電気自動車(EV)世界最大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。
Britta Pedersen-Pool/Getty Images
- イーロン・マスク氏はツイッターの扱いについても圧倒的な才能を持っている。
- 最近も、マスク氏得意の「ふた言(単語2つ)ツイート」で株価の急上昇が起きている。ゲームストップやシグナル・アドバンスがその例だ。
- マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務める電気自動車大手テスラは、マスク氏がツイッターのプロフィールで言及したビットコインを15億ドル購入していたことが8日、明らかになった。
- 文字通り「市場を動かした」マスク氏のツイートを精査してみよう。
世界で2番目の大富豪、イーロン・マスク氏はツイッターの扱いについても圧倒的な才能を持っている。
暗号化メッセージアプリ「シグナル(Signal)」についてマスク氏がふた言ツイートしたところ、投資家の勘違いからか、まったく無関係の「シグナルアドバンス(Signal Advance)」社の株価がおよそ7000%上昇するという事態が起きた。
また、1月29日金曜日の午前3時(米東部時間)、マスク氏がツイッターのプロフィールを編集して「#bitcoin」に書き換えたところ、暗号通貨ビットコインは3万3000ドルから一時3万8000ドルまで値が跳ね上がった。
ビットコインについては、意味ありげなプロフィール編集にとどまらなかった。2月8日、マスク氏がCEOを務める米電気自動車大手テスラ(Tesla)が米証券取引委員会(SEC)に提出した書類から、同社が15億ドル(約1600億円)分のビットコインを購入したことが明らかに。直後に相場は4万4000ドル超まで跳ね上がり、過去最高を更新した。
やたらとたくさんツイートするせいで、深刻なトラブルに巻き込まれたこともある。
2018年の夏から秋にかけて、マスク氏はツイッターに、テスラ株式の非公開化を検討しており、そのための「買い取り資金を確保した」などと投稿。のちに資金確保交渉などの事実はなかったことが判明し、マスク氏とテスラは合計2000万ドル(約21億円)の罰金を支払う羽目になった。
しかし、マスク氏はその後、(株式非公開化に関する)一連の投稿には「価値があった」とツイートするなど、ツイッターユーザーとしての勢いは衰えていない。
最近も、暗号通貨「ドージコイン(Dogecoin)」からゲーム販売「ゲームストップ(GameStop)」まで、さまざまな分野の投資家がマスクのツイートからそれぞれに恩恵を受けている。
【図表】マスク氏のツイート投稿後、24時間の投資資産価値の変化。上から、暗号資産ドージコイン(Dogecoin)、シグナルアドバンス(Signal Advance)社、ゲームストップ(GameStop)社、暗号資産ビットコイン(Bitcoin)。
Insider
相関関係があるからと言って、必ずしも因果関係にあるとは言えないが、Insiderが作成した上の【図表】を見ると、マスク氏のナイスタイミングとも言える4件のツイートと、ツイートに関係する企業の株価上昇がいかにぴたりと合致するかがわかる。
ドージコイン(Dogecoin)
暗号通貨「ドージコイン(Dogecoin)」の紹介動画。
QuantumDesignsHD YouTube Official Channel
マスク氏は3語のツイート「One word: Doge(ひと言、ドージだ)」を12月20日の午前4時30分(米東部時間)に投稿した。
ドージコインは2013年にIBMとアドビ(Adobe)のエンジニアのジョークとして生まれ、オンライン掲示板「レディット(Reddit)」を通じて広まった暗号通貨で、マスク氏のツイートの翌日には取引価格が17.95%上昇。1月28日には、雑誌『ドーグ(Dogue)』の画像も投稿している。
1月31日に参加した招待制音声SNS「クラブハウス」でマスク氏は、ドージコインに関する自らのツイートは「単なるジョークだよ」と語っている。しかし、市場は冗談とはとらえていない。
シグナル(Signal)/シグナルアドバンス(-Advance)
暗号化メッセージアプリ「シグナル(Signal)」のサービス紹介サイト。マスク氏のツイートから多大なる恩恵を受けた。
Screenshot of Signal website
1月前半、チャットアプリ「ワッツアップ(WhatsApp)」がユーザーに対し、親会社フェイスブックとその子会社によるデータ収集・共有に関する新たなプライバシーポリシーに同意するよう求めると、マスク氏は反発して、暗号化メッセージアプリ「シグナル(Signal)」への切り替えを促すツイートを投稿した。
内容はたった2語「Use Signal(シグナルを使え)」。ツイートの直後にシグナルの株価は4200%(!)上昇。
そして思いがけない恩恵をこうむったのが、小見出しにある「シグナルアドバンス」。1株1ドル未満のいわゆる「ボロ株」だったのが、マスク氏のツイートの翌日なんと7000%(!)の急上昇を見せた。
マスク氏のツイートで想定外の恩恵を受けた「シグナルアドバンス(Signal Advance)」の株価推移。現実とは思えない値動きを表現している。
Markets Insider
ゲームストップ(GameStop)
ゲームストップ(GameStop)の株価推移。本文にあるように、常識では考えられない値動きが続く。
Markets Insider
ゲームストップ(GameStop)の株価は1月26日、通常取引終了後の時間外取引で60%以上も上昇した。マスク氏がオンライン掲示板「レディット」のフォーラム「ウオールストリートベッツ(wallstreetbets)」へのリンクとともに、「ゲームストンク!!(Gamestonk!!)」と謎のツイートを放ったあとだった。
さらに、翌27日の取引時間で、ゲームストップ株は348%の上昇を記録した。
マスク氏は1月31日の「クラブハウス」イベントに参加。ネット証券「ロビンフッド(Robinhood)」のブラッド・テネフCEOに公開質問し、ゲームストップ株の新規購入を制限した理由をたずねた(=ヘッジファンドの損失抑制に加担したのとの疑惑を追及した)ことで一躍、レディットを舞台とするショートスクイーズ(踏み上げ)相場の重要人物になっている。
ビットコイン(Bitcoin)
マスク氏のツイッターアカウント。プロフィールは「#bitcoin」のまま(2021年2月3日現在)。
Screenshot of Twitter (@Elon Musk)
マスク氏は1月29日(米東部時間)の早朝、ツイッターのプロフィールをハッシュタグ「#bitcoin」だけのシンプルなものに変更。午前3時22分に「In retrospect, it was inevitable.(ふり返れば、あれは避けられないことだった)」とツイート。
その後、ビットコインの価格は午前8時に3万7700ドルまで上昇。5時間で17%という値上がりを記録したが、1日で4%上昇の水準まで戻った。
株価急上昇は一瞬のできごとだったが、その後1月31日夕方のクラブハウスで「Bitcoin is a good thing.(ビットコインは良いものだ)」とマスク氏が言及すると、翌日には再び3万8000ドルへと急上昇した。
[原文:One chart shows how Elon Musk can create a huge amount of wealth with just his Twitter]
(翻訳・編集:川村力)