『水曜どうでしょう』と『ゆるキャン△』で学ぶ、人間関係で一番大切なこと。藤村D・嬉野Dに聞く

水曜どうでしょうのディレクター陣は「『どうでしょう』と『ゆるキャン△』には通じるところがある」と語る。

水曜どうでしょうのディレクター陣は「『どうでしょう』と『ゆるキャン△』には通じるところがある」と語る。

上=HTB提供、下=撮影:今村拓馬

HTB(北海道テレビ)の人気番組『水曜どうでしょう』の藤村忠寿&嬉野雅道の両ディレクター(D)が、現在放送中のアニメ『ゆるキャン△ SEASON2』にゲスト声優として出演した。

北海道の地方局が生み出した伝説的バラエティ番組と、キャンプを楽しむ女子高生の日常を描いたアニメ作品……。意外すぎる組み合わせだが、2019年のイベントで発売されたコラボグッズは完売する人気ぶりだった。

なぜ異例のコラボが生まれ、ビジネス的にも成功したのか。藤村Dと嬉野Dは「『どうでしょう』と『ゆるキャン△』には通じるものがある」と語る。時代の風を捉えた、両作品の共通点を2人に聞いた。

藤村D・嬉野Dと『ゆるキャン△』の出会いは……

インタビューに応じる嬉野雅道カメラ担当ディレクター、藤村忠寿ディレクター。

インタビューに応じる嬉野雅道カメラ担当ディレクター、藤村忠寿ディレクター。

撮影:今村拓馬

——『水曜どうでしょう』と『ゆるキャン△』は面白い組み合わせですよね。どんなきっかけでつながりができたんですか。

藤村:もともと『ゆるキャン△』原作者のあfろ先生が『どうでしょう』のファンでいてくれたんだよね。

それがご縁で、2019年に新宿であfろ先生とアニメ『ゆるキャン△』の堀田将市プロデューサーとかと飲んだんだよね。その時に何か一緒にコラボできたらいいよねって話があってさ。

ちょうどその頃、俺たちも『水曜どうでしょう祭2019』っていうイベントを計画している最中だった。

そういえば、あfろ先生に会う前は俺らも『ゆるキャン△』についてあまりよく知らなかったのよ。

でも、せっかくお会いするからと原作を読んだり、アニメ1作目のDVDとか見たんだよね。

俺自身はそこまでアニメとか詳しくないんだけどさ。ただ、『ゆるキャン△』って、描かれているのは登場人物たちの何気ない日常なんだけど、読者や視聴者を“ほんわか”とさせてくれるなと思って。よかったなぁ。

嬉野:そうそう。彼女たちはあくまで学校に通って、キャンプをやって、日常を過ごしている。

だから、作品そのものにドラマチックな盛り上がりとかはないんだよ。でもさ、その「日常」の中で、ちょっと美味しいものを食べたり、バイトして欲しかったキャンプ用品を買ったりして、各々の人生を楽しんでいる。そこがいい。

『水曜どうでしょう』&『ゆるキャン△』の共通点とは?

