コロナ前から「週5で晩ご飯テイクアウト」一家の“食”に起きたこと

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食のあり方が大きく変わった2020年、2021年。高級フレンチ「ジョエル・ロブション」もテイクアウトを始めた。2人用の「ガストロノミーグルメボックス」は 6万5000円(写真はタイのジョエル・ロブション)。

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2019年のとある昼、学生は食堂で談笑しながら昼食をとっていた。2019年のとある夜、家族は食卓を取り囲んで、今日あったことを報告しあっていた。2019年のとある休日、旧友たちはカフェに集まって、かつての思い出話に花を咲かせていた。

そんな日々のさなか「週5で晩ご飯テイクアウトサービスを使い始めて1ヶ月経った」と題して、多忙な平日は一切の料理をせず、テイクアウトで食事をすることにした我が家のライフスタイルを記事にした。

読者からは「週に数回なら真似をしたい」「いや手料理こそ家庭団らんの要だ」など、賛否両論あった記事だが、さて、実際の2020年はというと——当時、誰も予想しなかった状況を迎えている。

2度にわたる緊急事態宣言による、在宅勤務・在宅学習の長期化。加速したリモート化は単なる生活スタイルに留まらず、多くの人の価値観を根本から変えてしまったように思える

中でも大きな変化を見せたのは「食事」だ。

多くの店舗は午後8時までの時短営業や、隣席との距離を空けるなど利用制限を設け、気軽に友人と交流することすらはばかられるようになった。冒頭述べたような私たちの食事風景は、この1年ですっかり様変わりしてしまった。

花開き始めた、新たな食事文化

とはいえ「できなくなったこと」だけが2020年の全てではない。

例えば、以前の記事にも登場する「テイクアウト」の概念は、奇しくもこの1年で時の言葉となった。来客数の減少をカバーしようと、多くの飲食店がこぞって持ち帰りメニューを考案したからだ。

なんとあの高級フレンチレストラン「ジョエル・ロブション」までもがテイクアウト事業に乗り出したというのだから、驚きだ。

宅配食品のバリエーションも増えた。大手飲食チェーン店は、その大量ロットの利点を活かして、冷凍食品やミールキットの販売に乗り出した。お店に行かなければ食べられなかった味が、手軽に自宅で味わえるようになった。

配送サービスも充実した。Uber Eats(ウーバーイーツ)などのオンデマンド型配送サービスは急速な需要向上に応えて、対象エリアを大幅に拡大している。

つまり、これまで「個人が自宅で楽しむ食事」を対象としていなかったさまざまな事業者が、新たな生活スタイルに寄り添い始めたのだ。個人的には「食」に対して、非常に興味深いアプローチができた1年だったと感じている。

「手早く栄養をとりたい」手軽な栄養食が輝く、平日の昼食

まず在宅ワーカーの皆様には喫緊の課題であろう、平日の昼食問題。

リモートワーカーの昼食に求められるのは、「手早く調理が完了すること」「最低限の栄養が摂取できること」「飽きない程度のバリエーションがあること」「コストがかさみすぎないこと」だ。

こうした観点から、筆者が愛用しているのが、冷凍食品サービスのnosh(ナッシュ)

簡単に言うと、メニューが豊富な予約型の冷凍弁当で、紙トレイに入った1人分の食事が、定期的に配送されてくる。公式HPによると、管理栄養士により考案された糖質30g ・塩分2.5g以下の栄養価基準で全メニューを提供しているそうで、8食まとめて注文すると1食600円程度と、コストも比較的安価。

電子レンジで10分弱ほど加熱するだけで食べられること、色々と比較した中で味も美味しく、バリエーションが豊富なのが気に入っているポイントだ。

完全食がもはやおいしくなっている

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BASE FOODをまとめ買いする人も。必要な栄養素に配慮されており、価格も安価だ。

撮影:三ツ村崇志

同僚の中には「完全食」のBASE FOODを昼食に利用している人もいる。こちらは調理せず、菓子パンのように袋を開けてそのまま食べるだけで良い。こちらもビタミン&ミネラル、27gのたんぱく質、6〜7gの食物繊維など必要な栄養素に配慮がなされていて、価格も安価だ。

数年前までこうした完全食・冷凍食品は、主に忙しさの文脈で語られがちだった。

料理をする時間のない人や、栄養だけを気にする人を対象にしたもので、筆者も完全食が話題になった頃、いくつかの製品を口にしてみたものの、今とは比べ物にならないほど「美味しくなかった」と記憶している。周囲で愛用していた人もいたが、一般的ではなかった印象だ。

