
- トランプ前大統領は米中貿易戦争でファーウェイを締め出しのターゲットに据えたが、バイデン新大統領は禁輸措置を引き継ぐかどうか明言していない。
中国の通信機器大手ファーウェイは、アメリカ市場での事業拡大に向けてソーシャルメディア戦略を強化するため、広告世界最大手WPPグループのデジタルエージェンシーAKQAのクリエイティブチーム「アドラボ(Adlab)」を起用した。
海外の企業や団体と協業するアメリカ企業に適用される「外国代理人登録法(FARA)」に基づき、AKQAが1月25日に提出した登録書類によって明らかになった。
ファーウェイは現在、トランプ前政権が発動した制裁措置により、アメリカ市場から排除されている状態で、今回のファーウェイとの契約は、WPPに政治的あるいは信用・ブランド低下のリスクをもたらす可能性がある。
ファーウェイは米中貿易戦争の渦中にいる。
同社製品に対するアメリカの制裁措置を受け、ファーウェイのスマートフォン出荷台数は2020年10〜12月期、国内外向けとも4割以上減少(ロイター、2021年1月29日付)。代替策として、同社は近ごろ、ノートパソコンやスマートウォッチなどコンシューマー向け製品の販売に乗り出している。
ファーウェイは禁輸措置などによるスマートフォン事業の不調を受け、スマートウォッチなどコンシューマー向け製品に力を入れ始めた。
Screenshot of Huawei for consumer website
ファーウェイと取り引きするリスクは続く
バイデン新大統領はトランプ政権の禁輸措置を踏襲・延長するのか明言していない。
バイデン新大統領から時期商務長官に指名されたロードアイランド州のジーナ・レモンド州知事は、1月26日の指名承認に関する公聴会で「中国の干渉からアメリカのネットワークを守る」と発言したが、禁輸措置を継続するとまでは言わなかった。
WPPグループは過去にも欧米でファーウェイと仕事をしていて、これが初めてではない。アメリカの政治専門メディア・ポリティコによれば、2020年上半期、ファーウェイはWPPグループのメディアエージェンシー・ウェーブメーカー(Wavemaker)と年間3億5000万ドル(約367億円)の予算で契約、65市場でスマホのプロモーションを委託している。
また、WPPグループのPR会社バーソン・コーン&ウルフ(BCW)も、2020年下半期まで数年にわたってアメリカでのPR・広報業務を担当した。
ただ、ファーウェイとのビジネスがリスキーだと考える企業は多い。PR大手のエデルマンは上記のBCWとともに、2018年下半期に7桁(100万ドル以上)の契約を結ぶチャンスを得たが、契約に調印することなく手を引く道を選んだ。
共和党のベン・サッセ上院議員(ネブラスカ州)は、前述の商務長官指名承認の公聴会で、ファーウェイを「テック分野における中国共産党のあやつり人形」と言い放っている。
今回ファーウェイと契約を締結したWPPグループのデジタルエージェンシーAKQAは、クリエイティブ専門のアワード「Creativepool Annual」デ、エージェンシー・オブ・ザ・イヤーに輝いている。
Screenshot of Creativepool website
なお、今回の(WPPグループ)AKQAとの契約には、「ファーウェイは独立した民間資本の企業であり、中国政府の監督下にないことはもちろん、他企業の子会社だったり、支配下にあったりの関係もない」との記載がある。
AKQAにコメントを求めたが返答はなかった。
[原文:Huawei hires ad giant WPP to promote its brand in the US as it tries to overcome Trump ban]
(翻訳・編集:川村力)