アフレコ風景。

アフレコ風景。

撮影:今村拓馬

—— 藤村さんもキャンプが好きですよね。

藤村:好きだよ。それもあって『ゆるキャン△』を見て、自分が高校生だった時、一番最初にアウトドアを始めた頃を思い出したな。

お金がなかったから豪華なキャンプはなかなかできない。だから身の回りのものを使ったり、ライトを買うためにバイトしたりね。

今は社会人の間でもアウトドアが流行っているでしょ。良いキャンプ用品を揃えたりして、道具を自慢し合ったり、それはそれで楽しいと思う。

でもさ、それとは違った「何にもないところからキャンプを始める」という楽しさもあるんだよね。

『ゆるキャン△』の中には、僕らが若い頃に抱いた「キャンプがしたい!」という衝動や、「キャンプって楽しそう!」と思わせるものが見えたんだよ。

「これはいいわぁ……」って思ったよね。ずっと見ていられる。「あぁ、『ゆるキャン△』って、こういうものなんだ」って。

そこには「『水曜どうでしょう』にも相通ずるものがある」って思ったんだよね。

藤村D、嬉野Dのアフレコ風景。

YouTube/藤やんうれしーの水曜どうでそうTV

—— なるほど。ずっと見ていたいと思わせてくれる「日常の尊さ」は、『水曜どうでしょう』にも通じますね。

藤村:やっぱり、そう思うよね。

嬉野:僕も藤村くんに言われて『ゆるキャン△』という作品があるんだと聞いて、初めて知ったんだけど、実際に見て良いなあって思ったよね。

登場人物がお互いに戦ったり、大きな葛藤をするわけではないし、仲間同士でいざこざを起こすわけでもない。

—— 宿を確保できず、強制的に道端でキャンプするようなこともないですものね…。

嬉野:そうだよね(笑)。登場人物のコミュニケーションの面倒くささや、バトルとか全くないのがいい。

彼女たちの日常を描く『ゆるキャン△』の世界観というのが、今を生きる人たちにとって、とても心地良いのだと思う。

葛藤を抱える人間の姿って、現実世界の学校や会社にいっぱいあるわけだし……。それをわざわざアニメで見なくても……と思う人がいても不思議ではないよね。

逆を言えば、僕らが子どもだった40〜50年前、高度経済成長時代には『ゆるキャン△』のような作品は生まれなかったかもしれないし、あったとしてもエンターテインメントにはならなかったかもしれない。

当時は、漫画やアニメで人間の葛藤を描くことにも大きな意味があったと思う。でも、今は時代が逆なんだろうな。

撮影:今村拓馬

藤村:『どうでしょう』も葛藤はないけど、“いさかい”はあるよな(笑)。

嬉野:人のパンを勝手に食ったとかで揉めることはあるけど、そんな悪い感じはしないよね。おそらく「どうでしょう」も安心して見てもらえている。

でも、ああいう罵り合いを安心して見ていられるっていうのもおかしな話だよね(笑)。

「志摩リン」=「ミスター」説? 互いの「違い」を認めることの価値

撮影:ERIKO KAJI

—— それは「どうでしょう軍団」4人の信頼関係が前提としてありますよね。

藤村:それはあるよね。我々4人もそうだけど、『ゆるキャン△』のなでしこやリン、野クルの間にも信頼関係があるんだと思う。

もちろん「仲良し」というのを、自分たちで必要以上に自覚していないというのもポイントだろうな。

なにも「私たち仲良しだよね!」と大声で言っているわけではない。ほら、そういうのって、見る方もなんとなく気が引けるじゃない…?

みんなでワイワイやるのも楽しいけど、それが唯一の価値じゃない。ひとりで行くキャンプも楽しさも認めている。

そういう「違い」を尊重し、認めているところに価値があるんだと思うんだよね。

ほら、ソロキャンが好きな子って、まさにミスターじゃない?旅をしていても、あの人どんどんひとりで歩いていっちゃうし。

—— 志摩リンはミスターだった…?

