グーグルの2020年第4四半期(10〜12月)決算は、YouTube広告事業の躍進が目立った。
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- グーグル傘下YouTubeの2020年第4四半期の広告収入は前年同期比46%増、およそ70億ドルに達した。
- アナリスト2人の分析によると、YouTubeはテレビ向けの広告予算を吸い上げており、同社にとって明るい材料だという。
グーグルは2月2日(現地時間)に2020年第4四半期(10〜12月)決算を発表。コロナ禍で急成長中のクラウドビジネスに注目が集まった。同社がセグメント別でクラウド事業の営業利益を公開するのは今回が初めて。
結論から言うと、グーグルクラウドは期待通りの順調な(売上高の)成長を遂げているものの、収支としては相変わらずの赤字だった。
一方、アナリストらがマイクロソフトとアマゾンを追撃するグーグルのクラウドビジネス戦略に大騒ぎするかたわらで、傘下の動画配信プラットフォームYouTubeが気を吐いている。
広告主がコロナショックからの回復基調に乗り、アナリストらが長い間待ちわびたポジティブな指標の変化が表れたことから、YouTubeの10〜12月の業績は大幅な伸びを記録。売上高は前年同期比46%増の約70億ドル(約7300億円)。
ブランディング広告とダイレクトレスポンス広告(=購買あるいは購買につながる直接的な反応を狙った広告)がけん引役となった。
調査会社バーンスタインのアナリスト、マーク・シュムリクは、今回のグーグル決算のなかで最も興奮したのはYouTubeの部分だったと強調した。
「アナリストはことごとくクラウド事業の数字に大騒ぎだったけれども、我々バーンスタインとしては、広告というコアビジネスも忘れずにと言いたい」
同社が最も明るい材料と指摘するのは、テレビの広告主がグーグルの動画配信プラットフォームにシフトし始めていることだ。今回の決算発表会では、YouTube上でのブランディング広告展開が増えていることにくり返し言及があった。「それはテレビから流れてきた広告(予算)だ」とシュムリクは語る。
「我々はここ数年、広告主の予算投下先がテレビからシフトすれば、YouTubeには大きな変化が訪れると考えてきたが、これまでは具体的な形にならなかった。ここに来て初めてテレビから予算が流れ込んできていると、確信をもって言える」(マーク・シュムリク)
YouTubeの広告事業は確実に成長を続けている。2020年、同社はテレビ画面でYouTube動画を視聴するユーザー向けのリーチ(=広告の到達率)を向上させるよう、広告販売のアプローチ手法を見直した。
「YouTubeがいまのような成長率を維持できれば、全米700億ドル(約7兆3000億円)規模のテレビ広告市場への扉をこじ開ける糸口も見えてくるだろう」(同)
18〜49歳へのリーチはテレビが束になっても敵わない
YouTubeを傘下に置く、グーグルのスンダル・ピチャイ最高経営責任者(CEO)。
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JMPセキュリティーズのアナリスト、ロナルド・ジョジーも今回の決算発表のポイントは、YouTubeとグーグル検索の広告事業だったと指摘。バーンスタイン同様、YouTubeは従来のテレビ広告からシェアを奪い、ダイレクトレスポンス広告からの利益があがり始めているとした。
「18〜49歳へのリーチについては、もはやテレビネットワークをすべて合計してもYouTubeに及ばない」(ロナルド・ジョジー)
ジョジーの最新レポートによれば、ブランディング広告の成長も第4四半期で著しく加速し、YouTubeは各ブランドにとってもはや「マストバイ(=購入しない選択肢は考えられない)」の存在になりかけているという。
「2021年1月だけでも、YouTubeあるいはYouTube TV(=地上波・ケーブル局の放送をストリーミング配信)をテレビ画面を介して視聴したユーザーは1億人。
最大2300億ドル(約24兆円)とされるアメリカの広告市場のデシタルシフトが加速していることを踏まえれば、そうした複数年にわたる変化から恩恵を得られるという意味で、YouTubeは間違いなく良い位置につけている」(同)
なお、今四半期(10〜12月)のYouTubeの広告事業は、グーグル全体の広告収入460億ドルの15%を占めた。また、中国の「TikTok(ティックトック)」に対抗するとされるショートムービープラットフォーム「ショーツ(Shorts)」の視聴回数は、1日あたり35億回に達している。
(翻訳・編集:川村力)