それがここ数年で急速に味が改善され、ついに今、毎日自宅で3食作るのは厳しい、という需要にピタリとフィットした。こうした食事はリモートワークの普及とともに、この先もさまざまな展開を見せていくだろう。

「手間なく美味しいものが食べたい」効率化進む、平日の夕食

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平日料理をやめた筆者の家の食卓。決まった飲食店のテイクアウトは「近所に住む料理が得意な親戚が、食事を作ってくれている」感覚という。

筆者提供

次に、平日の夕食から夜食について。大きく変わったのは食事スタイルというよりも、その購入方法かもしれない。

筆者は冒頭に記載した通り、2020年から「多忙な平日は一切の料理をせず、テイクアウトで食事をするライフスタイル」を選択している。

テイクアウトといっても、毎日決まった飲食店に全ての献立をまかせており、もはや外食をしている感覚はない。あえて説明するなら「近所に住む料理が得意な親戚が、食事を作ってくれている」という感覚が近いかもしれない。

詳細はぜひ以前の記事を読んでいただきたいが、食費が固定されること、野菜や肉のバランス、一定の味が担保されていることで、家計と健康は急速に安定した。

テイクアウトに踏み出す事業者が増えたことで、我が家のようなライフスタイルを選択できる可能性が広がったと言えるだろう

一方、自分で食事を作るプロセスにも、変化の兆しが見え始めている。

イトーヨーカドーなどの大手スーパーは非接触型の受け渡しを開始。配送料さえ支払えば、パソコンもしくはスマートフォン一つで、誰とも会わずに買い物が完了するようになった。アプリには献立機能が付属しており、提案された献立を選択することで、必要な材料をそのまま購入し、配送を依頼することができる。

レシピサイトで知られるクックパッドが提供する「マートステーション」は、マンションなどに設置できる生鮮宅配ボックスを運営。サービスを開始したのはコロナ禍以前だが、この1年で需要が拡大し、導入マンション戸数は2万を超えたという

「外食の代わりに」イベント要素を楽しめる、休日の食事

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筆者提供

最後に、「イベントとしての食事」を紹介しよう。これまで、晴れの日の食事といえば、少し贅沢をした外食、友人とのホームパーティなど、いわゆる非日常を味わえるサービスがその大半を占めていた。

しかしながら、人との交流が制限される今、この非日常は手の届かないものとなった。

我が家においてその穴を埋めたのは、なんと「手をかけた手料理。逆説的ではあるが、平日に食べる普段の食事を全てアウトソースした結果、料理そのものはエンターテイメントの枠に入ってしまったのだ

まるのまま買った牛タンを2日かけてさばいたり、子どもとお菓子作りをしたりと、平日にはできない、少し手間のかかることをするのが毎週末の恒例になっている。

こうした自宅料理を手助けするサービスも充実し始めた。食品宅配サービス「Oisix」は、平素はレストランやホテル向けに出荷されている野菜を使用したミールキットを発売。営業時間短縮・休業により、出荷量が減少している農家の新たな販路としてサービス展開を行うという。

食品以外の業界からアプローチもある。減便が続く航空大手・全日本空輸(ANA)が始めた機内食販売は、「手軽に旅行気分を味わえる!」とSNS上で人気を博している。

販売のたびに数日で売り切れてしまうため、残念ながら筆者はまだ購入できていないのだが、今後恒常的な販売が見込まれるとのことなので、引き続き注視していきたい。

2021年・食の未来予想図

コロナ禍でコミュニケーションの場が失われたこと、そしてもともとそれを支えていた各産業の状況を思えば、ただ楽しむわけにはいかないという意見もあるだろう。

しかしながら現状では、感染拡大防止のために可能な限り努力しながら、それでも新しいライフスタイルを存分に楽しみ、そしてその先にある飲食業・観光業・一次産業を支援していく他ない

「食の未来予想図」は思ってもいなかった理由で塗り変えられたが、きっかけはなんであれ、価値観の大きな変化が起きていることは間違いない。

(文・伊美沙智穂)


伊美沙智穂:1993年生まれ。立教大学卒業、株式会社NTTドコモの法人営業部を経て、現在は株式会社キャスターのUIデザイナー、Business Insider Japanでライターのほか、個人でもWEBメディアを運営するフルリモート・パラレルワーカー。1児の母。新しい仕組みやテクノロジーが大好きで、育児や家事、仕事など、積極的に生活に取り入れている実体験を元に記事を書きます。

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