渋谷区は、副業・転職マッチングSNSを運営するYOUTRUST上で副業人材の募集を始めた。
YOUTRUSTのHPを編集部キャプチャ
渋谷区は2月から、スタートアップの支援や誘致などを担当する副業人材の募集を始めた。勤務は原則テレワークで、居住地を問わず全国から人材を募集する。
渋谷区は1990年代から「ビットバレー」とも呼ばれ、日本を代表するスタートアップを生んできた。現在もサイバーエージェントやDeNA、GMOインターネットなどが本社を構える。
一方で海外のスタートアップ拠点と比較すると、スタートアップに対する理解が低く、資金の獲得や、物件の借りやすさなどの面で後れをとっているとの指摘もある。
そこで渋谷区では2020年からスタートアップ支援事業を本格化。今回の副業人材の募集は事業拡大の一環で、区の担当者は「熱い思いを持つ方に応募してもらいたい」と話している。
13年住んだサンフランシスコとの違い
「普段もスーツは着ない」と話す田坂克郎さん。取材は土曜日に行われ「普段よりカジュアルな恰好です」と話す。
撮影:横山耕太郎
「多様なバックグラウンドの人が『渋谷に来れば何かある』『起業ができる』と感じるような、誰でも挑戦ができる街にしたいと思っています。渋谷にはそのポテンシャルがある」
渋谷区でベンチャー支援事業を担当する渋谷区産業振興課の田坂克郎さん(41)はそう話す。
田坂さんは専門調査員として、サンフランシスコ日本総領事館に約9年勤務、その後、日本のベンチャー企業の役員や、小松製作所で勤務。区役所の職員としては異色の経歴を持つ。
2016年、渋谷区の長谷部健区長がサンフランシスコを視察した際に知り合い、それが縁となり、2020年1月に渋谷区役所に入庁した。
留学していた学生時代を含めて約13年、サンフランシスコに住んでいた田坂さんは、次々とベンチャーが生まれるシリコンバレーを見続けてきた。
「シリコンバレーではレストランやカフェで隣に座っている人に話しかけると、必ずと言っていいほど起業家だったり、グーグルの社員だったり、投資家だったりするんです。
また街として、起業が失敗に終わった場合でも、挑戦したことを評価する空気があります。そんな場所だから世界中から人材も集まってきます」
スタートアップへの理解が足りない
田坂さんは「渋谷は外国人にとっても人気の街。多くの外国企業を誘致できると考えている」と話す。
GettyImages
田坂さんのミッションは、渋谷の街を、スタートアップの起業や成長を支える場にすること。
「渋谷からは有名なスタートアップがすでにいくつも生まれています。とはいえ、創業しても赤字が続くベンチャーに対して、銀行や不動産会社、投資家の理解が十分とは言えない状況です。
オフィスが借りられない、お金を借りられない現在の環境を変えていく必要がある。街としてスタートアップへの理解を深める必要があります」
渋谷区では「スタートアップ環境整備事業」として、2021年度は約1億円を予算案に計上している。
事業内容は、スタートアップの成長スピードに最適な不動産賃貸の仕組み作りや、スタートアップ向けファンド開設、渋谷区の社会課題解決を試みる実証実験の推進、海外のスタートアップが渋谷区に進出しやすい環境整備など、多岐にわたる。
すでに100人以上から応募
今回の副業人材の募集は、こうした施策を実行するために、区役所の外からも知見を取り込むことが目的だ。
「スタートアップと大企業、行政などをつなぐ役割を担ってもらいたいと思っています。私自身、渋谷区で仕事をして思うのは、民間ではできないいろいろな経験ができること。経産省や内閣府、大企業、スタートアップ、そして海外とも仕事ができる。そんな環境での仕事は珍しい」
副業は原則テレワークで、勤務時間や契約形態、謝礼は面談で決めるという。採用人数は未定だが、2月5日から募集を始め、すでに100人以上から応募があったという(2021年2月8日時点)。
「大企業でバリバリ働いているという方でなくても、新卒でもあっても構いません。2021年度の事業計画では、当初、副業人材の募集は計画していなかったこともあり、高い謝礼は出せないという事情もあります。
それでも、まちづくりや行政の仕組みづくりに関わりたいという熱い思いを持っている方に募集してもらいたいと思っています」
募集している副業人材の概要。応募方法など詳しい情報はYOUTRUSTの専用ページで確認できる
[募集期間]2021年2月5日から2021年2月28日
[業務内容]主な業務内容は以下の4つ。
1.スタートアップ支援事業のコミュニティマネージャー
2.スタートアップ招聘担当 with 海外アクセラレーター
3.海外への日本発スタートアップ プロモート担当
4.スタートアップ実証実験推進担当
[勤務時間]面談のうえ、個別に決定
[勤務地]原則として、登庁を伴わないテレワーク(リモートワーク)での業務
[契約形態]雇用契約以外の形態で、面談の上、個別に決定
[謝礼]面談の上、個別に決定
(文・横山耕太郎)