キャンペーンは「女性蔑視発言『女性入る会議は時間かかる』森喜朗会長の処遇の検討および再発防止を求めます」とのもの。1日足らずで数万人の署名が集まっている。
画像:change.org
東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による「女性がたくさんいる会議は時間がかかる」などの発言への批判が広がっている。
森氏は2月4日に会見を開き、発言の撤回と謝罪をしたが、同会見で「日本オリンピック委員会(JOC)の(男性)理事をかなり削って女性の枠を増やすのに苦労したと聞いた」「(女性理事を増やすことに)理事の中でも反対があった」などとも述べ、自ら火に油を注ぐかたちになっている。
そんな中、森氏の処遇検討と、女性蔑視発言の再発防止策を日本政府などに求める署名活動が始まった。賛同者にはプロサッカー選手の下山田志帆さん、ミュージシャンの坂本龍一さんらも名を連ね、キャンペーンはすでに6万人を超える署名が集まっている。
なぜ彼がトップに居座れてしまうのか
Zoomで取材に応じる山本和奈さん(写真左上)、福田和子さん(同左下)、能條桃子さん(同右下)。
画像:Zoomより
キャンペーンの名前は「女性蔑視発言『女性入る会議は時間かかる』森喜朗会長の処遇の検討および再発防止を求めます #ジェンダー平等をレガシーに」。オンライン署名サイトchange.org上で展開している。
森氏の処遇の検討、差別発言に対するゼロトレランスポリシー(一切寛容しないことを示す)の策定を含めた再発防止策の実施などを求めている。
「(森氏の発言は)失言というレベルではないと思います。発言自体もショックでしたが、それ以上に彼がトップという立場に居座れてしまう状況が衝撃で。後で謝罪さえすれば何を言ってもいいわけではない。『また言われちゃったよ』で終わってほしくないんです」
キャンペーン立ち上げに携わった、 大学院生でもあり、避妊の選択肢を増やすなど性の健康の実現に向けて活動する「#なんでないのプロジェクト」代表でもある福田和子さん(25)は、立ち上げの想いについてそう訴える。
森氏の退任を求める文言を入れるかどうかはメンバー内でも話し合ったが、結局「処遇の検討」という文言に落ち着いた。同じく発起人の一人である、一般社団法人Voice Up Japan 代表の山本和奈さん(23)はこう語る。
「問題の根本は、 トップが性差別発言をしても周りがヘラヘラ笑って流してしまう構造にあります。だからこそ個人攻撃の流れにはしたくない。再発防止策を徹底してほしい」
きっかけはClubhouse「みんなどうよ?」
5万人超の署名が集まっているキャンペーンのきっかけは、Clubhouseだった。
画像:取材者提供
署名キャンペーンはひょんなきっかけから始まった。発起人はそれぞれが別々の国で活動している。スウェーデン在住の福田さん、チリ在住の山本さん、そして日本に住み、若者の声を政治に届ける「NO YOUTH NO JAPAN」代表でもある能條桃子さん(22)だ。
きっかけは2月3日深夜(日本時間)、森氏の発言を聞いたスウェーデン留学中の福田さんが、いたたまれなくなって一人で音声アプリ「Clubhouse」上に立ち上げた「ルーム」での会話だ。
「『女性がたくさん入ってる会議は時間がかかる』発言、みんなどうよ?」と題したルームには、常時100人以上の視聴者が接続。「自分も話したい」と参加者が次々と現れ、1時間ほどの予定だったトークは数時間もの長丁場に。
「私の周りの人たちはみんな怒っているのに、きっと森さんや彼の周囲には届いていない。残念だね、とここでお互いに言い合っているだけじゃダメだと」(福田さん)
配信終了後、福田さんはすぐに知人の能條さんに連絡を取ったという。「次のアクションが欲しい。何か動きませんか?」そこに山本さんも合流し、署名を立ち上げることに。
それぞれがジェンダーなどの政治活動に関わっている3人。日本でも1月に入って人気に火がついた「Clubhouse」が連携に役立ったとも話す。お互いの「時差」を活かして、誰かが寝ている時に誰かがプロジェクトを進めておくという体制を作ったことで、キャンペーンはわずか1日で公開までこぎ着けた。
JOCの女性理事は2割
森氏は会見で「面白おかしくしたいから聞いてるんだろ?」などとすごむ場面も。
画像:Getty Images
JOCは全理事のうち、女性の割合を4割以上にすることを目標に掲げているが、現時点では約2割に止まる。
また森氏が名誉会長を務める東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、理事35人中女性は7人。こちらも約2割だ。
森氏は組織委員会の女性理事についても「わきまえておられて、みんな競技団体のご出身で、国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかり」などと述べた。Twtter上ではこれに対し、#わきまえない女 というハッシュタグで森氏に抗議するツイートが数多く拡散している。
キャンペーンでは「東京オリンピック・パラリンピックに関わるすべての組織における、女性理事の割合の最低4割の達成」を求めるほか、組織の管理職のダイバーシティの推進も訴えている。
(文・西山里緒)
【UPDATE】署名の数字を更新しました。(2021/02/05 17:40)