「価値観が変わった」欧州発イノベーションのトレンドを体感する2日間【2/15-16、TOAワールド・ショーケース2021】

2021年2月15日(月)〜16日(火)の2日間にわたり、欧州・ベルリン発のイノベーションカンファレンス「TOA(Tech Open Air)」の東京版がオンライン開催される。TOAとはどんなイベントなのか?

ベルリンでTOAに3年連続で参加し、結果的に2021年、勤めていた広告会社を辞めて起業したNEWSCAPE INC. 代表取締役CEO、ブランドアクティビストの小西圭介氏は言う。

「TOAは単なるテックカンファレンスではなく、生き方や価値観を変えるほどのインパクトを与えられたイベントです」(小西氏)

では、TOAのいったい何が彼を惹きつけたのか。その魅力を小西氏に解説してもらった。

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「壁を壊す」ベルリンカルチャーから生まれたTOA

ドイツ・ベルリンは欧州におけるイノベーションのハブ都市だ。ダイムラーやBMWグループがスタートアップとともに欧州発のモビリティ革命を牽引し、仮想通貨やブロックチェーンなど、フィンテック(金融技術)を主導するスタートアップも集結している。

都市のGDPの2割以上をメディア・クリエイティブ産業が生み出し、ミレニアル世代以下(〜30代)の人口構成比が約4割、欧州各国やトルコ・中東地域から移民など外国人の構成比が3割以上を占める。ドイツの中でも際立った異質性と多様性が、イノベーションを生み出す原動力となっている。

しかし、私がベルリンでTOAに参加して発見したものは、最新のテックや儲かりそうなスタートアップ企業ではない。人間性重視のイノベーション・カルチャー、資本やテクノロジーを活用して、社会により良い変化をもたらしていくための本質的な思想や議論、そして目的(パーパス)に基づく社会変革を自ら実践する多くの人々であった。

ヒッピーやテクノなどカウンターカルチャーを土壌に持つベルリンでは、個人が生活や社会を良くするために、バンドを組むように起業して、新しいテクノロジーや仕組みを作ったり、自ら声を上げてコミュニティと対話したりしながら、政治や法律すら変えていく。歴史的にも市民が行動して「壁」を壊してきた、この都市のカルチャーを体現するイベントがTOAなのだ。

不確実な時代に、次に起こる社会変化を先取りする

TOAの特徴の一つが、“学際的”であるとよく言われる。いわゆるテック見本市とは異なりセッションが中心で、スピーカーにはスタートアップ創業者から大企業のCEO、社会起業家、哲学者、宇宙飛行士、サイエンティストから王室まで、社会的な肩書きやジャンルを超えた多彩なゲストが世界から集まっている。共通するのは、社会変化をもたらす新しいビジョンを持ち、行動を起こしている人達だ。

扱うテーマも、テクノロジーから衣食住に都市や環境、人間性やアート、ダイバーシティにマインドフルネスなど多岐に渡り、専門領域を横断した視点で、顕在化していないが、次に起こる時代や社会変化を先取りする洞察と、本質的な問題提起で多くの示唆をもたらしてくれる。

例えば2017年は、既に巨大化するITプラットフォーマーが独占するデータ資本主義への警鐘と、欧州発のGDPR(一般データ保護規則)とブロックチェーンによるデータの民主化戦略が議論されており、その後の展開は米国や日本を含む世界のデジタル・プライバシー概念に大きな転換をもたらすことになった。

また同年に登壇したサウジアラビアの王子ファハド・アル・サウード氏は、Facebookのアラビア語版を作った起業家&投資家で、2億人以上いるアラビア語圏が、デジタル情報発信では世界の1%に満たないという事実を問題提起した。デジタルで新しいアラブのアイデンティティを伝え、テロや女性差別と戦うアラブ女性のアニメキャラを創ってコンテンツ発信を行い、世界に貢献したいというビジョンを実践している。

2018年に登壇したThe Ocean CleanupのCEOボイヤン・スラット氏は、世界で問題化するプラスチック海洋ゴミを除去するため、革新的な技術を実装するNPOを18歳で立ち上げた人物だ。問題に対して、ファーストペンギンとして立ち上がることで、世界中から技術や資金など、支援者が集まる経緯は感動的であった。「(地球温暖化に否定的な発言をした)ドナルド・トランプに言いたいことは?」という会場の質問に、"Make the Ocean Great Again!"と切り返す頭の良さにも感心させられた。

