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アルバイトの休業手当を求め、異例の“調停”申し立て。弁護士「非正規雇用の救済につながる可能性」

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調停の申し立てを行った女性。

撮影:横山耕太郎

「正社員には100%の休業手当が払われていたのに、アルバイトには支払われていないのはおかしい」

神奈川県のカフェでアルバイトをしていた30代の女性が、店舗が休業していた2020年4・5月の2カ月分の休業手当を求め、企業との調停申し立てを行った。

調停は、裁判で争うのとは違い、調停委員が労働者と事業主から話を聞き調停案を作成。双方が調停の内容を受託することで問題の解決を図る、行政による紛争解決の仕組み。

女性を支援する労働組合・飲食店ユニオンは「コロナ禍の休業手当をめぐり、調停制度を利用する取り組みは、把握する限りでは初めて」としている。

女性の代理人弁護士は「調停は弁護士に依頼しなくても依頼できる手続き。今回の調停が成立すれば、休業手当を支払われなかった多くのアルバイトの救済につながる可能性がある」と話す。

店舗休業中の手当て求める

申し立てを行ったのは、フジオフードシステム(大阪市)が経営するカフェ「デリス・タルト&カフェ」の神奈川県内の店舗で働いていた30代の女性。

フジオフードシステムは「まいどおおきに食堂」や「串家物語」「つるまる(つるまる饂飩・鶴丸饂飩本舗)」などのチェーン店を全国で展開する企業。

女性は2020年12月、女性が働く店舗がある神奈川労働局に対し、2020年4・5月の未払いの休業手当1万3353円などを求め、調停を申し立てた。

1月29日に調停の申し立てが受理され、今後、調停委員による聞き取りなどが行われる予定という。

フジオフードシステムはBusiness Insider Japanの取材に対し、今後の対応については「担当者が不在で回答できない」としている(2020年2月5日午後5時現在)。

「正社員は兼業禁止、収入源が限定的」という理屈

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女性は記者会見で「アルバイトが支えていた職場なのに」と声を詰まらせた。

撮影:横山耕太郎

「店長1人に対しアルバイト20人でお店を回していた。正社員には休業手当を払って、非正規にはゼロ。声を上げられない人も多いのが現状で、不合理な差別に声をあげるべきだと思い、今回の調停をしています」

2020年2月5日の記者会見に参加した女性は、そう訴えた。

女性はコロナ前まで、週4日、1日5時間の勤務を続け月に約10万円の収入があった。しかし2020年4月の緊急事態宣言により、店舗が入っていた商業施設が休業。5月末まで休業を余儀なくされた。

休業手当については、4月分はすでにシフトが確定していた数日分のみ支給されたが、5月分の手当てはゼロ。一方で、正職員には休業手当が支払われていたという。

6月からは店舗が再開されたものの、コロナ前に比べてシフト(勤務日数)が回復しなかったこともあり、女性は飲食店ユニオンに相談。

飲食店ユニオンでは、4・5月分の未払い分の休業手当などやシフト削減分の補償を求め団体交渉を行ったものの、会社側は「就業施設の休業によって店舗も休業になった。会社の責に帰する休業ではなく、支払い義務はない」と会社側は回答。

正社員への休業金については、「正社員は兼業が禁止されており、収入が会社のみに限定されている」と主張し、女性への休業手当の支払いには同意しなかった。

アルバイトへの休業手当不払い、他の企業でも

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女性の代理人弁護士の川口氏。

撮影:横山耕太郎

今回、調停という手段を選んだ理由について、女性の代理人弁護士・川口智也氏は次のように話す。

「調停は各労働局で行う紛争解決の方法のひとつで、あくまでも行政による解決方法。法的な効力はないものの、裁判に比べ迅速に解決でき、弁護士を雇う必要もなく使いやすい制度でもある」

一方で課題もある。労働者側の調停申し立てに対し、それに応じて調停を利用するかどうかは、企業側の任意に判断に委ねられており、(企業側が応じなければ)そもそも話し合いが前進しない可能性もあるという。

アルバイトへの休業手当の未払いについては、コロナ禍で問題が深刻化している。

飲食店ユニオンでは、ラーメンチェーン「一風堂」のアルバイト社員もシフトカット分について、運営会社に休業手当を求める団体交渉を行うなど、アルバイトへの休業手当支払いを求める活動を続けている。

飲食店ユニオンの原田仁希氏は、「アルバイトに対して休業手当を払わない企業は少なくないのが現状。コロナで非正規雇用への差別が浮き彫りになっている。企業は雇用調整助成金などを活用し、アルバイトに対しても休業手当を支払うべきだ」としている。

(文・横山耕太郎

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