ヤフー&LINEの“世紀の大合併”目前のソフトバンク決算会見 ── 強気の上方修正の理由と合併に伴う3つの摩擦

ソフトバンク決算

ヤフーや法人事業が大きく売上に貢献したソフトバンク決算。

撮影:小林優多郎

ソフトバンクは2月4日、2020年第3四半期決算を公表した。第3四半期までの売上高は累計3兆8070億円(前年同期比5%増)、純利益は累計4338億(同0.6%減)と、コロナ禍を加味すれば堅調な成績を残した。

決算説明会に登壇した宮内謙社長はこの要因をコロナ禍において、法人事業のテレワーク関連ビジネスの予想を上回る好成績、傘下にあるZホールディングス(以下、ZHD)のeコマースの成長を挙げた。

新旧社長

写真左からソフトバンク現社長の宮内謙氏、4月1日から新社長となる宮川潤一氏。

撮影:小林優多郎

結果、2020年度通期予想の上方修正を発表。売上高は4兆9000億円から5兆1000億円、純利益は4850億円から4900億円とした。

すでに発表になっているが、4月1日に新社長に就任する宮川潤一副社長も改めて会見上で挨拶を行なうなど、コロナ禍でも衰えない同社の勢いをアピールした。

法人事業やeコマースがコロナ禍で大盛況

ソフトバンク 売上比率

ソフトバンクは非通信事業を順調に伸ばしている。

出典:ソフトバンク

宮内氏ならびにソフトバンクの経営陣がこの未曾有のパンデミックの中でも強気な理由は、一言で言えば“コロナ禍で逆に急成長した事業が複数ある”からだ。

実際、宮内氏も会見で「(当初は業績が)新型コロナでマイナスになると厳しく見ていた。(実際は)逆に、デジタル化によってプラスの影響が大きかった」と語っている。

決算会見の中で触れられたこのプラス要因は主に以下の4つだ。

  1. テレワーク需要によりクラウド、IoT、セキュリティソリューションが前年度の倍以上の勢いで成長
  2. ヤフーのeコマース領域(ヤフーショッピングやZOZO、アスクルなど)が成長。ショッピングサービスの売上高は第3四半期までの累計で1兆945億円(前年同期比54%増)。
  3. 個人向け通信領域でも契約数は純増。ahamoなど他社の格安プラン発表後も、学割で新規ユーザーを順調に獲得。
  4. 流通事業において、GIGAスクール構想に関連したソリューションの伸びが顕著。200超の自治体から端末数100万台以上の受注を受けた。

ワイモバイルでiPhone 12提供など、通信事業でも攻勢

ワイモバイル iPhone 12

ワイモバイルで初の5G端末として「iPhone 12」「iPhone 12 mini」を2月下旬以降に発売する。

撮影:小林優多郎

通信事業においては昨今、政府からの圧力もあり各社が従来より安価なプランの提供に注力しており、ソフトバンクもオンライン専用プラン「SoftBank on LINE」を3月に提供予定だ。

直近では楽天が最低基本料金0円の新プランを発表するなど、競争は激化する様相だが、宮内氏は2月1日に発表したワイモバイルの新プランを引き合いに出し「楽天さんの値段にも負けない」「政府からの圧力も、最終的にはいいことだったかも知れない」と余裕を見せた。

さらには、決算説明会同日にワイモバイルでの「iPhone 12」「iPhone 12 mini」の取り扱いについて発表するなど、さらに攻勢をかける意志を見せている。

LINE含め複数の“ギガ級”プラットフォームで法人事業などを加速

宮内氏

ソフトバンク全体で日本最大級の顧客タッチポイントを得ると話す宮内氏。

撮影:小林優多郎

今回の会見が社長としては最後の決算会見となる宮内氏が、ことさら強調していたのは、3月に行われるヤフーとLINEの経営統合だ。

従来、宮内氏はZHDの動向については、ZHD社長の川邊健太郎氏の意向を尊重する姿勢を見せていたが、今回の会見では「NAVERとは意気投合している」「(NAVERと共に)Beyond Korea、Japanで(事業として)具体的なことができるようになる」とかなり踏み込んだ発言を繰り返した。

4月から新社長に就任する宮川氏も「LINEが合流して新しい仲間が増えた。テクノロジーのAIの知見を深めて、AIの業界リーダーになっていく」など、LINEやNAVERのもつ技術やエンジニアについて評価している。

宮川氏

ソフトバンクの技術領域を牽引してきた宮川潤一氏。

撮影:小林優多郎

当然、傘下の子会社の“世紀の大合併”を前にして、順風満帆な様子をアピールする意図もあるだろうが、ソフトバンクが今さらになってこの合併を強調している理由は、直近の業績推移にある。

LINEが傘下に入ることで、ソフトバンクは月間国内アクティブユーザー8600万(2020年10月28日時点)という巨大なプラットフォームを手にすることになる。ソフトバンクの主要回線契約数が3700万(2020年12月時点)、ヤフーの年間ログインユーザー数が8000万(2021年2月3日時点)、PayPayのユーザー数が3500万(2021年1月時点)と合わせて、日本最大級の顧客タッチポイントになると画策している。

このタッチポイントと同社の法人事業などの好調な分野を組み合わせることで、さらなる事業成長を目論んでいるというわけだ。

ヤフーLINE経営統合で予想できる3つの摩擦

新生Zホールディングス

決算会見では、2021年3月に新戦略説明会を開催すると公表した。

撮影:小林優多郎

このソフトバンクが描く最強の布陣に、あえて懸念点を挙げるとしたら、以下の3つの点が思いつく。

  1. 社内カルチャーの異なる2社が、問題なく融合できるのか。
  2. LINEは社会的インフラとも呼べる地位を確立したが、ソフトバンク傘下という“色”がつくことで協業環境などに変化が起きるのではないか。
  3. LINEは2020年第3四半期(2020年9月末)まで赤字決算だが、ソフトバンク全体の業績への影響はどうなるか。

1の企業統合は正直やってみなければわからない。出自もサービスの組み立て方も違う両社の人材が、どう動くかは今後注目すべきだ。

2の問題はすでに表面化している部分もある。例えばNTTドコモは、出前館の協業により2014年5月より提供していた「dデリバリー」を2021年5月1日をもって新規注文受付を終了すると発表している。

NTTドコモはサービス終了の理由を「現在の事業環境に鑑み、経営資源を集中すべく」としているが、出前館は2020年3月にLINE傘下となっており、間接的にソフトバンク傘下のサービスとなったことが、今回の結果につながったという見方をするのが妥当だろう。

dデリバリー

出前館とNTTドコモの協業事業だった「dデリバリー」は5月に終了する。

撮影:小林優多郎

LINEが広告事業として展開する「LINE公式アカウント」には、通信キャリアを含むさまざまなサービスのアカウントが存在するが、こういった分野にも同様の動きが発生しないとは言い切れない。

最後のビジネスの状況について、LINEは2020年12月29日の上場廃止以前に公開している2020年第3四半期決算で、LINE PayやO2O(Online to Offline)、コマース領域を含む戦略事業で154億の営業損失を計上している。

例えば、PayPayもいまだ投資フェイズであるのに違いないが、グループ内で重複する分野で、巨大な損失を出し続けるとは考えずづらい。このあたりをどう整理していくのかは、LINE・ヤフー共に前述のようなたくさんのユーザーを抱えている分、社会への影響が大きい部分だろう。

なお、宮内氏は会見の中で「3月のどこかで新戦略説明会を予定」と話しており、そこで新生Zホールディングスの詳細が明らかになる見通しだ。

(文、撮影・小林優多郎

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