マティアスCEO

欧州最大のメディアコングロマリットAxel SpringerのマティアスCEO(2019年のTOAにて)

2019年には、欧州最大のメディアコングロマリットAxel SpringerのマティアスCEOが、AIやGAFAと向き合うメディア産業の未来についてビジョンを語った。GDPR時代のプライバシー戦略やジャーナリズムの信頼性の価値、メディア発のデジタルプラットフォーム戦略にリアルな成長機会を見出すセッションなども、日本の全メディア企業幹部に聴いてほしいと思ったほど、時代を先取りする卓見であった。

「意思を持って、非連続的変化を生み出す」

今回、東京発でオンライン開催されるTOAワールド・ショーケース2021は、日本で開催される4回目のTOAイベントとなる。

2021年のテーマは「Re-Inventing Everyday -日常を再発明する-」。 2020年は世界がCovid-19の危機に直面し、パンデミックを機に、経済危機と格差の深刻化、グローバリゼーションと気候変動、政治や価値観の対立、人種やジェンダー差別など、社会課題が一気に顕在化した1年であった。

緊急事態宣言という強制的な変化が長期化し、誰もが社会課題を自分ごととして認識し、日々の生活や仕事のあり方を、根本から見直す契機になったのではないだろうか。今こそ「非連続的」な変化が必要なはずだ。

5つのピラー(柱)と、日本と欧州から参加する多彩な登壇者はいずれも興味深い。「アフターコロナ」を語るイベントは多いが、今回のスピーカー陣は、社会の仕組みを変えようと本気で行動している人たちばかりだ。

1. New Livelihoodでは、生活様式の再発明と、家事、食生活、運動など、新たな生活を支援するテクノロジーの動向を知ることができるだろう。

2. Unified Experienceでは、生活や仕事のオンライン化が進む中での「デジタルツイン」(デジタル上のアイデンティティのあり方)や、「フィジタル」と呼ばれるデジタルとリアルの融合型体験の進化を考える。

3. Distributed Learningでは、在宅シフトで子供の教育や大人の学び環境も大きく変わる中で、進化するテクノロジー(Ed-Tech)と分散型教育など、これからの学びの再発明について知見を深められそうだ。

4. Regenerative Societyでは、地球資源の一方通行の消費で成長してきた資本主義システムの、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への転換が喫緊の課題となるなか、まさに最前線で取り組みをするスピーカーによる討議が行われる。

5. The Momentum of a Transformationでは、新時代の再発明と移行を実現するため、イノベーターとして持つべき倫理、知見、組織、規制などについて、日本で顕在化する課題も含め、踏み込んだ議論が行われるだろう。

TOAからは、毎回次の時代を切り開く何かが始まっている。既存のシステムの限界を乗り越え、次なる時代を創り出すアクションがここから始まるだろう。これを見逃すのはあまりにも勿体ない。そして全てのアクションの主語は、「自分自身」でもあるのだ。


TOA ワールド・ショーケース2021」について詳しくはこちら。

小西圭介NEWSCAPE INC. 代表取締役/ブランド・アクティビスト:電通にて、大企業からスタートアップなど100社を超えるクライアント、地域や自治体などと、ビジネス成長を加速するブランドづくりを20年以上に渡ってリード。2021年に独立し、株式会社ニュースケイプを設立。 デービッド・A・アーカー(UC Berkeley Haas School名誉教授)が副会長を務める米国プロフェット社(SF)にて、グローバルブランド企業の戦略コンサルティングに従事。同氏とともに日本企業に、経営戦略課題としての「ブランド」を浸透させてきた。 近年はブランド・アクティビストとして、ビジネスが環境や地域・人やコミュニティの社会変化の主導的な役割を果たす、共創型のブランド戦略モデルを提唱・実践している。著書『ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略』(ダイヤモンド社)、訳書に『顧客生涯価値のデータベースマーケティング』(ダイヤモンド社)他。

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