藤村:あはははは(笑)。みんなが笑っていて、ひとりだけ笑っていないシーンって『水曜どうでしょう』にもあるでしょ。

『ゆるキャン△』もそうなんだよな。グループの中に異分子っぽい子もいるんだけど、だからといって軋轢はないよね。人との違いを認め合うというか。

『ゆるキャン△ SEASON2』ティザービジュアル。キャッチコピーは「さみしいも、たのしい。」 「たのしいも、さみしい。」

『ゆるキャン△ SEASON2』ティザービジュアル。キャッチコピーは「さみしいも、たのしい。」 「たのしいも、さみしい。」

提供:(C)あfろ・芳文社/野外活動委員会

嬉野:そうそう。みんなで「あいつ、おかしいからいじめようぜ」ってならないのが良い。

藤村:それで何となくみんな仲良くやっている。見ていて安心できる。「みんなで仲良くしなければいけない」っていう前提がない世界っていいよね。

嬉野:そうだよね。いまの世の中は「みんな仲良くしなければいけない」という刷り込みがあるような気がする。それって、なかなか厄介じゃないかな。

『ゆるキャン△』の5人も、なにも傑物のような能力の高い人たちが集まっているわけではない。そういう気安さもあるんだろうな。

彼女たちの日常を見ていると、なんだか時間的にも空間的にも『ゆるキャン△』の世界とつながっている感じがする。

自分でも、そこに入っていけそうなという、非常にいい具合に、社会に対して窓を開けてくれているような、ね。

ひとりでテント持って、バイクや車で出かければ、キャンプはできるわけでしょ。そういうことを楽しめる世界もあると伝えることは、非常に今の時代に必要なんだと思う。

だからこうやって、一つのエンターテインメント作品になっているんだろうなと。『ゆるキャン△』には、「今を生きている」ことへの居心地の良さがある。

コラボ成功の秘訣は、打算なき「愛」をビジネスにつなげること

撮影:今村拓馬

—— 互いに通じるところもあり、それが『水曜どうでしょう祭2019』でのコラボにつながった。ファンにはお馴染みの「平岸高台公園」を舞台に『ゆるキャン△』の登場人物が描かれたグッズが完売するなど大人気でした。

藤村:昔から安易なコラボはやらなかったけど『ゆるキャン△』とのコラボはお互いに作品をリスペクトできているよね。

あfろ先生が『水曜どうでしょう』を愛してくれているし、お互いの作品の中にも通じる哲学みたいなものがあるなって思うな。

そこには何の打算もないんだよ。お互いに楽しいことをやりたい。それを互いのファンが見て「ああ面白いな。楽しいな」って思ってもらえれば、それが自然とビジネスにもつながった。

そういうコラボだから非常にうまくいったと思うんだよね。

『ゆるキャン△ SEASON2』5話には『水曜どうでしょう』の名企画「釣りバカ対決」を彷彿とさせるシーンも。

『ゆるキャン△ SEASON2』5話には『水曜どうでしょう』の名企画「釣りバカ対決」を彷彿とさせるシーンも。

© あfろ・芳文社/野外活動委員会

—— そして今回、お二人のアニメ出演にもつながった。音響監督も「尺バッチリでした」と非常に褒めていらっしゃいました。

藤村:そうかい? 尺がぴったりなところしか褒めるところがなかったんじゃないか?(笑)

嬉野:あの長さなら、尺にハマらないほうが難しくないか?(笑)

撮影:今村拓馬

—— そんなことないと思いますよ(笑)。でも、あfろ先生の「どうでしょう愛」があり、それがお二人を『ゆるキャン△』の世界につなげた。互いの「リスペクト」「好き」が、新たなビジネスや作品づくりにつながりました。やはり、すべては「愛」からはじまる。

藤村:そうそう。それがないとダメでしょう。

嬉野:やっぱり「愛」が大事よ。

藤村:そして「愛」だけでなく、それが「ビジネス」としても回ることが大切。

嬉野:愛だけでは生きていけないからね。

藤村:「お金」がないと、コンテンツは続けていけないからね。それはビジネスだから。

でも「お金ありき」でやっては絶対にいけない。

嬉野:向こうから求めてくるだけの「愛」は厳しいよね。だからコラボのお話があっても、何でもOKというわけにはいかない。

藤村:ビジネスとして成立するからこそ、お互いにケレン味なく「愛しています」と言えると思うんだ。

「愛」の後ろに「お金」が見える時こそ「愛」を打算なく伝えることが大事。それがコラボをする上で大切なことだと思うんだ。

『水曜どうでしょう』とコラボした『ゆるキャン△』ミュージックビデオ。「1/6の夢旅人 2002ver.」にのせて名場面を紹介。

YouTube/Anime Channel by フリュー, ©あfろ・芳文社/野外活動委員会

(取材・構成:吉川慧

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