NTTドコモはオンラインで2020年度第3四半期決算説明会を開催した。
出典:NTTドコモ
NTTドコモ(以下、ドコモ)は2月5日、2020年度第3四半期決算を公表した。ドコモはNTTの完全子会社化に伴い、2020年12月25日に上場廃止。その後、子会社化後初の決算会見となった。
第3四半期までの累計売上高は3兆5131億円(前年同期比-0.1%)、営業利益は8218億円(同4.3%増)と、減収増益だ。
ahamo、2度目の仕様変更で既存ユーザーに配慮
ドコモはahamoを3月26日からスタートすると発表した。
出典:NTTドコモ
同日の会見でドコモの井伊基之社長のコメントで特に注目されるのは、新料金プラン「ahamo(アハモ)」についての言及だ。
ドコモは同日にahamoの提供開始時期を3月26日にすると発表。あわせて、現ドコモユーザーがahamoにプラン変更した場合も、ドコモ回線継続利用期間が引き続きカウントされる仕様にするなど、一部内容を更新した。
ahamoは今回、契約継続期間に関する仕様変更が行われた。
撮影:小林優多郎、出典:NTTドコモ
ドコモの回線契約では、回線継続利用期間や「dポイント」の獲得量によって「dポイントクラブ」の会員ランクが変動し、上位ランクでは限定特典がある。こうしたことから、一部の長期契約者などからは、ahamo契約であっても継続できるようにして欲しいという要望があった。
ドコモが日程以外のahamoの仕様を変更したのは、今回が発表から2度目。1度目の変更では、家族でドコモを複数回線契約すると割引となる「ファミリー割引」にahamoもカウントする(ただし、ahamoユーザー自体は割引にはならない)といったものだった。
ahamo効果で12年振りにMNPがプラスに
2020年12月、ahamoを発表する井伊社長。
撮影:小林優多郎
この背景には、ahamoによって既存のドコモユーザーの流出を抑える狙いがある。
井伊社長は会見の中でahamoの先行エントリー数が「100万を超えた」と発言。先行エントリーをしたユーザー属性については「若干ドコモの方が多い」「ほぼ半分が20〜30代」とした。
従来ドコモは他社と比べてサブブランドや中容量のデータプランを提供してこなかった影響もあり、若者向けへの訴求が弱く、解約やMNP転出などにつながっていた。
ahamoは、長年の問題に真っ向から対応したプランと言える。そこにさらに既存ドコモユーザーを意識した仕様を加えて、一層流出抑止の効果を強化したい、というわけだ。
実際、ahamoの提供前にもその効果は表れている。ドコモは第3四半期でMNP転入(他社からドコモへの転入)の件数がMNP転出(ドコモから他社)の件数を上回ったと公表。この結果は実に2009年1月以来の出来事だという。
井伊社長はこの要因をahamo発表によって流出を抑えられたことと、2020年12月〜2021年1月に実施した既存プランに関する実店舗での営業効果の結果としている。
ahamoの収益影響は、「囲い込み」と「d系サービス誘導」でカバー
決済・金融領域を伸ばしているドコモ。
出典:NTTドコモ
一方、既存ユーザーが低価格なahamoに移ることで、ドコモの収益への影響は当然ある。
ただし、他キャリアのサブブランドがそうであるように、“他社に移られるよりマシ”というのが基本的なロジックだ。
また、ドコモは今回の決算で主な増益要因として、コロナ禍において光回線契約や、決済・エンタメ、法人事業を含むスマートライフ領域が好調である点を挙げている。
回線契約の有無を問わない共通ポイントの会員基盤「dポイントクラブ」も会員数8000万の大台を目前としている。回線契約者をahamoで逃がさず、より多くのd系サービスの活用を促すことで、ahamo提供による減収分をカバーすることも一定程度可能だろう。
井伊社長は「力を入れている金融分野のソリューションを伸ばすのが喫緊(の課題)。販売営業、ネットワークの投資コストも削減していく。なるべく早期に減収をプラスにしていきたい」と語っている。
(文・小林優多郎)