2020年度第3四半期の連結業績を説明する孫正義氏。好成績が出ているが、会計上の数字に興味はないという。
撮影:小林優多郎
ソフトバンクグループは2月8日、2021年3月期第3四半期(2020年4〜12月)の決算を発表した。
売上高は4兆1380億3800万円(前年同期比6.1%増)、純利益は3兆551億6200万円(同541%増)と絶好調だったが、孫正義会長兼社長は従来通りの発言を繰り返し、「喜ぶものでも悲しむものでもない」との見方を示した。
前年度と比べて純利益は6倍以上に。
出典:ソフトバンクグループ
当日の会見は質疑応答も合わせて約100分間だったが、そのほとんどはソフトバンク・ビジョン・ファンド(以下、SVF)の解説が中心だった。
孫会長は2020年8月の決算会見で、コロナ禍などに備えた資産の現金化を“馬防柵”に例えたが、それを引き合いに出し、今回のSVFによる成果を「(馬防柵は)守りをしっかり固めるための策。一方で、数多くの鉄砲がしかけてある。内側から徹底的に弾を撃ち続ける攻撃のための策でもある」とアピールした。
上場のAIユニコーン=金の卵、今後年間10〜20社に
孫氏はソフトバンクグループを“金の卵の製造業”と称した。
撮影:小林優多郎
孫氏はこれまで、事業会社ではなく投資会社としてのソフトバンクグループを“ガチョウ”に例えてきた。今回の発表会でもガチョウに例えたが、単に卵を産むのではなく、上場などで投資に成功する=金の卵を産む、と表現した。
実際に今回の決算では2020年12月までのSVFの投資成績が公表されたが、SVF1号の上場投資のうち11社中9社、自社資金で運用中のSVF2号の上場投資では2社中2社が利益を出しているという。
SVF1号の上場投資結果(2020年12月末時点)。
撮影:小林優多郎
SVF1号の投資先で、中国の金融機関向けプラットフォーム「OneConnect」とネット保険会社「ZhongAn」のみマイナスとなったが、両社への投資損失はおよそ170億円。他の9社と合わせて考えると、1.1兆円投資して時価が3兆円、結果として約1.9兆円の利益を生み出したことになる。
SVF2号の投資先は現在28社(非開示企業を含む)。加えて、契約直前段階まで進んだ会社(パイプライン)がすでに11社あり、今後もSVFや孫氏が掲げるビジョン“AIによる情報革命”に沿った投資先を増やしていく方針。
ちなみに、「今後どのぐらいの会社が“金の卵”になるのか?」という取材陣からの質問に対し、孫氏は自信たっぷりに「10、20社が毎年出てもおかしくない」とした。
PayPayを前例に、ユニコーンを日本にも
SVFの投資先は1号と2号、ラテンアメリカ・ファンドを含めると164社にものぼる。
撮影:小林優多郎
孫氏はグループシナジーについても少し触れた。SVFで投資したユニコーンのうち、日本に最適と判断したものを、通信事業を営む子会社のソフトバンクやヤフーを受け皿に、日本に上陸させるというものだ。
そのような形で展開されているサービスや企業はすでにあるが、孫氏がピックアップしたのがスマホ決済サービス「PayPay」だ。
PayPayはソフトバンクとヤフーの合弁会社だが、その本質となるテクノロジーはSVFの投資先であるインドの「Paytm」が担っている。さらに孫氏は「(Paytmの)根っこは(ソフトバンクグループ投資先のアリババ子会社)Alipayから来ている」と話した。
SVF投資先の日本進出の受け皿となるのがソフトバンクでありヤフーであり、今後そこにLINEも絡んでくる。
撮影:小林優多郎
「(SVFの累計投資先)160社以上のなかに、20〜30社は適した会社がある。続々とAIのユニコーンが進出してくる」(孫氏)とし、4月1日に新社長体制となるソフトバンク、そしてヤフーとLINEの経営統合が3月に行われるZホールディングスの経営陣に期待を寄せた。
なお、孫氏自らが進行を執り行う質疑応答の最後に、「ソフトバンクグループの非上場化について考えを聞きたい」という質問に対しては、それまでの雄弁具合から打って変わって一言「ノーコメントです」と言い放ち、決算説明会の終了を宣言した。
(文、撮影・小林優多郎)