電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。ツイート1本で世界の投資資産価値が変化するほどの影響力を持つ。
REUTERS/Joe Skipper
- テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が、招待制音声SNS「クラブハウス(Clubhouse)」で話すとツイートしたところ、同アプリの招待件数が一気に跳ね上がった。
- クラブハウスユーザーのなかには、これをひともうけするチャンスと考える者もいる。
- ツイッター(Twitter)やイーベイ(eBay)、クレイグスリスト(Craigslist)などを介した闇市場では、招待枠が15ドルから100ドルで取り引きされている。
イーロン・マスク氏の思いつき程度のツイートが、世間の資産価格を左右することもある。
1月31日(現地時間)、彼が放ったツイートは間違いなく新たな市場を生み出した。いま話題の招待制音声SNS「クラブハウス」にマスク氏がトーク参加する予定を投稿すると、(1人あたり当初2枠に限定された)招待枠のニーズが跳ね上がった。
こうなると、ひともうけするチャンスと考える人も出てくるものだ。
無料のはずの招待枠をめぐる闇取引市場が突如として出現し、ツイッターやイーベイ、クレイグスリストの投稿には、1枠あたり15ドル、50ドル、なかには100ドル(約1万500円)で譲渡しようという人も見かけた。
この話題のアプリでは、音声ライブ配信を行う仮想空間「ルーム」が生成され、ユーザーはリアルタイムの会話を聴くことができる。文字起こしや録音は不可のため、聴き逃した場合でも、配信が終了したあとはツイッターで感想や反応の投稿を読んで満足するしかない。
マスク氏は1月31日、クラブハウスのルーム内でネット証券「ロビンフッド(Robinhood)」のブラッド・テネフCEOにインタビュー(※)したが、ほかのセレブも似たようなことをやっている。
イーロン・マスク氏が参加した、1月31日のクラブハウス活用イベント。アプリでは基本、ルーム内の会話書き起こし・録音等は禁じられている。
Tesla Dosage YouTube Channel
テレビ司会者のオプラ・ウィンフリーや俳優のジャレッド・レトといったセレブ、ほかにもシリコンバレーの大物らがクラブハウスでの会話に参加している。
※ロビンフッドのテネフCEOインタビュー……ゲーム銘柄に空売りを仕掛けたヘッジファンドに対し、個人投資家がSNSで連携して買い支え、株価を引き上げて大きな損失を与えた一連の相場で、ロビンフッドは取引制限を実施。(関係の深い)ヘッジファンドの損失に歯止めをかけたと疑われた。マスク氏はクラブハウスでの対談で、テネフCEOに疑惑の真相を問い詰めている。
クラブハウスはローンチ1年足らずにもかかわらず、週間アクティブユーザーが200万人超、最新の評価額は14億ドル(約1500億円)。
現在のアプリはベータ版で、完全な一般公開はまだしていない。しかし、すべての登録ユーザーに2人分の招待枠が用意されるため、他の誰かから招待を受ければ参加できる。また、ウェイティングリストに登録して公式アカウントからの招待を待つこともできる。
招待枠の「販売経験者」に話を聞く
試しに、ツイッターを使って50ドルで招待枠を売りに出していたデヴォーン・ジョーンズ氏に聞いてみたところ、お金を出してまで買おうという人はあまりおらず、興味を持ってくれた数人も希望する価格が安すぎて折り合わなかったそうだ。
また、彼が招待枠を売ろうと思い立ったのは、ツイッターで同じように売ろうとしている人を見たのがきっかけだという。
「売り買いできる場所(マーケット)があるなら、ひとまず試してみない手はないよね?」(ジョーンズ氏)
別のユーザー、ダニヤル・シェバーズ氏は2つの招待枠を各15ドルで売りさばいた。
彼が言うには、公式アカウントからにせよ知人友人からにせよ、誰かから招待してもらうのにかかる手間や時間を考えれば、それをお金で買うのは不当な行為とまでは言えないとのこと。
「招待してもらうのはとても骨の折れる作業だったよ。DMを送ったり、コメント欄でお願いしてみたり、4〜5時間はかかったな」
注目すべき点は、誰かを招待すると、その人たちはあなたの名前に紐づけられることだ。
クラブハウスのユーザープロフィール画面には、その人が誰から招待を受けたのかが表示される。ある人がコミュニティのガイドラインに違反したり、不適切な行為に及んだりした場合、その人を招待した人も周囲から注目を浴びることになる。
いずれにしても、招待枠の空きを現金化できる時間はそう長くないだろう。
クラブハウスのポール・デイビソン共同創業者兼CEOは、CNBCテレビの取材に対し、「できるだけ早く、すべての人にサービスを開放できるよう取り組んでいる」と発言している。
逆に言えば、それまでの間は短くとも、クラブハウスの(セレブの音声をはじめとする)コンテンツへのアクセス権は貴重な価値を保ち続けるとの見方もある。
「何と言っても、素晴らしい才能の持ち主と1時間接することで得られる知見は、自力で10年かけて学ぶことよりずっと大きな価値を持つケースがしばしばあるからね」(前出のシェバーズ氏)
[原文:Elon Musk inspired a black market for invites to audio app Clubhouse]
(翻訳・編集:川村力)