ビットコインは、過去10年間で最も価格が上昇した投資対象のひとつだ。特に直近6カ月は過熱気味に急上昇している。
2020年3月以来、ビットコインは1000%以上上昇し、市場シェアを急拡大させている。ビットコインには、機関投資家のみならず、世界一の富豪となったイーロン・マスク(テスラとスペースXのCEO)も注目している。
しかし、ビットコインは価格変動が激しい。UBSウェルス・マネジメントのマルチアセット・ストラテジスト、キラン・ガネーシュ(Kiran Ganesh)によると、価格4万ドルを超えているビットコインは、バブル状態にあるという。今はビットコイン人気が高まっているものの、ポートフォリオ分散効果において金に取って代わるようなアセットになれなければ、バブルは弾ける、と。
ガネーシュはInsiderのインタビューに答え、次のように語った。
「ビットコインが金に取って代わるとは見なされず、実体のある価値を持たないのであれば、その価値をゼロ以上と考える合理性はない。ビットコインを貨幣とは見なすことはできない。今後、実社会において有用性を持つこともないだろう」
ビットコインの歴史的急騰は、投資業界において熱い議論を生んできた。2017年、JPモルガンのCEOジェームズ・ダイモンは、ビットコインを「ちょっとした詐欺(a bit of fraud)」と呼んだが、そのJPモルガンは最近、ビットコインの価格は14万6000ドルまで上昇すると予想している。
ビットコインはなぜバブルと言えるのか
バブルは、投資家が集団心理に陥り、比較的短期間のうちに公正価格を大幅に上回る水準にまでアセット価格を押し上げたときに起きる。「ビットコインは月まで届きそうな勢い」といった表現がソーシャルメディア上を飛び交い、デイトレーダーが時流に乗って仮想通貨に投資している。多くの投資家が過度な価格の急上昇を懸念するのも無理はない。
ビットコインはさまざまな要因の影響を極めて受けやすい。ソーシャルメディア上の「雰囲気」さえ影響する。イーロン・マスクが自らのツイッター上に「#bitcoin」と入力しただけで、価格は1日で15%上昇した。
イーロン・マスクのツイッター投稿。
さらに2月上旬、テスラがビットコイン15億ドル分を購入し、デジタル通貨による支払いを受け付けるとのニュースが流れると、4万3000ドルを超え、一気に史上最高値を更新した。
ガネーシュは、ビットコインの問題点として、貨幣として成り立っていないことを挙げ、そもそも日常的な買い物や取引に容易に使えない点を指摘する。
さらに、ビットコインが貨幣として機能するためには、実体的価値を保持しなければならないが、ビットコインにはそれがないとUBSは考えている。仮想通貨は、いつでもどこでも作成できることがその理由だ。
バブルの大きな特徴としては、投資家がアセットを購入する際に、現在の有用性を根拠に購入するのではなく、将来、他の投資家がさらに高値で購入することを期待して購入行動を起こすことにある。ガネーシュは、まさにビットコインにこうした購入行動が見られるという。
UBSは、ビットコインがバブルの諸条件に間違いなく当てはまっていると見ている。問題は崩壊するかどうかだ、とガネーシュは言う。
(出所)Bloomberg Finance LP, Deutsche Bank
金を目指すしかない
ガネーシュによると、ビットコインがバブル崩壊の運命を免れる唯一の道は、バブル状態にあるもうひとつのアセット、金に取って代わることだという。
金は過去30~40年間、宝飾や産業用途の金属としての価値を大きく上回る価格で取引されてきた。ガネーシュは、投資家が金を買うのは分散目的と金が持つ「ブランド」ゆえと見ている。
つまり、投資家が「それだけの理由」でアセットを購入する場合もあり、ビットコインが価値を持つためには、金に取って代わるポジションを目指すしかないという。
投資家は伝統的に、金を避難先として保持してきた。金融市場が危機に陥った際、素早く流動化できるからだ。投資家が金を購入するのは、その実用性のためではない。
しかし、こうした金の役割を、ビットコインが今すぐ果たすことは考えられない。
ガネーシュいわく、ビットコインは「合理的な分散目的でポートフォリオに組み込むには価格変動が大きすぎる。そのボラティリティによって、分散効果が吹き飛んでしまう」
UBSは、今後ビットコインが金のような「ブランド価値」を獲得できるか否かを見守るという。ただ、それが叶うとしても、遠い将来のようだ。
ガネーシュは、「金は数世紀にわたり大切に扱われてきた。それゆえに人々は実用価値を上回る価値を金に見出している」と語る。
ビットコイン・バブルが弾けたら
バブルの崩壊は常に悲惨な結果をもたらす。2000年初頭にかけて起きたITバブル崩壊によって、多くの企業が倒産に追いやられ、投資家は資産の多くを失った。
ビットコインが金に取って代わる役割を果たせなければ、1月に急騰・急落したゲームストップ(GameStop)株に群がった個人投資家同様、人々はある日「対価を支払うものには価値がなければならないと気付くことになるだろう」とガネーシュは言う。
ビットコインに投資する人は、ビットコインが価値を持たなければ「その価値は当然ゼロになり得る」ことをくれぐれもお忘れなく。
(翻訳・住本時久、編集・常盤亜由子)